表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/26

乙女ゲーにトリップした自覚が無いようです ※乙女ゲーム感覚コメディー系

 目の前に立った男性(金髪碧眼イケメンの20前後)が私めがけて剣を振り下ろしてくる。その目は大きく開かれ、口からは雄叫びが響く。

 そんな光景を見ながら思った。

 あぁ、夢か……と。

 ゆっくりと迫って来る男性と剣。体は動かない 目の前に立った男性(金髪碧眼イケメンの20前後)が私めがけて剣を振り下ろしてくる。その目は大きく開かれ、口からは雄叫びが響く。

 そんな光景を見ながら思った。

 あぁ、夢か……と。

 ゆっくりと迫って来る男性と剣。体は動かない。まるで海の底にでもいるかのように圧力がかかり、指一本すら動かせない。

 剣の軌道は左肩から入って心臓の位置を両断する。何故か分からないけどそうなる事は分かった。

 さすがに夢とはいえ、グロいのは嫌だから何とか出来ないかなぁ。と思うものの、動かせないものは動かせない。

 観念して大人しく目をつぶると男性の雄叫びの内容が聞き取れた。


「死ねやクソビッチがぁぉぁぁ」

「誰がクソビッチじゃぁぁ」


 意味を察した瞬間、身体中から力が溢れ動かなかった体が思い通り動いた。つまり、目の前の失礼な男を思いっきり引っ叩いてやったのだ。


「ぶるぁぁぁ」


 男性は血を吐きながら錐揉みをしつつ、5メートルは飛んだだろうか? 三回ぐらい地面をバウンドして地面に激突しピクピクと痙攣している。

 ふんっ!! いい気味だ。

 経験に関してはノーコメントだけど……夢とは言え乙女に対してクソビッチは無いと思うっ!! レディにそんな失礼な事を言うデリカシーの無い奴はイケメンだろうと死あるのみだ!! ……いや、殺すつもりは無いけど。


「馬鹿なっ!? 第一種降魔結界が弾かれるとはっ!?」

「何故だっ!! 間違いなく完璧に決まって居たはず!!」


 声に気付いて辺り見回すとこれまたイケメンが3人居た。

 1人は黒髪黒目で三白眼だけど凛々しい男性。あ、さっき馬鹿なっ!? って叫んだ人ね。

 次はメガネをかけた理知的な男性(銀髪金眼)。この人が何故だっ!! って言った人。

 最後に肩で息をしてうずくまり、こちらを睨んでいる同い年くらいの少年(青髪茶眼)。

 はて? この人たちはなんだろう? と、思っているとメガネをかけた男性は銃を取り出して射ってきた。……ちょっ!?


「死ねっクソビッチ」


 ……はぁ?

 メガネの男性、いや、メガネでいいや。メガネの放った弾丸は何故だかよく見える。

 またまたクソビッチって言われてムカついた!! 綺麗に弾丸をメガネに向かって打ち返してやれ。

 弾丸は4発。狙いは心臓に2発と脳に2発。同じ場所に打ち返したら死んじゃうよね? 流石にそれはやばいか。

 まず右足に1発、左足に1発。右手に向けて1発と最後左手にっ……


「消えやがれぇっ!!」


 視界にいきなり三白眼が飛び込んできた。

 とわたっ!? いきなり視界を塞がれたから、最後の1発だけ少し手元が狂った。……まぁいいかな。

 なんて考えてると、三白眼は短い刀を懐から首に向かって跳ね上げてきた。

 う~ん、こいつは悪口を言ってこなかったから刀の軌道をずらすだけでいいか。

 そっと刀の腹に手を添えて横にそら……あっ、爪長っ!? って長すぎて喉かっさばいちゃったよ。やっばぁ……大丈夫かな?


「だ」


 声をかけようとした途端、急に嫌な予感がして後ろに仰け反る。

 目の前に光で出来たぶっとい矢が飛んできて……あ、三白眼にあたって頭が千切れて飛んでった……

 あ~あぁ……

 槍が飛んできた方を見ると少年が(は? 何避けてんだよ?)って顔で見てた。

 うわっ、三白眼に当たったのに反省の色がないよ。それどころか全部私のせいって感じで、同じクラスの酒井そっくり。事あるごとに私に難癖つけてくるあの目だ。いくら自分がリア充でイケメンの彼氏いるからって……くぅぅ、ムカつくっ!! リア充爆発しろっ!!

 って何っ!? 目の前に光の玉が出てきて飛んでった……えっ!? ちょっ!?

