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24 偽物

 ナーデン達はロザリオが保存されているという礼拝堂の奥の部屋に向かっていた。

 仮面はタナートの手にある、クロはその後ろからこっそりと付いてきていた。

 ナーデンが入ったその部屋には沢山の神官や教会騎士が控えている。


 「おお、ナーデンだ」

 「あの魔道具狂いか、確かに奴ならこの魔道具を扱えるかもしれん」

 「エドモンド様もいるぞ、魔道具の解放方法が分かったという噂は本当だったか」


 部屋に入ると一斉に視線がナーデンに集まった、だがナーデンは臆することなく歩みを進める。


 「みなさん、これから『聖人のロザリオ』を取り出します。爆弾の解除方法は分かりましたが万が一という事もあります。危険ですので爆弾からは離れてください」


 そう言われ爆弾蛙の周りに集まっていた神官達が一歩下がる、だがその中で腕を組みながらその場を動かないものがいた。


 「ナーデン殿、ロザリオを取り出す方法が分かったというが、その情報は本当に正しいのか?犯人は既に言葉を発しない。その状況で本当にロザリオを取り出せると?」

 「はい、間違いなく無事に取り出せる事をお約束します」


 一人の小太りの中年神官がナーデンに食って掛かっている、眉は吊り上がり顔は真っ赤だ。


 「先ほど万が一があると言っていたではないか、もし間違っていたらどうするのだね」

 「失敗したとしてもいきなり爆発するわけではありません、もう一度試すことは出来ます」

 「その情報は本当に信頼できるものなのか?そもそも何処で仕入れた情報なのだ、聞けばスラムに出入りしていたという話もある、そんな所で仕入れた情報に信頼性などあるものか!いったい誰から情報を得たんだ!」

 「情報提供者の名前は伏せさせて頂きます、ですがロザリオは間違いなく無事に取り出せます」

 「そんな胡散臭い話信じられる訳無いだろう!」


 顔を真っ赤にして意義を唱えている神官に対し、後ろで様子をみていたエドモンドが声を掛ける。


 「トム殿、落ち着いてください」


 トムと呼ばれた神官はエドモンドに声を掛けられて顔を歪める。


 「現状このままではいつまで経ってもロザリオは戻ってきません、ですから一度試してみましょう」

 「いやしかし……分かりました。エドモンド様がそう言うのでしたら」


 トムはエドモンドに窘められ引き下がった。


 (エドモンドって教会の偉い人なのかな)


 この場にいる人はエドモンドには敬意を払っているように見える、それに対しナーデンを見る眼は奇妙なものに感じた。変人や面白い奴を見るようなそんな扱いだ。


 (魔道具狂いとか言われているし、ナーデンはあんまり立場が良くないのかな)


 「ナーデン、そろそろお願いしてもいいでしょうか」

 「はい、お任せください」



 ナーデンは机の上に置かれた蛙を手に取り、クロが予め伝えていた番号を入力していく。

 番号を入力し終わると蛙がゲコゲコ鳴き始めた。


 それを遠くから見ていた神官達が一歩引くのが見えた、軽いざわめきが起こる。

 だがざわめきに反して蛙は口を開け、小さなロザリオを一つを吐き出した。


 「おお!」

 「ロザリオを吐き出したぞ!」

 「さすがエクレム家!魔道具の扱いはお手の物だったか!」


 ナーデンを見る、実は自信が無かったのだろうか、安心したような顔をしていた、そして嬉しそうだった。

 トムと呼ばれていた神官は面白くなさそうな顔をしている。


 「さすがはナーデン、よくぞ無事ロザリオを取り戻しましたね」

 「これも皆様のご協力あっての事、私だけの力ではありません」


 辺りは歓声に包まれている。

 エドモンドは取り出したロザリオを愛おしそうに観察している。

 だがロザリオを持っていたその手が急に止まり表情が曇った。


 (なんだ?)


 「そこの方、お名前はなんと言うのでしょうか」


 エドモンドはタナートを見て声を掛けた。


 「へ?私ですか、私はタナートと申します。エクレム家にて従者をしている者でございます」

 「この度はナーデンの活躍で無事ロザリオが戻ってきました。ですので貴方のその腕、差し支えなければ治療したいと思っています。どうでしょうか?」

 「私の腕をですか!?それは治していただけるのならありがたいですが」


 ロザリオを使用すると宣言したその瞬間、部屋の中は歓喜に包まれた。


 「エドモンド様がロザリオを使われるようだぞ!」

 「教会の宝と言われるロザリオを使用されるだと!?私はロザリオでの治療を一度も見た事無い、ぜひ見学させてくれ!」

 「ロザリオの神秘を生きている内にこの目で見られるとは!」


 あれよあれよとタナートとエドモンドの周りに人が集まる。

 ナーデンは乗り遅れたのか部屋の隅でポカンとしている。


 「では治療を始めます、タナート殿、上着を脱ぎ患部を出していただけますか」

 「は、はい」


 タナートが上着を脱ぎ終わるとエドモンドは持っていたロザリオを前方に差し出した。


 「ロザリオよ、此の者の体を正常なる形に戻したまえ!」



 神官達もロザリオが起こす奇跡を人目見ようと食い入るように見ている。

 だがロザリオに変化は起こらない。何も起こらない。

 タナートの腕も治る気配が無い。


 「ふむ、何も起こりませんね」


 周りに控えていた神官達に小さなざわめきが起こる。


 エドモンドは持っていたロザリオを下ろし、そして誰もが予想していなかった言葉を発した。


 「このロザリオは偽物のようです、ナーデン、引き続きロザリオの探索を命じます」

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