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異世界の透明人間~魔道具を駆使する暗殺者~  作者: 城戸一
四章 忘れられた機械兵
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46 迫る闇

 ナーデン・エクレムは目覚めと共に日課の『リードの針時計』を起動した。


 『リードの針時計』はもう何日も教会を指し示していた、だが今日に限ってスラムの方向を指し示したのだ。

 針が示す方向へと向かう。

 するとスラムで骨董品を扱う老人の店で仮面を発見したのだ。


 店の主人はこの仮面を買うといったら引きつった笑顔を浮かべていた。

 確かに気味の悪い仮面だ。私の趣味ではないのだがこの店主に説明しても仕方がないと思い口を閉ざした。


 値段はやけに高かった、それこそ一つ高価な魔道具が買えてしまうくらい。この仮面、そんなに価値があるものなのだろうか。

 仮面を調べてみるが魔石が設置されている気配はない。

 内部に収納されているのだろうか、鼻の部分は体積が多いので内蔵されている可能性はある。


 どんな効果なのかは気にはなる。

 しかし試してみようとは思えない。

 仮面の魔道具はどれも曰く付きの物が多いのだ。


 被った者の意識を乗っ取る『愁然傀儡』

 本音しか喋れなくなる『真実の仮面』

 被ると外れなくなる『呪いの喜色満面』


 どれも碌な効果じゃない。

 試してみようという気は起きなかった。


 手に入れた仮面を鞄にしまい『リードの針時計』を起動する。

 取りあえずクロを探さなければ。


 針が示す方向を辿っていくと街の冒険者協会に辿り付いた。


 なぜここに?あいつ冒険者だったのか?


 だが冒険者協会に足を踏み入れると針は部屋の隅を指し示した。

 針が示した先に足を進める。

 針が示した先は伝言板だった。

 

 ここに書き込めという事か?

