第46話 彼女に学ぶ……
毎日の習慣で、起きてから石片を食べて動きはじめる。
子供が生まれてから、なんか生きるのに充実感が芽生えてきて、今は楽しく思えてきた。
モンスターに転生してから、厳しい日常だったがそんなことも気にならないほど充実している。
あれだけひどい目にあったのに、今までのことがうそのような感じさえしてくる。
それだけ嬉しさが勝っていることなのかな。
人間だったころは彼女もいなく、結婚とか家庭を持つなど考えてもみなかった。
まぁ、成り行きとはいえ、子供を持ったことは喜ばしいと思う。
もしも子供ができたらとか先日までは言っていたのに自分でもすごい心変わりようだ。
…… …… ……
子供たちが生まれてから数日がたったが、何となくだがローパーの生態が見えてきた。
ローパーの世界では育児は、雌が面倒をみるしきたりで、彼女は片時も離さず子供たちを見守っている。
そのせいか私も何かしたいと思っても子供に近づくと、彼女が怒ってくるのでいまだに触ることさえ許されてはいないのだ。
ローパーの習性だから仕方ないのだろう。
狩りについても、いつもどおり私が先頭で行くのだけど、戦う前になったら、率先して前に立ち、狩りをはじめるのである。
母親が先頭をきって戦っている勇姿を見せているようだ。
狩りのやり方とか見習わさせる、早すぎはしないかな?
まだ生まれたばかりで触手も生えていないのに、子供たちはわからないと思うのだけど、戦いの怖さとか覚えさせるのかな。
私は最初は恐怖しかなかったけど、そういうことを体験させているのだろうか?
よくわからないんだよね。
でも彼女なりに頑張っていると思う。
まぁ、私が狩りの仕方を教えても参考にはならないので、その点についてはとてもいいと思っている。
本音は育児放棄しなくてよかったと思っているのだけどね。
現在は私が狩りやすい単体のモンスターを見つけて、後ろからサポートするってやり方かな。
防御魔法くらいは彼女にかけても怒らないからね。
危険そうなのと、数が多いモンスターは先に私がいって始末してくるということになっている。
私が狩りしたモンスターは、彼女は食べなくなってしまった。
これもローパーである習性かな?
子供ができた後だとまったく違う様子の彼女には驚からせる。
なによりも、彼女は強いのだ。
私と違い、まったく無駄のない動きで、最低限の力しか使っていないように狩りをする。
モンスターの急所がわかるらしく、的確に狙っていくのだ。
どうしてできるのか、今のところ観察中であり今更だが狩りの仕方を彼女から学んでいる。
…… …… ……
さてと、それでは狩りにいく準備をしようかな。
神剣を持ち出かける支度をする。
子供ができてからは心配で、神剣を片時も手放すことはできなくなってしまった。
神剣は強力な能力があるので、ほんとに神だよりのものになっている。
こいつを手に入れたことだけは、良かったかな。
それなりにひどい目にはあったけど、神剣を手に入れた価値は十分すぎるほどあり、効果も十分に発揮している。
満足なことこの上ない。
でも、完全に神剣の能力を引き出してはいないと思うが、本当の神剣の能力てどんな効果が秘めているのだろう。
隠された能力がきっとあるのでそのうちに引き出したいと思っている。
それが今後の課題だな。
…… …… ……
さてとそれでは狩りに出かけようとするか。
彼女は子供たちを体から出る触手で絡ませて、体に張り付かせている。
もう準備はいいようだな、では狩りに出かけるとしよう。
…… …… ……
索敵をすると近くにモンスターが隠れている反応があるのだ。
この感覚は見覚えがあり、3匹ほどいるのはわかっている。
蝙蝠のモンスターなのだが、私は苦手としているのだ。
うむ、どうしようかな彼女なら問題がなく狩れると思うのだが、子供を背負っているから万が一があっては困るな。
数は3匹と少ないのだが、私では捕まえることが難しいんだよ。
蝙蝠のモンスターを倒せるとしたら、私の場合は上級魔法を使用して対応するしかないんだ。
それだとまわりにも影響をあたえてしまって対象も吹き飛んでしまう。
子供たちがいると難しいんだよ。
私が行くか迷っていると、彼女が先に動いてしまった。
あ、ま仕方ないか、とりあえずできるだけのサポートしてみたい。
天井に逆さまでぶら下がっている蝙蝠のモンスターがいた。
体長80センチ羽を広げると倍近くの大きさに見える。
やはり、私の知っている蝙蝠と違うんだ。
体長の割に頭があまりにも大きいので、気持ち悪いんだよ。
逆さまであれだけ頭が大きいのだから、血が上らないのかな?
