29 堂々としていれば何とかなる
住宅街を抜け、数刻歩くと途端に自然が多くなる。
公園や自然保護区が多い中、木の門で囲まれた広い敷地がある。そこが神斬剣の道場だ。
ここでは神斬剣の技術を学ぼうという人々か年齢性別問わず集まる。
ある者は純粋に剣の腕を研きたい者、またある者は神斬剣に所属する事で自らの権威をあげたいもの、様々な思惑で神斬剣の門を叩く。
夜も明けかけたこの時間、門の前は複数の人が出入りをしていた。
僕もその人ごみに紛れ門をくぐる事にした。
「そこの少年止まりなさい」
無理だった。
「仮面を着けている君だ、神斬剣の者ではないだろう?」
「ご、ごめんなさい」
駄目だったじゃないか、ラントも適当な事いいやがって。
「ここに何のようだ、入門希望者か?生憎この時期は新規入門は受け付けていない、入門希望なら春まで待て」
「あの、人に会いたくて」
「面会か?誰にだ」
「キアラさんです」
なぜかさんを着けてしまった。
「キアラ様に?何用だ」
「お金の貸し借りの話です」
「キアラ様がお金の貸し借り?あの人はそのような事をする方ではないのだが」
門番の視線が疑いの目に変わった。これは素直に答えない方がいいかもしれない
「ラントの使いです。お店のツケを払っていないのでキアラさんから借りてこいと」
事実なのだがこんな言い訳では通してもらえないだろう。
「少年、君の名前は?」
「クロです」
「しばし待たれよ」
そう言うと門番の一人は中に入っていった。確認はしてくれるのか。
ラントはここの人達に信頼されていないのだろうか。
残ったもう一人の門番とその場に残される。
とても気まずい。
しかし良く見るとこの門番、以前スラムでキアラの護衛に付いていた人だ、確認に行った人もそうだろう。
残された門番と気まずい時間を過ごしていると確認に行った者が走ってこちらに来るのが見えた。
「キアラ様がお会いになるそうだ、ついてきなさい」
門番に案内され、敷地内に入る。複数ある道場の中からは朝も早いのに剣を打ち合う音が響いていた。
走り込みをしている者もいる、子供から老人まで様々な世代の人間が訓練を行っている。
「これからキアラ様のいる道場に案内するが、その仮面は着けたままなのか」
門番が声を掛けてきた、やはり仮面存在は気になるようだ。
「この仮面、外れないのです」
そういう設定にした、最近新しく会う人全員に、仮面の事に対して何か言われている気がする。対処法はこれに決めた。
「呪いの類いか、解呪の魔道具に心当たりがある、試してみるか」
この門番いい人だな、だが今その親切は余計だ。
「この仮面気にいっているので遠慮しておきます、お気遣いなく」
門番が今日一の怪訝な顔をしていた。
「ここがキアラ様がいる道場だ。失礼が無いようにな」
「はい」
「キアラ様、クロ様をお連れしました」
「どうぞ」
中からキアラの声が聞こえる、最後に会ってからあまり時間はたっていないはずだが、ずいぶん懐かしい声に感じた。