 これで連絡を取れと。


 書き込もうとしたら冒険者協会の職員が慌てて飛んできた。

 どうやら勝手に書き込んではダメらしい。

 お金を払うと職員が伝言板に書き込む仕組みなのだそうだ。


 然るべき金額を払って職員に伝言を伝える。

 これで奴も連絡を取ろうとするだろう。


 針もへたれている、もうやる事は無いはずだ。

 冒険者協会を後にし、屋敷に戻ることにした。






     *




 機械兵の※※※は、長年暮らした住居から旅立つ決意を決めた。


 自我に目覚めたのはいつからだろうか。


 毎日毎日代わり映えのしない日々。

 次々に倒される仲間、魔石が足りず起動すら出来なくなった者。

 そんな仲間の屍と共に帰るはずも無い主を待ち続ける毎日。

 そんな無意味な日々をただ過ごしていた。


 だが新たな主が現れて我らの道を示してくれた。


 主に付き従い歩くのも良かったが、自由にしていいと言われた手前、外の世界を旅してみようと思ったのだ。 

 住居の出口まで足を勧める、先程までは人間が我が物顔で歩いていたので注意しなければ。


 今まで暮らしていた施設から一歩足を踏み出し大地を踏みしめる。

 始めて足をつけた土は住居の金属とは違う感触だった。

 今までに感じたことの無い情報が自分に流れ込んでくる。これが自然というものか。


 一通り土の感触を楽しんだ後、今後の方針を考えた。 



 西に行ってみようか、あちらは人の行き来が多い。

 人間の暮らしを見てみたくなった。


 人に恨みがある訳ではない、主だって人に区分される生き物なのだから。

 ただ自分の仲間が簡単に人間にやられる所をみて、自分達と人間に明確な力の差を感じ取っていた。


 なぜ人間はあんなに器用に動けるのだろうか。

 あの力を手に入れることはできないだろうか。

 自分達があの力を手にするにはどうすればいいだろうか。


 人間のような力を手にするには、もう少し人間を観察する必要があると感じていた。


 人を観察するなら人の多いところに行けばいい。

 人が多いところは街だ。ここから一番近い街は西にある。

 偶然にも主が向かっていった方向だ。

 まずはそこに辿り着くことを目標にしよう。



 道中魔石を仕入れることも忘れてはならない。

 住居の外には魔物と呼ばれる体内に魔石を宿している生き物がいるはずだ。

 魔物を狩って魔石を補充しよう。

 魔石がなければ自分は動けなくなってしまうのだから。


 考えをまとめた機械兵は西に向かって一歩踏み出した。


 一体の機械兵が人の街を目指し歩き始めた。



     *



 クロはスラムの寝床に向かっていた。


 このままナーデンの屋敷に向かっても良かったが、日は暮れすっかり夜中になっている。

 深夜に押し掛けるのは気がひけた、そのため一度自分の寝床に戻ろうと考えたのだ。


 寝床に戻るとまず目に入ったのは切り裂かれた天幕だった。

 無残な姿になった天幕をくぐり中に入ると床一面に日用品がぶちまけられている。


 部屋を少し探したが隠していた金貨は無い、盗まれたのだろう。

 エリアから貰った指輪もなくなっていた。保管していた魔石もない。

 貴重品は殆ど盗まれているようだった。


 だがキアラから貰った『深淵狼の短剣』は残っていた。

 『深淵狼の短剣』は一見ただの刃物にも見える、魔石も見えるところには付いていないので盗まれなかったのだろう。


 外套も手を付けられていない、汚いから手を付けられなかった可能性はあるが無事残っていたことは嬉しい。

 そして豊穣神の仮面も残っている。もうすぐ仮面を受け取りにいくのであと少しの付き合いだ。


 せっかくだ、手に入れた魔道具を試してみよう。

 『霧の小型灯』の青いボタンを押し、豊穣神の仮面に青い光を当てる。

 馬車の中で試してみたが、この『霧の小型灯』は生きている物には使えないようなのだ、生物には使えない。道具にしか使えないのだ。



 外套や中着、『深淵狼の短剣』にも青い光を当てる。

 そうして赤いボタンを押すとそれらの姿形は見えなくなった。


 これでいい、この魔道具があればもう全裸で行動しなくてもすむ。

 寒い季節になるとどうしても全裸行動は厳しかった。もう寒い思いはしなくてすむ。


 寝床で寝ようと横になる。すると誰かが階段を下りる音が響いてきた。


 「おい、こんな所来たって意味ねえよ」

 「そうは言ってもフォールゥの奴が見張っとけって言ってんだ、無視する分けにはいかないだろう」


 まさか黒角族だろうか。

 この場所を熱心に監視し続けていたのか。


 相手からは僕が見えないのは分かっている。

 だが『霧の小型灯』がどのくらいの時間透明な状態を保っているのか分からなかった。

 魔石も持つか分からない、黒角族の目の前で急に外套や短剣が現れる状況は避けたい。


 息を潜め壁に張り付く。

 足音を立てないように壁伝いに階段を登る。

 そうして黒角族とぶつからない様に寝床を出た。


 寝床を出てからは走って夜のスラムを疾走した。

 どうする?

 このまま朝までスラムを徘徊するか?


 それとも迷惑が掛かるのを承知でナーデンの屋敷まで行くべきだろうか。

 それがいいかもしれない、奴らもスラム以外ではそうそう手は出せないだろう。

 このままスラムの出口まで向かうべきだ。


 スラムの出口目掛けて走り出す。

 暫く進むと歓楽街の屋根が見えてきた、もう少しだ。


 この辺りまで来ると道はそこそこ綺麗になってくる。

 スラムと言えども出口付近はかろうじてインフラが整っており、明りを灯す魔道具が道の両端に設置されていた。


 辺りに人の気配は無い。道の中心を音を立てないように進んでいく。


 だがしばらく歩くと遠くで設置されている明りを灯す魔道具がチカチカと点滅を繰り返していた。

 なんだろう?魔石でも切れたのだろうか?


 だが一度光を失った魔道具は、暫くするとまた輝きを取り戻していた。


 逆に手前の、僕に近い距離に設置された魔道具が光を失っていく。

 闇がこちらに向かってくるような錯覚を覚えた。


 止まってその様子を見ていると、明りが消えた魔道具の下には一人の人物がいた。

 ゆっくりと、こちらに向かって歩いてきている。

 その人物の頭には二つの角がある。

 黒角族だ。


 緊張で息を止める。

 大丈夫だ、僕の姿は見えないはずだ。


 だがその黒角族は、僕の目の前で歩みを止めた。

 そうして正面まで来ると僕の目を見据えて口を開いた。


 「見つけたぞ、仮面の子供」


 その黒角族の掌には透明な水晶が乗せられていた。

5章は完成したら投稿しようと思っています。

遅くても一ヶ月以内には投稿します。

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