49 三人の二本角
3人の黒角族が横一列に並んで傅いていた、3人とも角は二本だ。
その後ろでは数十人の黒角族が同じく傅いている。
全員角の数は一本だ、どの黒角族も傅いて僕の顔を見ない。
どう対処していいかわからず立ち尽くしていると、前で傅いていた黒角族の一人が口を開いた。
「クロムウェル様、お初にお目にかかります、俺の名前はストラードといいます、お会いできて光栄です」
「私はベクスと申します、無事生きておられたとは、里の者も喜びます」
前に並んでいた二人が口を開いた。
喜んでいる、それはどうだろう。僕がここにいる理由を分かっていないのだろうか。
表情から真意を確認しようとしたが、全員緊張しているようで良く分からない。
「クロムウェル様、お久しゅうございます。このフォールゥ、こうして再び出会えたことに至極の幸福を感じます」
最後にフォールゥという黒角族が口を開いた。
向こうは僕の事を覚えているようなのだが記憶に無い。
「会った事あったっけ」
里にいたときは立場上人の顔と名前は覚えるようにしていた、だが目の前のフォールゥという人物に覚えがまったく無かった。
「以前お会いした時、このフォールゥに挨拶をしてくださりました」
「挨拶?他には」
「挨拶をして頂きました。以上でございます」
「挨拶だけ?」
「はい」
覚えているわけが無い。
改めてフォールゥという黒角族を見る。
先程までは木の枝を手にしていたが今は何も持っていない。
確かこの黒角族は水晶の魔道具らしき物を持っていたはずだ。
あの魔道具、個人的に気になっていた。
「フォールゥ、先程使ってた水晶は魔道具なのか?」
「はい、虚無光の水晶と申します、この水晶を使うと一定範囲内の全ての魔道具の起動を阻害します」
なるほど、だからさっき見えないはずの僕の顔も見えたのか
そして自分の体が魔道具で透明になっている事が判明した。
思わぬ収穫だ。
それにしてもこいつら、先程までと態度が違いすぎる。
黒角族は角の数が多いほど高貴な者として扱われる。
四本角の僕は彼らにとって仕える相手なのだろう。
だから今の態度をとるのも分からなくは無い、だとしても極端すぎる。
そもそも前から思っていたが黒角族が人間の街にいることがおかしい。
黒角族は排他的で傲慢だ、わざわざ自分から人間の街に来たりはしない。
もし用があったとしてお前らの方が俺達の所に来い、素でそう思っているヤバイ種族だ。
「お前達、人間の街で何をやっているんだ」
「はい、我らは盗まれた同胞の角を取り戻すため、人間の社会に溶け込み奪取する機会を伺っております」
「奪取するってどうやって」
「お金を払って譲ってもらいます、しかしそれでも手放してくれない方もいるので、その場合は複数人で角を持っている人物に交渉に行き、譲ってもらうまで粘り続けます」
それは恐喝というのではないだろうか、溶け込めていない。
角は黒角族にとって大切なものだから気持ちは分かるがやりすぎだ。
「まぁいいや、僕は用があるからこれで失礼するよ」
「どちらに行かれるのですか?」
「ちょっと街の方に用があるんだ」
「我々もお供します!」
そういって傅いていた全員が立ち上がった
そんな沢山付いてこられても困る。
「お前達、まず街に入れないだろう」
「問題ありません、衛兵の一人や二人打ち倒して見せましょう」
「やめろ」
ダメだこいつら、穏便に済ますという気が一切無い。
黒角族の悪いところが出ている。
「そういえばお前ら、僕がいた寝床から金貨や魔道具を盗んだだろ」
すると複数の黒角族が顔を真っ青にして震え始めた、特にストラードと名乗っていた黒角族はこの世の終わりのような顔をしている。
「申し訳ありません、どうかお許しください、この命で償いを」
「しなくていい、今何処にあるんだ」
「スラム奥のアジトにあると思います」
今は持っていないのか、ならば後回しでいい。
「今度持ってきてくれ、明日の早朝ここで集まろう」
そういって黒角族の集団に背を向ける。
「お、お待ちください、我々もお供させてください」
「街へは入れないでしょ、向こうに用があるから放っておいて」
黒角族の集団と距離を取る。
『霧の小型灯』起動して早足でその場から去ることにした。




