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異世界の透明人間~魔道具を駆使する暗殺者~  作者: 城戸一
四章 忘れられた機械兵
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45 君は自由だ

 四足歩行の機械兵の足取りは軽い。

 来た道を戻っているだけのようにも見えるが、時々振り返り、僕が付いてきているかを確認するような仕草をしている。

 案内をしてくれていると信じたい。


 螺旋階段を登り続け、先程ハーマン達と分断された扉の前までたどり着く。

 この扉が開かなくて別の道を行くはめになったのだ。


 機械兵は扉の前で謎の動作をしている。

 すると地響きと共にピクリとも動かなかった重い扉が開き始めた。

 機械兵はこちらを向いてレンズの光を点滅させた。


 なんだろう、褒めて欲しいのだろうか。


 扉をくぐり円形の部屋へ出る。

 これなら地上まで行けるだろう、ハーマン達がまだダンジョンにいるのなら出口で合流するのもいいかもしれない。

 出口に続く階段へと足を向ける、機械兵はこちらを向いたまま動かない。

 このままダンジョンに残るつもりなのだろうか。


 ニックは未踏破エリアを探索するため、再びダンジョンに訪れると言っていた。

 このままここに残れば、この機械兵はいずれ冒険者達に討伐されてしまうだろう。


 いくら攻撃してくるからと言ってもそれは可哀想な気がした。

 機械兵達からみれば冒険者達は強盗だ、攻撃するに決まっている。

 

 機械兵達は主と呼ばれる人物がいなくなってもこのダンジョンを守り続けていたのだろう。

 主亡き後も忠実に命令を守り続けていたのだ。



 このダンジョンが何時からあるかは分からない、

 だが守るべきものが無くなった今、ここに機械兵達が留まる意味があるのだろうか。


 既にダンジョンは探索し尽されている、機械兵が守るべき本来の主や魔道具は既に無い。

 機械兵は役目を立派に果たした。ならば


 機械兵はこちらをじっと見て動かない、僕にはそれが指示を待っているように見えた。

 しゃがみ込み機械兵のレンズと目線を合わせる。


 「仕事は全て終わったよ、だからもう自由にしていい」


 そう伝えると四足歩行の機械兵の赤いレンズが鈍く光りだした。

 機械兵の姿は徐々に薄れていき、やがて完全に見えなくなった。







     *




 「ニックさん、すぐに戻りましょう!未踏破エリアを探索しなければ」

 「旦那、そんなに急がなくてもここに来る冒険者なんていませんよ、お宝も取り尽されているんですから」


 止められていた馬車の傍で待ち続けているとハーマンとニックがダンジョンから出てきた。

 ハーマンは走りながら馬車へと近づく、ニックも駆け足でこちらに向かってきた。


 街に戻るのだろう、僕もまた同伴させてもらおう。


 『霧の小型灯』は赤いボタンを押し、見えないように手に持っている。

 馬車に乗り込み隅の方で二人を待つ、ニックが大剣を中に放り込む。その後ハーマンが乗り込んできた。


 

 「ニックさん飛ばしてください!一刻も早く街に戻って人を集めなくては!」

 「安全運転で可能な限り急ぎますよ」


 ニックは馬車を動かす準備をしている。これから町に戻るのだろう。


 本来ならまだ戻るべきではない、黒角族は僕を探しているはずだ、帰らないほうがいいだろう。

 だが他に行く当てもない、街の外で暮らすのは無理だ、食事や安全な寝床を確保できる自信が無い。


 戻ったら全てが解決していないだろうか、黒角族の人達、僕の事諦めていて欲しい。

 自分でも無理だと思っているがそう願わずにはいられない。


 取りあえず一度街には戻ろう、今度は闇雲に馬車に乗り込むのではなく、ちゃんと行き先を考えて乗り込むべきだ。


 馬車が動き出す、ハーマンは馬車の奥まで移動しリュックから本を取り出し読みふけっている。

 僕はハーマンとぶつからないよう馬車の入口近くまで移動する。


 馬車から外の景色を眺める。

 機械兵の螺旋穴が小さくなっていく。

 あの四足歩行の機械兵はまだあのダンジョンにいるのだろうか。


 流れる風景を楽しんでいると、遠くの方で四足歩行の機械兵が見えた。

 機械兵の中心にあるレンズが赤く光ったように見えたのだ。


 もう一度機械兵がいた場所を見る。だがそこには機械兵はいなかった。


 そこには機械兵は居らず、ただ景色だけが広がっていた。




  *




 街に戻るとニックはまず冒険者協会へと向かった。ハーマンは自宅に戻るそうだ。

 なんとなく僕はニックの後についていくことにした。


 冒険者協会か、以前仮面を理由に門前払いされてから足を踏み入れていない。

 一生僕には縁が無いと思っていたが、こうしてまた足を踏み入れている。


 ニックは受付らしき場所で座っている女性に話しかけている。

 仕事が終わったのでその報告だろうか、なにやら雑談まで始めたので冒険者協会の内部を見て回ることにした。



 掲示板には仕事の依頼が貼ってある、その掲示板の前では何名かの人物が依頼表を見上げている。

 依頼表を手に取り受付に持っていくそぶりをしている者もいた。


 依頼表が貼ってる掲示板はそこそこ人がいる、対照的に横にある掲示板の前には人がいなかった。

 横の掲示板は伝言板だ、お金を払えば言伝を掲示することができるらしい。


 伝言も少なく、掲示されている文章も少なめなので人は殆どいない。

 伝言板を眺める、その中に一つ気になる言伝があった、差出人は僕の良く知っている人物だ。


 そこにはこう書いてあった。


 ≪クロへ 仮面発見済み 至急連絡求む≫ 差出人ナーデン

次話で四章は終わりです。

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