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異世界の透明人間~魔道具を駆使する暗殺者~  作者: 城戸一
四章 忘れられた機械兵
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44 魔道具 『霧の小型灯』

 機械兵は正面を向いたまま動かない。視線の先には丁度僕がいる。


 居心地の悪さを感じて僕は体を左にずらす、すると機械兵の視線も同じくそちらに移った。


 ならばと今度は体を右にずらした、すると同じく視線はそちらに動く、僕の存在を認識しているような動きだった。


 偶然か?


 不安になり距離を取ろうとすると機械兵が口を開いた。


 「主、ごめんなさい、財を奪われてしまいました」


 財?

 財を奪われたとはどういう事だろう、もしやダンジョンに散らばっていた魔道具の事を言っているのだろうか。


 「でも、なんとかこれだけは守り通しました」


 機械兵は軋んだ音を立てながら右の手のひらを見せる。

 その右手には何も無い。

 だが機械兵が何かを押すような動作をした瞬間、手のひらの上に小さな棒状の金属が現れた。

 先端にはレンズが付いている。街で売っていた小型灯の魔道具に似ている。



 「主、これをお返しします、主が大事にしていた『霧の小型灯』です」


 そう言って機械兵は小型灯を渡そうと腕を上げる、だがその腕は途中で止まり、鈍い音を立てて床に転がった。

 機械兵の視線は落ちた小型灯と僕を交互に見ている、この機械兵、確実にぼくを認識している。


 落ちた小型灯を拾い機械兵に渡そうとするが再び機械兵が口を開いた。


 「主、私はもうここを守る機能を持っていない、全ての操作権限を主に返します」

 「操作権限?」


 僕がそう聞き返すと同時に機械兵の体から軋んだ鈍い音が響き渡る。

 痙攣をはじめ、関節からはキイキィと音を立てている。

 機械兵の目は焦点が合っていない。そうして最後に大きく痙攣し、胴の部分についていた魔石が割れる音がした。


 そうして機械兵は動かなくなった。


 その後、機械兵に話しかけるも返事が返ってくることは無かった。

 僕は渡された小型灯を見る。

 名前は確か『霧の小型灯』だったか?


 小型灯には二つのボタンがある。

 一つは青色のボタン、もう一つは赤いボタンだ。


 どうする?使ってみるか?


 普通ならば用途の分からない魔道具を使ったりはしない。

 だがここはダンジョンだ、ダンジョンで手に入れた魔道具がそのダンジョンを攻略するために必要だったりする事はよくある。

 僕は閉じ込められている、脱出する手が思いつかない。試しに使ってみるのもいいかもしれない。


 小型灯の青色のボタンを押す。

 すると小型灯のレンズの部分から青い光が発した。

 青い光は部屋の隅に設置されている机の上の書籍を照らしている。

 ボタンをもう一度押し、青い光を止めても書籍は青白く光っている。

 だがそれだけだ、何かが起こる気配は無い。


 ならばと赤いボタンを押してみる。


 赤い光がでるのだろうか?そう思ったが光が出る気配は無い。

 何も起こらない。何かが起こる気配は無い。


 いや、なにかがおかしい、そう思い魔道具を見ると掌から魔道具が無くなっていた。

 『霧の小型灯』を手に持っている感触はある、だが姿形が見えなくなっている。


 おかしいと思い部屋を見回してみると、先程青い光を当てた机の上の書籍も無くなっていた。


 そして机も一部が見えなくなっている。

 書籍があった場所に手を伸ばしてみる、すると本の感触があった。

 持っている『霧の小型灯』のボタンの位置を探り、もう一度ボタンを押すと本が目の前に現れる。


 これはもしや、物を透明にする魔道具か?


 もしそうならばこの魔道具は自分にとってかなり都合がいい。


 今まで透明な状態で過ごすには全裸である必要があった。

 だがこれで外套や靴を透明にすれば、寒い日も全裸で行動する必要が無くなる。


 しばらく机の上の本を見ていたが、気がつくと本に纏わり付いていた青い光は無くなっていた。

 時間制限があるのだろうか。色々試してみたい。


 そう思い部屋を見回すと、いつのまにか四足歩行の機械兵が僕の足元に来ていた。

 赤いレンズをこちらに向け、四足歩行の機械兵が僕を見上げている。


 「うぉ!?」


 びっくりして四足歩行の機械兵との距離を取る。

 近づかれた事にまったく気がつかなかった。

 何処に潜んでいたのだろう。


 「主、指示を」


 喋った!?

 なんだこいつら!もしかして喋れるのか!?


 ハーマンは機械兵が喋れるとは言っていなかった、もし今まで知られていなかったのなら大発見である。

 

 しかし指示?

 何で僕が?


 そういえば先程の人型機械兵は操作権限を僕に渡すと言っていた。

 ダンジョンの仕組みは良く分からない。

 もしや僕がこのダンジョンの主になった?



 四足歩行の機械兵は赤いレンズをこちらに向け動かない。

 僕の指示を待っているのだろうか。

 指示と言われても何をすれば。


 そうだ、僕はダンジョンに閉じ込められている状態だ、もしこの四足歩行の機械兵が言う事を聞いてくれるのなら出口まで案内してくれるのではないだろうか。

 僕は屈んで四足歩行の機械兵と視線を合わせる。


 「このダンジョンから出たいんだ、出口まで案内してほしい」


 そう伝えると四足歩行の機械兵は向きを変えた、ゆっくりと僕が歩いてきた方向へと動き出す。

 ついて行けばいいのかな?


 『霧の小型灯』を握り締め、僕は機械兵の後を追った。

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