2週目、始めますか? ※シリアス系ファンタジー物
シリアスに書いてみようと思ったら、思った以上にシリアスになったかもしれません。
いつものおちゃらけを期待して読んで頂けると、期待を外すかもしれません。
もしそのような方が居りましたら、大変申し訳ありませんが、戻るボタンをお押しください。
何故この人が目の前にいるんだろうか・・・
ここは魔王の治める世界"ノワール"、そして全ての中心の地"魔王城"
その玉座に座っていたのは一人の少女だった。
俺は確かに魔王を滅ぼしにきたはず・・・
だが、目の前にいるのは"ブラン"で産まれ、俺と一緒に"ルヴェール村"で育ったはずの幼馴染、"ユーリカ"だった。
彼女と俺は非凡な才能を持ち、他の幼馴染と共に切磋琢磨して育ってきた。
1年前までは、共に冒険者として旅立とうと約束までしていた。
それが何故目の前・・・つまり魔王として座っている?
「やあ、久しぶりだね、勇者タケル君。
前回よりは少し遅かったようだけど・・・僕が抜けた所為かな?
ごめんね。」
何を・・・言ってるんだ?
俺は勇者などではない・・・ただの復讐者だ・・・
「それとミオーレ。」
「え?・・・はい?」
ユーリカは俺の後ろにいた3人の仲間の1人、神官の"ミオーレ"を呼んだ。
俺の記憶が正しければ、2人は初めて会った筈・・・何故名前を知っているんだ?
「良かったね。
本来は魔王城の最後の罠に掛かって死んでいたんだよ?
でも、タケルに頼まれたから罠を壊しておいて、助けてあげたんだよ。」
「・・・え?」
ミオーレは俺のほうを見る。
どう言う事だ?俺が頼んだ?
1年前に見失って以来、初めて会ったのに何を言っているんだ?
俺はミオーレに首を振り、関係ないことを伝える。
「それから、グラッド君。」
「う・・・なんだ?」
剣士"グラッド"何者にも縛られず、自由を愛する剣士。
彼もユーリカと面識が無いはずだ・・・なのに何故名前を知っている?
「本当なら魔王との遭遇時、腕試しって撃たれた魔法で死んでたんだよ?
僕にしつこく言い寄ってきて、辟易していたけど、僕が先に魔王を倒したから死ななくてすんだよ?
良かったね。」
「なんだ・・・と?」
ユーリカが魔王を倒した?
単独で?ここに一人で乗り込んだと言うのか?
確かに魔王城に乗り込んで以降、一人の魔族とも戦わなかった。
4天王と呼ばれた魔族、魔王の右腕と恐れられた"タイラント"。
何故彼等と戦うことなく、王座へたどり着けたのか・・・
確かに符合は合う。
だが、そんな事が可能なのか?
それに言い寄っていたも何も、2人は初めて顔を合わせるんじゃないのか?
気になってグラッドのほうを見てみるが、顔を振られる。
グラッドにも身に覚えが無いようだ。
そして・・・ミオーレもグラッドも生きている。
死んでいたとは、一体どう言う事なんだろうか?
「君は・・・誰だろう?僕がタケルと旅立たなかったから、代わりに入った人かな?
今までお疲れ様♪」
ユーリカ・・・?
彼女は幼馴染の1人"コーネル"だったじゃ無いか、何故覚えていないんだ?
目の前の少女は、本当にユーリカなのか?
俺とコーネルは顔を見合わせる。
コーネルは頷く・・・
やはり彼女はユーリカだと目が言っている。
《・・・ゴクリ》
たった一言を言うのに、恐ろしい勇気がいる・・・
だが・・・
「ユーリカ・・・なのか?」
彼女は無邪気に笑うと、
「やだなぁ、この時空では1年しか経ってないはずなのに気付かないなんて。
もしかしてそんなに僕変わったのかな?」
ユーリカで間違いはなかった・・・
だが・・・未だに抜けないこの違和感は一体なんだ?
「ユーリカ・・・ちゃん?
私はコーネルよ?」
ユーリカだと確証できた事で、安心したのか、コーネルが口を開く。
「コーネル・・・コーネル・・・うぅん・・・」
ずっと悩んでいる。
たった1年前の事なのに、何故幼馴染の顔さえ忘れているんだ?
「あ~!!」
彼女がいきなり叫ぶ。
「思い出した、思い出した。
1年前に魔族の気まぐれで殺された・・・あれ?何で生きてるの?」
「お前こそ何を言ってるんだ?
お前が消えた後、確かに魔族が来た。
だが、殺されたのは剣を手に立ち向かった男達だけで・・・
何故・・・知っているんだ?」
「え~、私は何でも知ってるよ?
ミオーレはタケルに助けられた"フロウ教"の大僧正の娘で、タケルの力となるべく派遣された事でしょ?
グラッドは魔族に滅ぼされた王国"スペルリル"の第一王子で、魔王を倒す為身分を偽ってタケルに取り入った事でしょ?
旅の間に助けた人たちや、間に合わなくて殺された人たち。
ぜ~んぶ一緒に旅したもん。」
訳が判らない・・・
2人の事は俺が知っている以上の事も知ってそうだ。
それに一緒に旅をしていたとはどういうことだ?
「まぁ、いいや。
ねぇタケル、魔王はこの通りだよ?ほら。」
《ドンッ》
音を立てて転がってきたそれは足元で止まる。
その顔は苦悶にゆがみ、直視に耐えられない。
だが、敢えて視線を逸らさずに確認する。
額に伸びた大きな角、頬を走る2つの傷・・・
そして・・・ユーリカの言葉・・・
これは・・・魔王の首・・・だ。
「ね?
