↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/88

58 スリの少女

 黒角族は怪我をしてもすぐに治る。


 その体の特性上捨て身の攻撃をよくやっていた。

 相手が殴ってこようがそのまま殴られ、ナイフで切りつけてこようがそれも受ける。

 そうして傷を受けながらこちらも一撃を入れるのだ。


 捨て身で突っ込んでくる黒角族の勢いに押されてゴロツキ達は一気に制圧されていく。


 (こいつら怖い)


 そんな事を思いながら一連の作業と化した制圧をみていると少女がゆっくりと目を開いた。


 少女はしばらくあたりの様子を伺っていた、だがこちらをみると体を強張らせる。


 「ひぃ」


 短い悲鳴を上げた、さっきもそうだったが失礼な人だよな。

 僕に被害はないとは言えこちらは巻き込まれかけたんだ、事情くらいは話してもらおうか。


 「なあ、あんたそこの奴らに追われてたよな、巻き込まれて迷惑だったんだけど」


 そう話すも少女は何も答えない、混乱しているのか話したくないのか、どちらにせよイライラする。


 フォールゥ達が戻ってくる、見ればごろつき全員を制圧して捕らえている。

 皆少し離れた所でこちらを見ていた、指示待ちのようだ。


 少女を観察する、何処かで見たような顔だった。

 そうして思い出す、以前スラムでスリを行っている者の存在を。

 財布の中身を盗んでいたそのスリは、中身を全部取らずに少し残して窃盗の発覚を遅らせようとしていた。


 よくみれば目の前の少女はその時のスリに背格好が似ている。


 「お前、この前見かけたスリか?」


 そう指摘すると少女は顔を青ざめて震えだした。


 「ご、ゴメンナサイ、もうしませんから」

 「あいつらの財布を盗んで追われてたのか?」

 「違う、あいつらの財布なんか盗んでいない!ただ魔道具を売ろうとして安く買い叩かれそうだった、だから売るのを止めただけだ!そしたら追いかけられて」


 捕らえられたゴロツキ達の方を見る。


 「そう言っているけどどうなんだ?」

 「はっしらねえよ」


 そういってゴロツキの一人がこちらに唾を吐きかけた。

 届かなかったが汚い。 


 「フォールゥ、やっちゃって」


 そう言うとフォールゥが男の首を絞め始めた。

 違う、首じゃない。

 そんな事をしたら喋れないだろ。


 フォールゥが腕を放すと男は暫くの間咳をしていた。

 男が落ち着くまで待つ。


 「どうだ、喋る気になったか」


 そう問いかけるが男は何も答えない。

 その目は反抗的にこちらを睨んでいた。


 「フォールゥもう一度お願い、今度は首じゃない所で」

 「分かりました、殺せばいいのですね?」


 違うんだけど。


 「分かった分かった!話すから!殺さないでくれ!」


 フォールゥの返事に驚いたのか男は慌てて喋ろうとする。

 咳をしながらも懸命に体を動かし懇願していた。


 「そいつの持っている魔道具がどうしても必要だったんだ」

 「魔道具?」

 「そうだ、そいつが持っているネックレス型の魔道具、それは怪傑と呼ばれた伝説の暗殺者ブリッグが使用していたという魔道具だ」


 聞いたことが無い、困った顔をしているとフォールゥが補足してくれた。


 「ブリッグは裏社会で有名な暗殺者です、なんでも彼に暗殺依頼を出すと確実にターゲットを始末してくれるんだとか」

 「確実に?」

 「噂ではそうです、裏社会で死にたくなければ競合相手より先に彼に連絡を取り、相手を殺さなければ生き残れないとも言われていました」


 そんな有名な人が使っていた魔道具なのか。


 「でもただの魔道具でしょ、そのブリッグって人の技術が凄いんじゃないの」


 そう疑問の声を上げるとゴロツキの一人が口を開いた。


 「ブリッグに暗殺者としての技術は無かったと言われている、そのネックレスを装備すれば誰でも暗殺者としての最高の技術が手に入るという噂だ」

 「そうなの?」


 そうして先程から固まっている少女に話しかける。


 「そ、そうだ、その通りだ、そんな魔道具をこいつらは銅貨10枚で買い取ろうと言っていたんだ」


 安い、それは売らないだろう。


 「へっ、お前みたいなガキが大金持ってたってすぐに追いはぎに取られて終わりだろう!だから俺達が有効に活用してやろうってんじゃねえか!」

 「そ、そんな事は無い、私には商才がある!両親は街を牛耳る大商人だった!その知識や技術は私に受け継がれている!元手となる資金があればまた成り上がれるんだ!」


 そう発する少女の声は鬼気迫っていた。

 うっすらと瞳には涙が浮かんでいる。

 

 そうして少女は胸に下げていたネックレスを強く掴んだ。


 そのネックレスは首掛けの部分は金色の細かい細工が施してあった。

 首から下げた首掛けの先には髑髏型のモチーフがあり、その回りには宝石がちりばめられていた。 


 その髑髏の中心には穴が空いている、あそこに魔石を組み込むのだろう。


 「その魔道具、いくらなら売るつもりだったんだ?」


 そう少女に問いかける。


 「そ、そうだな。白金貨が一枚もあれば売ってもいいかな?」


 目は泳いでいた、そんな高値で売るつもりなんかないのだろう。


 白金貨か、そんな高級貨幣に縁は無い。

 いやあった、今日手に入れたんだった。


 そうして思いなおす、白金貨一枚ならば魔道具の能力に対しては安いのではないかと。


 白金貨は一枚で金貨1000枚の価値が在る。

 以前キアラは自身の剣を取り戻すため、金貨を2000枚ほど払っていなかっただろうか。

 そう考えればこのネックレスは安い気がする。

 いや安い。


 幸いにも今日僕には資金がある、先程ダンテから受け取ったお金だ。

 懐から皮袋を取り出す、中には大量の金貨が入っており、その中で白く輝く硬貨が一際光を放っていた。


 白金貨を取り出し少女の前に掲げる。

 少女はその硬貨を見て呆然としているようだった。


 「そのネックレス、僕が買うよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。