42 分断
二人は更にダンジョンの奥深くへと足を進める。
道中随所に祭壇が設置されていたが全て荒らされていた、何か貴重品でもあったのだろうか、祭壇の中央は不自然な空白があった。
先程と同じような階段を降りていく、するとハーマンが何かに気がついたようでニックの肩を掴んで止めた。
「ニックさん、止まって下さい」
「どうしました旦那?」
「そこの階段、材質が違うのが分かりますか?どうやら仕掛けがあります、踏むと何らかの罠が発動するのでしょう」
確かに他の石段とは違う材質のようにも見える。
その階段だけ他の白い階段とは違い黄ばんでいた。
「間違いありません、世界各国の遺跡にも似たような罠があります、間違いなくこれも同じものでしょう」
「どうしますか旦那、引き返しますか?」
「いいえ避けて進みましょう、一段飛ばせばいいだけです、慎重に回避しましょう」
二人は階段を一段飛ばして進んでいく、僕も二人に習って先に進んだ。
*
しばらく階段を降り続けるとまた開けた円型の部屋に出た。
先程の部屋と同じく祭壇があるがここも荒らされている。
ハーマンは祭壇を熱心に調べていたが何かを見つけたようで急に動きを止めた。
「おや?」
ハーマンの動きが気になったので近づいて祭壇を確かめる。
祭壇には不自然な所は無い、だがハーマンが注視している場所、祭壇の裏の壁に妙な継ぎ目がある。
ハーマンは継ぎ目を指で這うようになぞっていたが、壁に設置されている燭台に気がつくとそれを思いっきり下に引っ張った。
燭台は一見動かなかったように見えた。だがゆっくりと下に沈み始めている。
そして壁は唸り声のような音を立て始め、ダンジョンの床は揺れ始めた。
「旦那!下がってください!」
ニックがハーマンに慌てて駆け寄る。
今まで壁だった場所が上に上がっていく。
壁だと思っていた場所は上下式の扉だったようだ。
現れた通路からは三体の二足歩行の機械兵が現れた。
機械兵は右手には巨大な剣を持ち、左手には斧を持っている。
機械兵達は侵入者の存在を確認すると武器を構え二人に迫っていった。
「まだ機械兵が残っていたか!旦那、後ろに下がってください!」
一体の機械兵が斧を振りかぶりニック目掛けて突っ込んでくる。
だがニックは斧を自身の大剣で受けると斧ごと機械兵を弾き飛ばす。
横から迫っていた機械兵に対しては足を使って胴の部分に一撃入れていた。その衝撃に耐えられなかった機械兵は武器を手放しひっくり返る。
「所詮機械だ、動きが単調なんだよ!」
そう叫んだニックは最初に弾き飛ばした機械兵に大振りで大剣を振った。
機械兵は両断され、火花を散らしやがて動かなくなった。
続けてニックは後ろに控えていた機械兵に大剣を振りかぶる。
機械兵は驚いたように武器を構えるが武器の合間を縫ってニックの大剣が機械兵を両断した。
その横から最後に残った機械兵が起き上がり、剣を突き出しながら突っ込んできた、だがニックは焦らず距離を取って大剣を振りかぶった。
そうして正面からくる機械兵の攻撃を交わし、大剣で最後の機械兵を両断した。
辺りはバチバチという音が響いている。壊れた機械兵が火花を散らし煙を上げていた。
「終わりましたよ旦那」
「さ、さすがです」
ニックは倒した機械兵から魔石を取り出している。
ハーマンは恐る恐るといった感じで機械兵達が現れた通路に目を向けていた。
「ニックさん、いま機械兵達が現れた所は通路になっていますね、もしかしたら未踏破領域かもしれません」
今度は新しく現れたこの通路を進むのだろう、通路は一本道だがすれ違えないほどではない、僕は先に通路に足を踏み入れる。
「待ってください旦那、本当に未踏破領域だと私だけでは戦力不足です、町に戻って新たに護衛を雇わないと厳しいです」
先に進まないのか?ならば僕も戻ろう。
ニック達の所に戻ろうと足を向けると辺りに地鳴りのような音が響き始めた。
先程燭台を引っ張った時の様な鈍い音が辺りに響き渡る。
心なしか地面も揺れているように感じる、僕はバランスを崩して膝を付いてしまった。
するとその瞬間、燭台を引いた時に上がっていった壁が物凄い勢いで下りてきた。
辺りに轟音が響き渡る。
まずい!
あわてて下りてきた壁に駆け寄り持ち上げようとする、だが壁は重く持ち上がる気配が無い。
壁の向こうからは二人の会話が聞こえてくる。
「危なかったですね旦那、今のは下手したら分断されていましたよ」
「しかし未踏破領域が!」
「あの燭台を引っ張ればまた道は開けますよ、今回は最初の計画通り最深部まで行って帰りましょう」
壁の向こうから聞こえる二人の声は遠ざかっていく。
壁はいくら叩いても開く様子は無い。
一人取り残されています!助けて!
しかし願いは届かず二人の話し声は徐々に遠くなっていった。
そして僕が壁を叩く音以外、何も聞こえなくなった。
僕は二人と分断されてしまった。
呆然と通路の先を見る。
するとその先には四足歩行の機械兵が中央に陣取っていた。
その機械兵がこちらを見ているように感じた。
四足歩行の機械兵の無機質なレンズが、僕を見続けているように感じたのだ。
見えるわけが無い、僕は透明人間なのだから、姿は見えない、そのはずだ。
まさかと思いながら機械兵を見続ける。すると機械兵の姿が徐々にぼやけてきた。
おかしい、そう思いながら目をこすり再び目を開けると、機械兵の姿は何処にも無かった。




