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47 ハウゼントゥルム

 ストーク・シュテットは反社会勢力の人間である。


 ストークは裏社会でも有名な組織、ハウゼントゥルムに所属していた。

 ハウゼントゥルムは殺しに盗み、違法な薬物販売など悪逆の限りをつくしている。

 もちろん国はハウゼントゥルムの行為を取り締まろうとはした。

 だが衛兵や兵士はもちろん、教会関係者や貴族にまでハウゼントゥルムの手の者が入り込んでおり、手を出そうとすれば妨害され時には死人を出すこともあった。

 その上あまりにも強大な組織の為、国の経済の一旦すらも担っておりハウゼントゥルムには手出しできずにいた。

 


 そんなハウゼントゥルムには5人の幹部とボスがいる。

 それぞれが商業や武力に多大な影響力をもっており、裏社会の組織でありながら実質表社会の支配者でもあった。



 ストーク・シュテットはそんなハウゼントゥルムの幹部に僅か5年で上り詰めた。

 十代という若さで幹部にまで上り詰めたストークの手腕はまさに快挙といえた。


 史上最年少での幹部入りをしたストークは当初は妬みややっかみの対象だった。

 偶然だろうと、アイツが幹部になれるのなら自分だってなれると、指を差して笑っていた。


 だが嘲笑していたものは次第に口を閉ざし、内心見下していたものはいつの間にかストークの忠実な部下になっていった。

 そうしてストークはハウゼントゥルムでの幹部という立ち位置を磐石にした。


 しかしそれでもストークは満足していなかった。


 5人の幹部には序列があり、序列一位の人間が次代のハウゼントゥルムのボスになる。

 ストークの序列は最下位、幹部の中でも一番次代のボスからは遠ざかっている。

 序列を決めるのはボスだ。


 出世がしたい。



 出世をするなら賄賂を贈るのが一番だ、ハウゼントゥルムのボスは価値ある魔道具を欲しているようだった。


 特に欲しがっていたのは古の魔導技師グルント・バッハレの作ったとされる傑作、『風神の腕輪』と『雷神の腕輪』だ。



 『雷神の腕輪』は所在不明だが『風神の腕輪』はパーヴァイングという街に古くからいる武芸集団、神斬剣が所持している事は有名だった。

 


 手に入れようと色々動いてみたが神斬剣の奴らは手放す気配は無い、武力で脅そうとしても単純な力だけでは向こうの方が上だった。

 諦めてボスには金でも送ろうかと思い始めた頃、街に放っていた下部組織の一つ、黒角族の集団が『風神の腕輪』を手に入れてみせると言い出したのだ。



 無理だとは思った。

 だが他に『風神の腕輪』を手に入れる方法は思いつかない。

 どうせ持て余している部下だ、うまくいけばよし、ダメなら切り捨てればいいと判断した。

 

 吉報を待ちながら各地を転々としていた。

 そうして久しぶりにパーヴァイングの街に戻ってくると散々な結果になっていた。


 『風神の腕輪』を入手できなかった上に、まとめ役の黒角族の死という最悪の結果だ。


 しかもそのまとめ役がいなくなったせいで部下達を統率できなくなり、各地で意味のない暴力強盗やりたい放題だった。


 それでもスラムで好き勝手やる分には良かった。

 だが先日街の薬屋に押し入り強盗まがいの事をしたそうなのだ。


 その薬屋にはとても優秀な薬師がいた。

 その薬師にしか調合できないといわれる薬が多数あり、その薬を手に入れるため、王都からわざわざ訪れる客が多数いた。

 その客の中にハウゼントゥルムと懇意にしている貴族がいたのだ。


 その貴族は怒り狂い、ハウゼントゥルムに抗議の声を上げた。その声は幹部を飛び越えてボスの耳にまで届き、今度行われる定例会議で俺を糾弾するという情報を掴んでいた。


 

 ここらが潮時だと思った。


 

 「切り捨てるか」


 黒角族は元々街にも入れずスラムで右往左往していたやつらだ。

 荒事の際に先頭だって切り込ませ、何かあれば全ての責任を負わせて使い捨てるつもりの連中だった。

 こうして問題になった以上なんらかの対処をしなければならない。


 「全員、始末してしまおう」


 最近知ったことなのだが黒角族の角は高く売れるそうなのだ。

 難病を治す薬の材料になるらしい。

 ならば殺して角を毟りとってしまおう。

 そうして金に換え、ボスに献上して許してもらおう。

 とてもいい案に思えた。



 この後、ちょうど黒角族の新たな代表に会う予定だった。

 そいつの動向を探って隙を見てまとめて殺してしまおう。


 ストーク・シュテットは自身の耳飾に触れる。


 この耳飾は『岩鼠のイヤリング』という魔道具で一定の範囲内にいる人物の心を読む事ができる魔道具だ。

 これさえあれば人心を掴むことなど容易い事だった。

 ハウゼントゥルムで出世できたのもこの魔道具の力が大きい。


 こいつを使って黒角族の心を読もう。


 そうして油断している所を纏めて殺してしまうのだ。

 その手の事が得意な部下がいるからそいつに任そう。


 考えをまとめ、部下に指示を出そうとした所でふと思い出す。


 黒角族の集団の中で一人、心を読めない奴がいた。

 どうもそいつの近くでは『岩鼠のイヤリング』どころか普通の魔道具ですら発動できないようなのだ。

 不安点があるとすればそいつの存在だった。

 何故発動できないのかは分からない。だが何らかの道具を持っていた事は覚えている。



 まあいい、これから皆殺しにするのだ、殺してからそいつの荷物でも漁ってみよう。

 部下を呼び出しに指示を出す、そして着けていたイヤリングを軽く撫でてからストークはその場を後にした。

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