↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/88

57 路地裏の出会い

 いつもの寝床で目が覚める。

 寝床に日差しは差し込まない、建物の地下にある階段下で寝泊りしている為だ。

 今が朝なのか夜なのか分からなくなるときがある。


 目を覚まして最初にみる灰色の壁、この壁を見るのも久しぶりだった。



 寝床から出て起き上がる、そうして天幕をくぐると複数の黒角族が横一列に並んで傅いていた。


 「おはようございます、クロムウェル様」


 フォールゥを含む数名の黒角族が一斉に声を上げる。


 「お前等何をしているんだ」

 「はい、外敵の侵入がないよう見張っていました」


 外敵の侵入、こんなスラムの端の人気のない場所にくるような物好きがいるのだろうか。


 「クロムウェル様、今日の予定はいかがいたしましょう」

 「知り合いの医者に会いに行く予定だけど」


 以前白火病の特効薬を作ったときに角を渡した。

 その時の代金をまだ受け取っていない。


 「街ではどんな危険があるか分かりません、我々もお供します」

 「全員で?」

 「はい、全員で」


 ここにいるだけで十人以上いる。

 さすがに強面の集団引き連れて街を歩く度胸は僕には無かった。


 「クロムウェル様の行く手を阻むものがいれば我々が排除しましょう」

 「こなくていいよ」


 そういってフォールゥ達の横を素通りする。



 「しかし外ではどんな危険があるか分かりません、やはり我々がお供します!」

 「大丈夫だ、大丈夫だから、ちょっと街を歩くだけだから」

 「もし御身に何かあったら我々の立つ瀬がありません!」


 そう言ってゆく手を阻む、これは何をいっても聞かないな。


 「じゃあ遠くから見張っててよ、集団で目立つのも禁止、それならいいよ」

 「分かりました、遠くからクロムウェル様をお守りします、暴漢は全て排除いたしましょう」



 

 そういってフォールゥ達はそれぞれ別の方向に去っていった。

 辺りを見回しても気配はない。

 外を歩いてみてもその存在を認識することはできなかった。


 (これはこれで怖いな)




     *




 歓楽街近くに一軒の建物がある、そこがダンテが店を構えている治療所だ。

 裏口に回りノッカーを鳴らす、すると以前と同じようにダンテの娘さんが扉を開けた。



 「久しぶり、ダンテに用があるんだけどいるかな?」


 そう伝えると娘は無言で家の奥へと入っていく。


 (付いて行けばいいのか?)


 治療所の中を歩き扉を二つほど開けた先にダンテはいた。

 ダンテの娘は父親であるダンテの服の裾を引っ張っている。


 「ダンテ、久しぶり」

 「……クロか」


 ダンテはこちらを呆れたような顔をしてみている。

 

