12 黒角族との戦い
ラントと黒角族は剣を合わせながらお互い睨み合っている。
「クロ、こいつは俺が相手する、『風神の腕輪』を持って下がっていろ」
「ほざけ、人間如きが我らの相手になどなるものか」
「お前魔人か?ここで退くなら見逃してやってもいいぜ」
「否、退く気はない、逃げるなど論外だ。貴様らはここで死ね」
黒角族の男が合わせていた剣を押し込む、その勢いを利用してラントは後ろに飛んだ。
「いくぞ!」
ラントは剣を振りかぶり黒角族に突っ込む。
(早い!)
しかし黒角族は焦る事なくラントの剣を受ける。
「黒角族、お前には聞きたいことがあってな、ネールという女性を知らないか?最近スラムで亡くなったみたいなんだがな」
「人間の事など一々覚えているわけが無いだろう、毎日何人も切り伏せているのだから」
「はっ、殺人狂か何かか?頭のネジ吹っ飛んでんじゃねえの?」
「人間など腐るほどいるだろう、一人や二人減ったところで何かが変わる分けでもない」
剣を合わせ鍔迫り合うがラントはだんだん押し込まれている、力では完全に押し負けている。
だがラントの持っている剣が淡く光出した、薄っすら剣が炎を纏っている。
「む!?」
「燃やせ!イクリプス!」
その瞬間炎が弾けた、黒角族の男は慌てて距離をとる。
「貴様その剣、ただの剣ではないな」
「ご名答、こいつは『魔炎剣イクリプス』、お前の肌を焦がす事くらいはできるぞ」
「ふん、打ち合うのは止めた方がよさそうだ」
「遠慮するなよ、構わず打ち込んできていいんだぞ」
「そんな挑発などに乗らん」
二人は距離をとりつつ向かい合う、お互いに決め手を欠いているように見えた。
「しかし黒角族ってのはすげえ力だな、つばぜり合いで押し負ける事なんて今までなかったぞ」
「当たり前だ、非力な人間と一緒にするな」
「その非力な人間に決め手を欠いているのは誰だ?」
ラントが黒角族に向かって踏み込む、黒角族の男は打ち合うのを嫌ったのか、躱そうとする。
「燃やせ!イクリプス!」
剣から炎が伸びる、その炎は黒角族の男に真直ぐ向かっていく。
「なに!?」
それを交わそうとした黒角族はバランスを崩す。そこにラントの一刀が左腕に入った。
「固いな、骨で止まったか」
鬼人の左腕からは血飛沫が上がっているが両断までは至っていない。
「その剣、打ち合わなくとも炎を出すのか」
「ああ、魔道具ってのはそういう分けのわかんないもんだろ?降参するか?その腕じゃもう戦えないだろ」
ラントが距離を再び詰めようとすると黒角族の男は後ろに大きく跳躍した。
「逃げる気か!」
「逃げる気は無いが怪我をしたのでな、少し待て」
黒角族はは距離をとりつづけている、奴が通った道は血が続いているが途中から血が途絶えているように見えた。
良く見ると先ほどラントが切りつけた左腕の傷がほとんどなくなっている。
「なっ!?どうなっている!?」
「傷というものはすぐに治るものだろう?人間は違うのだったか?不便な体だ」
「治る分けないだろうが!」
傷が塞がったのか黒角族は後退を止めた。
「多少の傷は我慢するか、あまり血は流したく無かったのだが仕方ないな」
そう言って黒角族は切りかかってくる。
「くっ」
ラントも応戦し剣を合わせる、だが力は黒角族のほうが強い、どうしても押し負ける。
イクリプスでの牽制も傷を受ける事を決めた黒角族にはあまり効果を発揮していない。
「そう言えば女を捜しているのだったか?最近魔道具を手に入れる代わりに角を寄越せという愚か者が一人いた。一太刀いれたが結局死んだのか?」
「てめぇ、生きて帰れると思うな」
(このまま見ているだけでいいのだろうか)
(この状況で僕にできる事があるのか?)
そう考えた所で思い出す、自分が装備している魔道具『風神の腕輪』、これを渡せば互角以上の戦いをする事が出来るのではないか?
そう思い腕輪を外し持っていた魔石を装着する。
だが腕輪を渡す前に状況は動いた。
鍔迫り合いをしていた黒角族の剣が折れたのだ。
「むっ!?」
「もらった!」
ラントの剣は黒角族の左脇腹に深く食い込んだ、人間ならば致命傷、だか相手は人間ではなかった。
黒角族に食い込んだ剣は体の中心で止まっている、それなのに黒角族は倒れない。
黒角族が左手を振りかぶった、その手は吸い込まれるようにラントの顔面に入った。
「がっ!?」
ラントが吹きとばされる、かなりの距離を飛ばされていた、ラントが起き上がる気配はない。
黒角族が食い込んだ剣を抜き放り投げる。
「さすがに今のは死ぬかと思ったぞ」
黒角族はその場でうずくまっているが腹の傷が徐々に塞がっているように見える。
「聞こえていないか?気を失ったか、やはり人間は貧弱だな」
傷は塞ぎきっていないようだがゆっくりとラントの方に向かっている。
(どうする!?なにかしなくては!)
だが気持ちとは裏腹に体は動かない、目を離した隙に状況が変わってしまうのが怖くて視線を外す事もできなかった。
だからだろうか、背後から来る人物にクロは気がつかなかった。
その人は軽い足取りでクロの横を通りすぎた、その際僕が手に持っていた『風神の腕輪』を取り、腕に装備した。
そうして持っていた剣を一太刀振るう。
『氷霊剣フェンリス』を。
「むっ!?」
黒角族の手足が凍る、困惑の表情を見せた後、冷気が来た方向を睨みつけている。
「クロ君、私が来た方向に護衛が二人がいます。彼らに保護してもらって下さい」
怒りで表情を歪ませたキアラがそこにはいた。




