22 強襲
建物の影から現れた襲撃者達は四人いた、一直線にナーデン達に向かってきている。
「タナート!迎撃するぞ!」
「それが、先ほどから足が動かないのです!」
「なんだと!?」
タナートの足には細い何かが刺さったままだ、急いで引き抜いてはいるが間に合いそうに無い。
「仕方ない!痛いだろうが我慢しろ!」
そう叫ぶとナーデンは懐から天秤を取り出した。
天秤の皿に手を掛けた瞬間辺りに重圧が掛かかる、馬やフードを被った者達を巻き込んで地面に縫い付けられる。
だがクロのいる場所にはその効果は及んでいないようだった。
(この透明な壁のせいか?)
「よし、これで一先ず安心だ。タナート見せてみろ、治療をしなければ」
「お待ちください!まだです!」
ナーデンはすぐに異常に気がついた、自身が謎の浮遊感に包まれていた。体が思うように動かせない。
いや、ナーデンだけではない。襲撃者すらも足取りがおぼつかないのだ。
そればかりか馬車すらもふわふわと安定感を欠いている。周囲全体が何かの力によって浮遊感を得ている。
「これは魔道具の力か!?」
襲撃者は地に足が付いていないもののなんとか動けるようになっていた。そして手に持っていたナイフをナーデン目掛けて投擲する。
「くっ」
ナーデンは天秤を投げ捨てた後、手のひらサイズの黒い八面体を取り出した。
八面体を瞬時に握りつぶすとナーデンとタナートを覆うように巨大な黒い球体が出現した。
黒い球体に包まれて二人の姿は見えなくなる。投擲されたナイフは球体に阻まれ弾かれていた。
襲撃者達は攻撃しても無駄だと判断したのか体制を立て直すことにしたようだ。
浮いている一人が緑色の羽根を取り出すと浮いていた襲撃者達はゆっくりと地に足をつけた。天秤の効果もいつの間にか無くなっている。
彼らはゆっくりと黒い球体に近づいていく。一人が棍棒を取り出し球体を叩き始めた。
だが球体には軽い波紋が浮いただけで壊れる様子は無い、諦めきれないのか棍棒で殴り続けるが球体が壊れる気配はない。
もう一人が手を出そうとしたその瞬間だった。
球体の中から赤い刀身を持つナイフが投擲されたのだ。そのナイフは球体を、そして襲撃者の一人を貫いてこちらに向かってくる。
そのナイフはクロの目の前にあった透明な壁すらも突き破ってそのまま地面にめり込んだ。
(危ない、いま当たる所だったぞ)
透明な壁は壊れたかと思ったが依然としてそこにある、ナイフが突き破った所もすぐに塞がっていた。
襲撃者達は仲間が一人やられた事によって一歩下がった、その瞬間二人を覆っていた黒い球体が消えた。
タナートが既に剣を抜き襲撃者の一人に切りかかる。足が動くようになったようだ。
一人を切り伏せ次のもう一人に切りかかろうとした。だが距離を取っていた襲撃者の一人が先ほどと同じく細い何かをタナートに向かって投擲した。
「同じ手は食らわない」
襲撃者の動きを見たナーデンがすかさず新たな魔道具を投擲した。
小さな蜘蛛の形をした魔道具だ。
その蜘蛛は投げつけた瞬間多量の糸を前方に向かって吐き出す。
放った細い何かを巻き込みながら襲撃者を拘束した。
「こいつ!何個魔道具を持っているんだ!?」
襲撃者の一人が叫ぶ。
動ける襲撃者は残り二人だ、一人が拘束された襲撃者に向かって走り出す、この状況で救出するつもりのように見えた。
「やらせると思うか!」
タナートが足元に転がっていた襲撃者が放ったナイフを拾い、救助に向かった襲撃者に投げつける。
だが襲撃者は腕にナイフが刺さったのにも関わらず歩みを止めない、そして拘束された者に覆い被さった。
そうしてピクリとも動かなくなった。
その瞬間透明な壁が消えた、残った最後の一人がこちらに向かって走りこんできた。
そしてクロの足元にあった仮面を掴み、そのまま走り去っていった。
「なっ!?」
咄嗟の行動に反応できなかった。
「仮面殿!?」
タナートが仮面を奪った襲撃者を追いかけようとする。
「待てタナート、追わなくていい」
「しかし仮面殿が!」
タナートが襲撃者の後を追おうとするがナーデンが止める。
(仮面が!僕の仮面が!!)
「大丈夫だ、そもそも喋る仮面など最初から存在していなかったのだ」
「どういう事ですか」
「そうだろう仮面殿、いや姿の見えない人間。透明人間といった所かな」
ナーデンはそこには居ないであろう人間の肩に触れた、すなわちクロの肩に。