 「元気してた?」

 「元気してた?じゃねぇ!お前約束の日に来なかったじゃねーか!心配になって冒険者を雇って天幕までいったんだぞ!」


 「ごめんちょっと立て込んでてさ、街を離れていたんだ」

 「立て込んでたって、お前大丈夫なのか?」


 大丈夫とは?もしや切り裂かれた天幕を見たのだろうか、それなら何かあったと思われただろう。。


 「大丈夫、色々あったけど全て解決したよ」

 「ならいいが」

 「それでダンテ、前言ってたお金の配分したいんだけど」


 まさか約束の当日に来なかったから支払いは無しなんて事はあるまい。


 「ああ、それなんだが一つ謝らなければなら無い事があってな」


 ダンテは神妙な顔をしてこちらをみている。


 「実はトルテの薬局に黒角族の角を預けていてな、強盗に入られて角を盗まれてしまったそうなんだ」


 強盗?物騒な世の中だな。


 「なんでも角だけ盗まれたらしい、他にも高い薬はあったんだが調合前の素材である角だけなぜか盗まれたそうなんだ」


  角だけ盗んでどうするのだろうか、白火病に使うなら角より出来上がった薬を盗んだほうがいいと思う。

 世の中には物好きがいるな。


 「すまん、角の代金を全額払えそうもない」

 「そう、じゃあ払えるだけでいいや」

 「いいのか?」


 いいも何も無い物は仕方がない、ゴネたって解決しないだろう。


 「じゃあこれが角の代金だ」


 そういって小さな皮製の袋を渡してきた。


 中を見る、そこには大量の金貨が納められている。こんな大金みたことない。


 「ダンテ、なんか量が多くない?」

 「白火病の薬を作ったんだ、そんくらいの量にはなるぞ」


 それにしても多い気がする、そして数百枚の金貨の中に一つ、見たことのない白く輝く硬貨が入っていることに気がついた。


 「ダンテ、これなに?」


 白い硬貨をつまみ上げダンテに見せる。


 「それは白金貨だ、一枚で金貨1000枚分の価値がある」


 あまりの値段に言葉を失う。


 (そんな硬貨何に使うんだ)



 「なんでこんな物が?」


 「薬にして売るとそんくらいの利益がでるんだよ、白火病の特効薬はな」


 自分の角がそこまでの値段になったことに驚きが隠せない。

 自分の角、まだ余ってるから売ろうかな。



 「落とさないように気をつけろよ、また何かあったら家にこい」

 「た、確かに受け取ったよ、じゃあまた」

 「ああ、病気になったら知り合い割りで診てやるよ」



 ダンテの診療所の裏口に回る。

 緊張のあまりそこまでどう歩いたか覚えていなかった。

 そうしてダンテの診療所を後にした。




     *




 大量のお金を持っている。

 その事実が不安と緊張を生んでいる。

 歩き方も不自然になっていることが自分でも分かる。いつもはどうやって歩いていたのかそれすら良く分からない。


 (こんな大量の金、何に使えばいいんだ)


 別に使わなくてもいいか?こっそり隠して置けばいい。

 一瞬そう思ったがそれはそれでお金が盗まれないか不安になる。

 ならば何かに使うか?自身の力をつけることに投資してもいいかもしれない。


 強力な魔道具を手に入れるとか。


 そんな事を思いながら歩いていると、曲がり角から誰かが走ってくる足音が聞こえてきた。


 足を止め、音の主が通り過ぎるのを待とうとした。


 建物の角から足音の主が現れる。

 現れたのはフードを深く被った少女だった。

 その子はこちらを見るなり動きを止め、まじまじとこちらの顔を観察している。


 「ひっ」


 その少女はこちらの顔を見るなり小さな悲鳴を上げた。 

 そうして少女は音も無く倒れる。


 「おい大丈夫か?」


 少女に近づくが返事が無い、どうやら失神したらしい。

 失礼だな、そう思いながら様子をみていると、先程少女が走ってきた方向から数人が走ってきていた。


 「おいそこのガキ!動くな!」


 強面の男性だった、後ろにも明らかに堅気の人間じゃない人物が複数名控えている。


 「お前その餓鬼の仲間か?大人しく魔道具を渡せ、さもなくば痛い目に遭うぞ」

 「いえ、僕は関係ないです、さよなら!」


 走ってその場から逃げようとする。


 「とぼけやがって、お前が魔道具を持っているんだな!」


 男が僕に手を伸ばす。

 だがその男の手が触れることは無かった。

 建物の屋根から勢い良く飛び蹴りをかましてきた人物がいたのだ。


 フォールゥだった。


 それを皮切りに建物の影から複数の黒角族が現れる。


 「貴様らクロムウェル様に手を出すとは許せん!万死に値する!」


 そうして各々が懐から凶器を取り出す。

 短刀に長剣、槍に斧、あらゆる凶器を掲げている。


 「な!?なんなんだお前等!?」

 「その汚い手でクロムウェル様に触れようとしたこと後悔させてやる!」



 そうして男達と黒角族の戦いが始まった。

 僕はその戦いを呆然と見ていた。

 まだ少女が目を覚ます気配は無い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。