28 剣士との再会
歓楽街に併設するように一軒の治療所が建っている。
看板にはダンテ治療所と書かれており、夜も更けたこの時間であっても建物内は明りがついていた。
「無理だ、帰ってくれ」
医者を尋ねたがいきなり断られてしまった。
「お前スラムの人間だろ、患者が動けないならこっちから出向かなければならない、あんな治安の悪い所に行けるか」
「そこをなんとかお願いします」
「無理だ、言っておくが俺が特別薄情な訳ではないぞ、最近のスラムは物騒だからな、あそこに近づく医者はいないよ」
「どうしても無理でしょうか?」
食い下がってみるが医者は顔を顰めるだけだった。
「優秀な護衛でもいれば別だが、それこそ神斬剣の達人くらいの護衛がついてくれればスラムだろうが行くさ、無理だがな」
「神斬剣?」
「ああ、ゆったりとした服装している民族衣装着ているやつらだ、まぁそいつらは無理だろうから複数人の信頼できる冒険者に護衛について貰うのが現実的だな」
護衛か。
「信頼できる護衛がいたらスラムまで行ってやる。だから今は帰ってくれ、最近流行り病がでて大変なんだ」
そう言われて病院から追い出されてしまった。
どうする?他の病院も回ってみるか?なんとなくだが他も同じ結果になる気がする。
優秀な護衛、神斬剣、民族衣装か。
最近そんな服を着た人間に合った気がする。だけどあの二人が何処にいるか分からない以上頼りには出来なかった。
ひたすらスラム周辺の医者を尋ねる、だが夜も遅いので閉まっている治療所が殆どだ。空いている治療所もこちらがスラムの人間だと分かると門前払いされた。
酔っ払いが道の端で嘔吐しているのがみえた、さらに奥では顔中に白い斑点が浮いた人物が地面に転がっているのも見える。あの病気、流行っているのだろうか。
疲れた、もう歩けない。
万策尽きて立ち止まると見覚えのある酒場の前にたどり着いていた。
確信があった訳ではない、だけど例のあの人が居るような気がして僕は酒場のドアを叩いた。
中に入ると仕事を終えた住人が酒を浴びるように飲んでいる、そんな酒場の隅の座席で一人の男が食事をしているのが見えた。
見つけた。
「ラント」
「うお!?」
ラントは誰かに声を掛けられるとは思っていなかったのだろう、名前を呼んだらとても驚いていた。
「なんだクロか、お前仮面変えたのか」
「久しぶりラント」
ラントは空になった皿を前に酒場でボーっとしていた、食べ終わってから大分経っているようだが何か注文をしているようには見えない。
「どうしたクロこんな所で」
「ラントに用があって」
「俺に?」
「うん護衛の仕事を引き受けてくれないかな」
「護衛?俺がか?」
「うん、ラントって神斬剣の剣士だよね」
ゆったりとした服装、民族衣装、条件は一致する。
「確かにそうだが」
ラントはしばらく考えこんでいたがやがて口を開いた。
「なんで護衛がいるんだ、この前キアラが払った金で冒険者を雇ったらどうだ」
「別用で少し前に冒険者ギルドには行ったんだ。でも仮面を着けている人は仕事の依頼も受注も出来ないんだって」
「仮面外せって」
それだけはどうしてもできない、仮面の下は透明なのだから。
「スラムで医者に見せたい人がいるんだ、だけどスラムまで行く条件に腕の立つ護衛を指定されちゃって」
「医者って病気の奴がいるのか」
「うん」
「助けてやりたいが俺は今動けなくてな、金が無いのに飲み食いをしてしまった、その上今まで溜まったツケも払えと言われてしまって身動きが出来ない」
なぜお店に入ったのだろうか、普通はお金がなかったら注文もしないし入店しない。
「少しくらいなら僕が払うよ?」
医者に払う金は残さないといけないが少しくらいなら払える。
「金貨20枚なんだが足りるか?」
「無理です」
飲食店で金貨20枚?いったい何を食べたんだ。
それともツケが溜まりに溜まってそうなったのだろうか。
「なあクロ、逆に俺から頼みがあるんだが」
「頼み?」
「俺ん家まで行ってキアラからお金を借りてきてくれ、金貨20枚。借りてきてくれたら護衛も引き受ける」
それで護衛を引き受けてくれるのなら構わない。
「だがただ取りに行けばいいわけじゃないんだ、親父にばれないよう、キアラにこっそりお金を借りてきて欲しいんだ。」
キアラが怒りそうな案件だ、それに他人のお宅に僕が足を踏み入れてもいいのだろうか。
「ラントの家に僕は入れるの?スラムの人間ってだけで家の人に門前払いされそうなんだけど」
「人の出入りが多い所だから大丈夫だ、門番もいるが堂々としていればそのまま通れるよ」
そんなものなのだろうか。
不審に思いながらもラントの家の場所を教えてもらった。
そうしてラントの家まで向かう事にした。