それに、あのバランスでよく飛べると不思議に思う。
モンスターなのでこちらに関しては、なんとも言えないけど。
どうやらこちらに気づき、蝙蝠のモンスターは襲ってきた。
あぁ、やはり襲ってくるのね、まずは様子をみて危険な相手だったら逃げようとか考えないのかな?
このダンジョンのモンスターは、本当に好戦的なモンスターが多くて、逃げるのが難しいんだよな。
逃げるのは、頭の良い強いモンスターなんだ。
こちらの不利なところにもっていき、危険が待っていることが多いから、逆に逃げた時には追いかけないんだ。
蝙蝠のモンスターは彼女のほうへむかい襲い掛かっていった。
私はすぐさま、サポート体制に入る。
だが、そんなことは心配するまでもなく、襲ってきた蝙蝠のモンスターを大きい触手で打ち払い、いとも簡単に倒してしまった。
いやはや、あっさりと打ち払うとはさすがだ。
まだ床に落ちているだけで死んではいないぞ。
起き上がってきたらまずいのではと思ったのだが、蝙蝠のモンスターは床に伏せたまま目を回している状態だ。
あれ? 触手に雷をまとわせているのはわかっているけど、なんかおかしくない。
見た感じ、雷だけの痺れの麻痺状態じゃないぞ。
前に見たワニのモンスターと同様に目を回しているようだ。
彼女がとどめを刺す前に、よく観察をしてみる。
あぁぁ、なるほどこれって魔法を使っているんだ。
おそらくこれは、混乱魔法の魔法だ。
そうか、雷の痺れ効果の麻痺状態に加え、混乱魔法も上乗せしているのか。
それで効き目が倍増していたんだ。
これは、賢いな。
あれ、というか私がバカではないの?
だって私、上位無属性状態異常打撃魔法使えるんだよ。
それって状態異常のボスが使う最高峰の魔法なんだ。
と言うことは、初級の状態異常魔法を全部使えるはずだ。
初級どころではない恐らく上級の強毒や即死クラスまで、レベルが低いから今は使えないけど。
おそらく使えるようになるはず。
混乱魔法の魔法は初級の魔法のはずだ。
今度使えるのか試してみよう。
触手に状態異常を負荷して戦えばもっと有利に戦えるのではないか、と言うか彼女はやっている。
状態負荷を乗せるとは思ってもみなかったな。
確かゲームとか漫画ではアイテムや剣に魔法負荷して戦うのがあったけど、それほど派手には扱っているのは、見たことがなかったので気にもしてなかった。
地味だけど状態異常の魔法付加は実戦ではかなりの有効だ。
属性負荷は考えたが、状態異常は見落としていたよ。
強いのはわかっていたはずなのにね。
いまからでも遅くない、帰ったら状態異常の魔法付加をいろいろ試してみよう。
…… …… ……
蝙蝠にとどめを刺した。
うむ、あとは彼女がどうやってあの蝙蝠を撃ち落としたかだ。
私がやると超音波かな? そのせいかまったく当たらないんだよね。
あれほど、あっさり倒してしまうんだから、なにか秘密があるのは確かだ。
今のではまったくわからなかった。
うむ、これも謎をとかなくてはいけないか。
私もまだまだだと痛感する……




