27 命を蝕む白
お待たせしました三章の投稿を開始します。
寝床は荒らされていた、隠していた金貨は床にぶちまけられ、二重底に入れていた指輪は侵入者の指に着けられている。
少女の顔を覗き込む、見た事の無い顔だ。綺麗な顔をしていたのだろうが顔中に白い斑点が浮かんでおりまさしく病人という顔になっていた。年は十代前半だろうか、僕と同じくらいの年齢に見える。
呼吸は荒く顔は赤い、熱もあるように見える。
なんにせよ病気ならうつされたくない、早いところ出て行って欲しい、看病しようという気はまったく湧かなかった、なぜ見ず知らずの人間を助けなければならないのか。
壁にかけてあったマントを身につけ仮面を被る。
「起きてくれ」
軽く肩を揺する、軽い呻き声を上げるが起きる気配はない。
体を揺すった際少女の指に身につけていた指輪が目に入った。
よく指輪を観察すると以前僕が拾った指輪とはリングの部分の模様が違っているように思えた。
床に転がっている二重底の箱を手に取る。底面に貼り付けてあった板を取り出すとそこには以前と変わらず指輪があった。
(この指輪は別の物か)
箱に入っていた方の指輪を手に取る。
魔石の部分に触れると指輪が突然光りだした。
「うわっ!」
光りだした指輪はある一点を指し示していた。それはすぐ近く、少女が指に着けていた指輪を指し示している。
(もしかしてこの少女は指輪の光を追ってきたのか?)
だとするとこの指輪の元々の持ち主はいま目の前で横になっている少女なのかもしれない。
泥棒というより自分が失くした指輪を探す為にここに来たのだろうか。
「姉さん」
少女が呟いた、目が覚めたのか?
そう思ったが少女はいまだ横になったまま目を閉じている。その目からはうっすら涙が流れていた。
どうやら寝言だったらしい。
一度寝床から出ることにした、あのまま寝床に居て病気をうつされるのは嫌だったし無理矢理追い出すことも良心が邪魔をして出来なかった。
どうするべきだろうか、助ける?
自分の生活もままならないのに人助け?そんな余裕は僕には無い。
だがもし助けるとしたら病院だ、そして医者に見せるにはお金がいる。だがお金を見ず知らずの誰かの為に使用するのは気がひけた。
教会はダメだ、彼らが治療するのは裂傷などの傷だけだ、病気は治せない。
しばらく寝床の外で考えていたが答えはでなかった。
もう一度寝床に戻る、侵入者の少女は相変わらず横になったままだ。
少女の頬に触れてみる、かなりの高熱だ、治療をしなければ命に関わるだろう。
頬に触れた手を少女が握り返した。
弱々しい手だった。ちょっと力を入れれば簡単に振り払えるだろう。
「姉さん、助けて」
僕は姉じゃない、助ける義理なんかない。そう思い少女の手を離す。
床に転がっている金貨を集め、袋に詰め込み寝床を出る。
この時の僕は自分の事が本当に嫌いになりそうだった。
自分の事もままならないのに人の為に何かをしよう、そんな事を思える心の余裕も経済的な余裕も無い。
僕は聖人ではないのだ、そう自分に言い聞かせる。
スラムを抜けた先の歓楽街、その近くに医者が店を構えていたのは覚えていた。
僕の足は自然にそちらに向かっていた。