僕は約束をぜ~んぶ守った。
次はタケルの番だよ?」
彼女は楽しそうに魔王の首を蹴り飛ばすと、俺の腕にしがみ付いてくる。
上目遣いに見つめてくるその目は、俺で無い何かを見ているように思える。
「やく・・・そく?」
「うん、といっても未来に約束した事だから、判らないかな?
タケルは僕と約束したんだよ?
魔王を殺し、皆を助けてくれれば・・・良いよって♪」
未来の・・・約束?
何を言ってるんだ?
《・・・ゴクリ》
「何が良いって言ったんだ?」
「え~、そんな事まで僕に言わせるの?
タケルったら、いっつもいじわるんだんだから・・・
もちろん、結婚だよ♪」
「そう・・・か。」
どうする?
魔王を簡単に倒しているような相手だ・・・
彼女は・・・おそらく俺の知っているユーリカとは似て非なる存在・・・
だが、間違いなく本人なのだろう・・・
彼女なら、言う通りにすればおそらく、この先は何もしないはず・・・
だが・・・断った場合・・・
《ゴクリ》
唾を飲む音が妙に大きく聞こえる。
「俺でよけ「待ちなさい!!」れば・・・え?」
俺の前には3人の仲間たちが立ちはだかっていた。
「悪いが、タケルをいけにえにする気は毛頭なくてな。」
「同じく・・・誰かを犠牲になんて、出来ませんわね。」
「ユーリカ、一体どうしちゃったの?
この1年に何が有ったの!?」
3人は震えている。
それもそうだ・・・彼女の実力を目の前で見せ付けられたばかりなんだからな。
「何?3人共、私とタケルの邪魔をするの?
タケルは今、OKを出してくれたんだよ?
邪魔しないでっ!!」
彼女がヒステリックに吼える。
「俺は知っている・・・タケルはこういうとき、自分を犠牲にする奴だってな。」
「そうです・・・その後何度も自責の念に潰されそうになっている彼を・・・何度見た事か。」
「いくらユーリカでも・・・僕達はもう・・・タケルだけに辛い思いはさせないんだっ!!」
3人が必死に俺を守ろうとする。
「みんなっ、逃げるんだっ!!
俺の事は気にしちゃ「ならいいや。」いけない・・・・・・・・・・・うっ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁ」
彼女が手を振ると風が発生した。
その風は目の前の3人に迫ると・・・意図も簡単に全身をズタズタに引き裂いていった。
「グラッド!!ミオーレ!!コーネル!!」
3人に駆け寄ると、既にグラッドとミオーレは息絶えていた。
残ったコーネルもすでに何箇所も致命傷を負っている・・・
「コーネル!!今すぐ"エリクサー"を!!」
コーネルは袋からエリクサーを出そうとする俺に向かって、弱々しく首を振り、
「ムリ・・・命が抜けていくのが判るの・・・
タケル・・・私ね・・・あなたの事が・・・好きだった。」
それだけ言うと、コーネルから力が抜けるのが判る。
「コーネル・・・俺も君の事が「やめてっ!!」だった・・・」
「やめて!!何言ってるの?タケルは私のものなのよ!!」
彼女は髪を振り乱しながら叫び続ける。
「何!?今度はコーネルが邪魔するの?
こんなに歴史をいじったのに!!
その場所は私の場所だったのよ?
何で、後釜でしか無い貴方がタケルの心を奪うのよ!!」
彼女の言動は支離滅裂だ・・・
だが、その言葉の中に入っていたキーワードには驚きを禁じえない。
《歴史をいじった》・・・だと?
何らかの手段で歴史に介入する事が出来るのか?
・・・判らないことが多すぎる・・・
だが・・・冷静さを失っている彼女を討つなら・・・今しかない。
彼女の死角から近寄り・・・全身全霊の力をこめて・・・刃を振るう!!
「タケル、ごめんね、私が間違っていたわ。」
刃は・・・彼女の人差し指1本で止められていた。
喉の奥から悲鳴が出そうになるのを堪える。
これが俺の最後か・・・
南無三・・・
・・・・あれ?こない
「もっと前に戻ってタケルを私だけのものにすれば良いのよね。」
彼女は不気味にぶつぶつと呟いている。
あたかも、目の前にいる俺が見えないように・・・
彼女が顔を上げると、そこには不気味に笑う顔と、その口から唱えられる詠唱があった。
【時空に浮かぶ砂時計よ、その砂を逆立てよ"リバース"】
彼女の魔法が発動する。
死を覚悟した俺の体には、魔法による衝撃ではなく、支えを失った為に転んだ衝撃だけがきた。
「・・・・・・え?」
俺は目の前の光景が信じられなかった。
死を覚悟したのは俺のほうなのに、死んだ?のは彼女の方だった。
しかも砂になって、サラサラと崩れ落ちていった。
・・・あの呪文はなんだったのだろう?
耳にこびりついた詠唱と呪文を唱える。
もしかすると・・・という予想を元に。
【時空に浮かぶ砂時計よ、その砂を逆立てよ"リバース"】
そして、理解した。
この魔法が精神だけを過去に飛ばす魔法だと言う事を。
体はその代償として砂と変わる事を。
だが、後悔は無い。
必ず・・・皆を助けるんだ・・・




