スライムちゃんの恩返し!! ※冒険ファンタジー物(勇者に救われたスライムが勇者の為に強くなった物語のプロト?)
我輩はスライムである。
名前はまだ無い。
「さようなら、スライムさん。」
「人を襲っちゃ駄目だからな?」
「元気で頑張るんだよ~。」
つい先ほどまで、我輩はオーク(豚面人身の魔物)に慰み者にされていた。
他のスライムと違い、我輩は自我という者があった。
仲間と違う行動を起こす我輩は、いつしか群れからはぐれ、一人で過ごす事が多くなった。
そこに運悪く遭遇したのが、オークの群れだった。1匹が相手なら、なんとかなったかもしれない。
だが、6匹の群れには逃げる事すらできない。
これも弱肉強食。
我輩も死を覚悟した。
そこに颯爽と現れたのが、先ほど声を掛けてくれた3人の人間。
所謂冒険者だった。
職業が勇者と呼ばれる男性、神官と呼ばれる女性、魔術師と呼ばれる女性の3人。
我輩の知識が確かなら、その3人は魔物を駆逐し、魔王様さえ脅かす存在といわれているはず。
そんな最悪の存在が、よりにもよって最弱と称されるスライムである我輩を助けてくれたのだ。
勇者と呼ばれた男性は言った。
「弱きを助け、強きをくじくが勇者の仕事だ。」・・・と。
我輩はその言葉に、今までの常識が崩れ去る音を聞いた。
弱肉強食。
強い者は頂点に立ち、全てが思うがまま。
弱きは強い者に死ぬまでしいたげられるのみ。
だが、そうではなかったのだ!!
魔の教えではない。
人の教えというモノに、我輩は感銘を受けたのだ!!
ゆえに崩れ落ちた常識に、勇者の言葉を組み合わせ、新しい常識を構築した。
すなわち『強きをくじき、弱きを助ける』そんなモンスターになりたい!!と。
そして、勇者に恩を返さなければならないとも思った。
だが、恩返しには何をすれば良いのだろうか・・・
魔王様を倒す手助け?
いや、それはムリだ。
そもそも成長する人間と違い、最下層の存在であるスライムに手助けできる能力が無い。
だが、頭の中には勇者の声がリフレインする。
・・・・・・そうだ!!
直接勇者の手助けをする事ができなくとも、勇者の教えを守り、広める事で結果的に勇者のお役に立てるのではないだろうか。
我輩はスライム。
最弱の存在ではあるが、条件次第では強くなる事が出来る。
スライムに出来る能力は2つのみ。
『寄生』と『同化』だ。
『寄生』は死体に取り付き、操る技。
人間に言わせると、アンデットと呼ばれる存在になるらしい。
そしてもう1つが『同化』
条件が厳しいが、その条件が整えばスライムにとって最大の進化だ。
新鮮で傷の無い死体へ、自己を血液へと変質させ、時の止まった死体に入り込む。
そのまま自己の生命力で満たす事により、死体の生命活動を再開させる。
ただし、これは元々の死体にある記憶や意識に逆に取り込まれることが多い。
それに傷の多い死体で行うと、すぐに死体に逆戻りだ。
余談ではあるが、人間の使う蘇生術はこの同化と自我の無いスライムを用いて行われるそうだ。
だが、勇者への恩返しを考えるのであれば、アンデットは駄目だ。
出来るなら人間に同化し。その上で自己を保たなくてはならない。
同化したが、元の人間として生きるようでは意味が無いからな。
正直難しい・・・
幸い、時間だけはいくらでもある。
旅をしながらゆっくりと考えてみよう・・・
これは!?
あれから3日。
悩みながら旅を続けていると、その解決法が目の前にあった。
精神破壊の魔法でも使われたのだろうか?
魂の無い抜け殻が転がっているではないか。
この肉体なら同化しても自己が保てる。
勇者の力になる事が出来る!!
恩返しをする事ができるかもしれない!!
よし!!
意を決し、人間の抜け殻を取り込むように表面に広がる。
そして、スキル『同化』を使用する。
・・・・・「んっ・・・うっ・・・」
今までと体の感じが変わった。
これが肉体を得る。と言う事か。
首を振る。
いままでは概念として感知していた全てが、視野情報として処理される。
人間の見る世界とはこのようなものだったのか・・・
どうやら、同化は成功のようだ。
我輩は新たな身体で立ち上がる。
そうだ・・・
人間は名前が無いと不便だったのだよな・・・
我輩には名前がまだ無い。
名前か・・・
我輩は・・・昨日までの我輩では無い。
そうだ・・・昨日・・・キノウ・・・キノ
よし!!
今日から我輩・・・
いや、人間だから私か。
私の名前はキノ、勇者に恩返しをする男だ!!




