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異世界の透明人間~魔道具を駆使する暗殺者~  作者: 城戸一
三章 廃都に跋扈する白
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38 バレた 逃げろ

 教会の騎士、ナーデン・エクレムは『聖人のロザリオ』を届けるため、エドモンドのいる礼拝堂奥の部屋を訪れていた。


 「ナーデン、『聖人のロザリオ』が見つかったとか」

 「この通り無事に取り戻しました」


 『聖人のロザリオ』をエドモンドに差し出す。

 だがロザリオが戻ったというのにエドモンドの顔に喜びは無い。

 また本物ではないと思っているのだろうか。

 背後でタナートが息を呑む音が聞こえてきた。


 「本物かどうか確かめるには使用するのが一番いいでしょう。そこのあなた、以前と同じように患部を出して頂けますか」


 エドモンド殿が後ろに控えていたタナートを指名する。


 「は、はい、少々お待ちを」


 タナートが上着を脱ぎ患部を差し出す。

 準備を終えたタナートの前でエドモンドがロザリオを掲げる。



 ロザリオから光が溢れ出す、光はタナートを包みこみ姿が見えなくなる。

 光が収まるとタナートに腕がある事が見て取れた。間違いない、これは本物の『聖人のロザリオ』だ。


 「治った、私の腕が治った!」


 腕が治ったことによりタナートが喜びの声を上げる。

 良かった、ロザリオは本物だったのだ。私は無事任務を達成した。エドモンド殿もお喜びになるだろう。


 そう思いエドモンドの方を見てみると様子がおかしい事に気がついた。

 エドモンドはロザリオを見つめ続けている。

 目を見開き、口は半開きで震えていた。


 「エドモンド殿?」

 「そんな、馬鹿な、そんな事があるわけが無い!」


 タナートもエドモンドの異変に気がつき声をかける。


 「どうされましたエドモンド殿?」


 だが問いかけにも答えずエドモンドは頭を抱え体を左右に振っていた。


 「いったいこれはなんなのだ?こんな事があるわけが無い!これは本当に『聖人のロザリオ』なのか!?だとしたら私は今まで何を!?」



 深夜の教会で、発狂するエドモンドの声が響き渡っていた。





     *






 医者のダンテ・アルジャーはいつもの日常を取り戻していた。

 妻は白火病だった。だが先日、白火病の薬を手に入れる機会があり、その薬を妻に投薬したところ徐々に元気になった。

 長い間ベッドの上で過ごしていたせいで筋力は弱っていたがそれだけだ、すぐに昔のように元気になるだろう。

 娘もまた昔のように母親と遊べると喜んでいた。


 街では白火病が流行の兆しを見せていた。だが友人のトルテが薬の大量生産に踏み切った事で死者はこれ以上出ないのではないのだろうか。


 なにもかも順調だ、そう思っていたが事態はそう都合よく進まなかった。


 薬が市場に出回り患者に行き渡る。

 そして在庫が出始めた頃にそれは起こった。


 トルテの薬局に泥棒が入ったのだ。


 薬庫の金属扉はひしゃげており無残な姿になっていた。

 そして中で保存していた黒角族の角が盗まれていたのだ。

 薬の在庫確認をすると他の薬や材料は何一つ盗まれていなかった。黒角族の角だけが無くなっていた。


 トルテは被害届を出さなかった、扉の修繕を大工に依頼してそれで終わった。



 俺はトルテを問い詰めた、なぜ被害届を出さないのだと、だがあいつは何も答えてくれなかった。

 常に何かに怯えているようで決して口を割らなかった。




 そうしている内にクロというスラムの子供と約束した日になった、黒角族の角を持ってきたのはこのクロという子供だ。

 トルテも家に呼んである、金の配分と角の話だ。

 角は盗まれてしまった、弁済するような金はない、なんとか今ある金額で納得してもらえないだろうか。


 だがその日、いつまで待ってもクロは来なかった。

 どれだけ待ってもクロは現れなかった。




     *




 クロはスラムのゴミ集積所を歩いていた。

 目の前には大量のゴミが広がっている。碌に分別もされていないゴミはナマ物も混ざっており悪臭を放っていた。

 ゴミはここに溜めるだけだ、燃やすなどの処理はしない。かつては都市として機能していたこのスラムも今では街として認識している者はいない。


 街の外という扱いだ、街の外にゴミを捨てるだけだ。


 ゴミの中から鉄クズを拾い集める。

 鉄クズに付いていたゴミを取り払いまとめる。そうしていつも利用している店に鉄クズを持ち込む事にした。



 「久しぶりウルス」

 「クロか?久しぶりだな。仮面は変えたのか?」


 ここに来るのは本当に久しぶりだ、以前は毎日のように金属片を持ち込んでいたが色々あったせいで遠ざかっていた。

 なんだかとても懐かしい。


 懐かしかったのでウルスが鑑定している姿をまじまじと見てみる。

 視線に気がついたのかウルスはこちらを見ずに話しかけてきた。


 「なあクロ、お前黒角族と何かあったか?」

 「何かって?」

 「客の黒角族がお前の事を探しているようだった」


 色々あった事は確かだが探されるような事をしたか?したな。


 「親の敵でも探しているんじゃないかってくらい物凄い剣幕でお前の事を嗅ぎ回っていた」


 以前『風神の腕輪』で黒角族と揉めた時はそこまで誰かに探されているようには感じなかった。

 なのに今更?なんでだ?何かやっただろうか。


 ウルスは鑑定が終わったのか一枚の銅貨を渡してくる。 


 「なあお前さん、本気で逃げた方がいいんじゃないか?」

 三章完結です、ここまで読んでいただきありがとうございました!

 次回更新は三月中旬になります。

 一月以上空いてしまいますがお待ちいただけると嬉しいです。

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