 えっと……見たままに言ってみよう。光が飛んでいって少年が爆発した。何これっ!? 怖いっ!!

 もしかしてリア充爆発しろとか思ったから?

 うっわぁ、見事に粉々……趣味の悪いスプラッターみたい。いくら夢だとしてもこれは無いわぁ……自分で自分に引いちゃうよ?

 っと、そうだ。さっきから大人しいけどメガネの方はどうなった? 確かあっちの方に……っと。あうちっ!! 最後の三白眼の邪魔で弾丸が逸れたのか……脳天に風穴開けちゃってるよ……これもあれだ。運がなかったって事で。

 仕方ない、最初に刀で襲いかかってきた男性を起こして用件だけでも聞いて見るか。……ってあれ? 首がおかしな方向に曲がってないか? ……えっと……脈拍……無し。呼吸……無し。瞳孔……は何を見ればいいんだっけ? うん、まぁ……死んでるっと。……あれっ!? もしかして殺人? ヤバく無い私?

 いやいやいや、これは正当防衛!! ……だよね? 襲ってきたのは向こうの方だもん。って言うかこれは夢なんだからそもそも捕まるとか無いよね? いやー、焦った焦った。


 安心していると、乾いた拍手の音ともに後ろから忽然と声がかかってきた。


「凄いね。まさかただのサキュバスが勇者候補を壊滅。しかも正面から堂々と倒すとは思っても居なかったよ。」


 恐る恐る声のした方に振り向くと、そこには人とは思えないほど美しい格好をした男性が立って居た。色白の肌に燃えるような真っ赤な瞳。髪はシルクのような光沢を持ったシルバーブロンド。額の中央には小さめの角が……あれ? 何処かでみたことがあるような…….

 私が首をひねって悩んでいると、男性は何かに納得したように自己紹介を始めた。


「あぁ、失礼。私は新しく魔王の座についたサタナキアと言う。君の名を聞いても良いだろうか?」


 サタナキア……サタナキア……って!! 昨日までやってた乙女ゲーム「勇者と魔王のエトランゼ」の最終目標じゃないっ!?

 確かこのゲームは勇者候補の集まる学園"クレセントムーン"を舞台に、ヒロインがメガネ知的キャラやオレ様キャラ、弟的キャラや熱血漢と愛情を育みつつ。とあるきっかけで知り合った新米魔王を改心させて最後には射止める。と言うゲームだったよね?

 改めてさっき襲いかかってきた4人の顔を思い出してみる。……おぇ。死体を思い出して吐きそうになった……気持ちを切り替えて襲いかかって来た時を思い出そう。

 まず最初に私をクソビッチ呼ばわりして切りかかってきた男……あぁ、熱血漢の攻略対象だわ。

 次にメガネ……うん間違いない。あれも攻略対象にいた気がする。

 三白眼の男と爆発した少年も良く思い出して見ると攻略対象だわ……

 次にこの状況についてよね? 今は確か、序盤でヒロインと魔王が始めて出会うシーンだよね。

 確か……そうそう。産まれたてで精気の吸い方も知らないサキュバスが街の外れに現れ、この四人が退治と称して虫の息になるまで痛めつけるのよね。そこに颯爽と現れるヒロイン。


「あなた達、何やってるの!? ってキャー!!」


 そうそう、こんな風に。ってキャー?


「クレン、サルファ、ドランしっかりして!! 何があったの!? サタナキア!! ミール!! 説明しなさいっ!!」


  あ、ミールってのはサキュバスの事ね。選択肢次第だけど助けられたヒロインに恩義を感じ、サタナキアとの仲を取り持つ役目になるはずなんだけど……ヒロインのあの視線。間違いなく私の方を向いているよね?


「小娘っ!? 何故私の名前を知っている?」


 ヒロインが(あっ、しまった)って顔してる。夢の中とは言えお間抜けなヒロインだなあ。

 サタっち(あ、サタナキアの愛称ね)はまだヒロインのこと知らないのに一方的に名前を言い当てちゃ怪しまれるって。


「あっやばっ!!」


 ほら、"やばっ"とか言ってるし。


「あ……いえ……そうっ!! そこのミールに教えてもらったのです」


 ヒロインは私を指差す。

 あ、やっぱり私がサキュバスのミールなんだ?


「ほぅ、そこなサキュバスはミールと言うのか。美しい名だ。

 だが、彼女も私のことは知らなかったようだが?」

「えっ? 嘘!? 確かミールはサタなんの側近になって色々な情報を教えてくれるはずじゃ?」


 いやいや、側近になるのは設定的にさらに後で、今はただの産まれたてのサキュバスだったはずですよ? 私の産み出したヒロインなのにそんな事も覚えてないの? ……それに私の呼ぶ愛称はサタっちで、サタなんと呼ぶ派閥とは相入れないんだけど……内心ではそう呼びたかったのかなぁ?


「確かにこの強さ、美しさを鑑みれば我が側近にふさわしいと思っておったが……? 貴様何者だ?」


 サタっちは剣呑な目でヒロインを見る。

 あ~あ、ボロを出しすぎてあたふたしてるよ。

 これはまずいなぁ。私の夢だからかかなりおバカなヒロインになったみたい。愛着はあるしフォローしておくか。


「あの。」


 うわっ!? びっくり。何? 今の鈴を転がすような音色。これが私の声なの? 夢とは言え嬉しいなぁ。

 っと、いかんいかん。サタっちもヒロインも私の方を見ているし続きを言わないと。


「先ほどは失礼いたしました。私の名はミール・シュトロノームと申します。

 まさかこのような所に魔王様がいらっしゃるとは思わず、先に名乗らせてしまった非礼をお許しください。

 彼女は……」


 あ、やばっ。ヒロインの名前知らないや。デフォルトならアンナ・カレットだけど、変更してる可能性もあるしな。

 私の場合、変更して田吾作とかにしたけど……うん、私の夢だしきっと間違いは無い。


「田吾作・遠藤さん、私の恩人です」

「違いますっ!!」


 おっと違った。心なしか視線に殺気を感じるのは気のせいだろうか? フォローしてあげたんだから名前間違いくらいゆるしてよ。


「アンナ・カレットと申します。勇者候補ではありますが、人と魔の共存を目指している者です。」


 あぁ、デフォルトのままだったのか。田吾作可愛いのになぁ?


「人と魔の共存か……この惨状を見て言えるのならたいした者だな。」


 周りの死体を見渡してサタっちが言う。惨状に凄い誤差はあるけど、この辺はゲームのテキストと同じ流れだな。


「彼らは無抵抗のサキュバスを殺そうとしました。ならば彼女が身を守るために抵抗したのは致し方無いかと……」


 アンナは悲しそうに目を伏せるけど、目尻がぴくぴくしてるぞ? とは言え、攻略対象が殺されたって言うのにテキストに沿った話を続けるとは。さすが私の夢だけあってドライだな。


「ふっ、面白いことを言う娘だ。ならばそのサキュバスは一時預けよう。サキュバスの傷が癒えた時に迎えに来る。

 アンナよ、さらばだ」


 サタっちは現れた時同様、消えるように居なくなってしまった。

 ゲーム通りであれば私は傷付いた体を癒す為、蝙蝠へと変身してアンナや攻略対象に世話をされることになるんだけど……そもそも怪我して無いし攻略対象は殺しちゃった……よね? この後どうするんだろう?


「貴方、転生者?」


 そんな事を考えていたらアンナに声をかけられた。転生って何? これは夢……だよね?

 小首を傾げているとアンナは視線を逸らし、何かぶつぶつ言い始めた。


「……もしかして私の転生による影響?

 ……いや、でもあの四人は……

 ゲーム以外の要素が?……でも、……

 ……まぁいいや、センセイと会長以外は眼中になかったし。」


 微妙に気になることを呟いてたので、聞き耳を立てて見たけどよく分からなかった。精々教師と生徒会長の攻略対象狙いって事だけがかろうじて分かったかな?


「最悪、サタなんさえおとせれば豪遊できるし、こいつには精々役立ってもらうか。」


 あ、最後だけはっきりと聞こえた。ヒロイン性格悪いなぁ~。さっすが私の夢。


「まぁいいや、自己紹介はさっきしたよね? おいでミール。精々僕とサタなんの間を取り持ってね。」


 アンナは笑って手を差し出して来た。

 まぁ、夢だし付き合ってやるか。私も笑顔でその手を取る。


「その後はビッチなりに好きに男漁ればいいからさっ♪」


 ……と思ったけど、ムカついたのでそのままグーで殴ってあげた。

 あ……力入れすぎたっぽい。顔が水風船のように弾けて飛んだ……

 うん、ついカッとなって殺ってしまった……ってうまいこと言ってる場合じゃないしっ!!


 はぁ~。いつになったら夢から覚めるんだろ……

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