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第34話 疑念……


 「ネイビス大公国だと」 

 「ああ、そうだ」


 大公国?

 確か王国と帝国とか聞いたことがあるけど、大公国? ってどういう意味だったか? まあ、いいか、今はそれよりも……


 「おまえの名前はなんて言う」  

 「私の名はガゼル・サンクスだ。

 ネイビス大公国宮廷専属の商人をやっている。

 私はネイビス大公国の連合国の要請により、この遺跡調査の供として派遣されたのだ」

 名前だけ聞いたのに、こちらで聞いてもいないことを話すとは、おしゃべりなやつだ。


 どうせネイビスなんとかの王宮? じゃないか? 

 お偉いさん方に、言葉巧みに取り入って、ポッケ、ないないをして、出世したやつに違いない、気に入らないな……


 「おい、ガゼルといったな」 

 「はい」

 「いくつか話を聞きたいことがある。正直に答えろ」 

 「……助けて、助けてくれるのか、助けてくれるなら何でもしゃべる」 

 私はガゼルの右足が切れた部分に、触手でつかんだ神剣を突き刺す。


 刺したと同時に回復魔法ヒールをかける。

 ガゼルの右足から血がとまり傷が治っていく。


 この部屋は先ほどの戦いの時に使った、魔法無効化領域魔法デスペルフィールドがかかっている。

 現状では私も魔法が使えないはずだ。


 しかしこの状態でも、神剣に魔法を付加することができる。

 もしかしたら、神剣を通して魔法を直接的に使ったらできるのではないかと思ったら案の定できてしまった。

 回復魔法ヒールが発動しなくても、刺した痛みと恐怖で話すのではないかと思った次第だ。


 神剣を通して魔法を使用すれば魔法無効化領域デスペルフィールドの中でも使えることがわかった。

 あらためて神剣の能力がすごいと実感する。


 ガゼルは傷が癒えたせいか、ほっとした顔をしている。


 「答えろ、おまえらは何のために、このダンジョンへ来たんだ」  

 「私たちが住むアストリア大陸で、やけに魔物の動向が活発で被害が多発している。

 周辺の調査の中で、最果てにある奈落のダンジョンに原因があるのではないかと、各国の意向で調査に来た、それだけだ」


 私はガゼルの目の前に神剣を突き立てる。


 「私は本当のことを言えと言ったんだ」 

 「ああ、わかった、わかった、殺さないでくれ。

 私たちの目的はこのダンジョンにある古代神が残した遺産だ。

 このダンジョンに住むモンスターを生け捕りにし捕獲するというのが目的だ」

 「遺産だと、それもモンスターがか」 

 「そうだ、ここのモンスターは古代神が終末戦争で使われたと言われている。

 数百年前このダンジョンから1体のモンスターが出てきてしまった。

 その時にこの大陸は甚大な被害が出ている。

 歴史にも残っているくらいだ。

 ここのモンスターを捕まえ、兵器にすると言うのがオリオンという小僧が話していたことだ」

 「オリオンというのはサタンドールを作ったとかいっていた魔術師の小僧か」  

 「そうだ、ここのモンスターを捕らえ、サンプルにしたいと言っていた。

 私はモンスターを運ぶ運搬係だ」

 運搬係? 聞かれていないことを話す、本当におしゃべりなやつだ。


 「運搬係だと、おまえらはどうやってモンスターを運んでいるんだ」  

 「これだ、アイテムボックスがここにある、この中にモンスターが収納できるのだ」

 ガゼルは腰につけていた小さな袋包みを2つ見せてきた。


 小さな包み袋らしいものから赤い玉を取り出した。

 私は警戒し剣を振りかざす。


 「待ってくれ、なにもしない。

 これは特殊な魔法をかけて封印してからではないと収納できないんだ」

 「ほほう、ではその球の中に捕らえたモンスターが入っているというのか」

 「そうだここへ来てから2体ほどとらえている。

 こちらの玉の中に入っている」

 2つの玉を出し私に見せた。


 ポケッ〇モンスターのモンスター〇ールのようなものか、赤い玉の色だけ良かったが、赤と白と黒い模様が入っているとアウトだぞ。


 なんて物騒なものがあるんだ。

 モンスターにとっては最悪の代物だろう。


 でも、あちらの世界での転生のほうが良かったと思う。

 あきらかに平和だろう。

 あちらに行きたいな、アニメの中でもいいからさ、いまさら愚痴を言ってもしかたがない。


 「それじゃ、ここでモンスターを出してみろ」

 「で、でも」 

 「大丈夫だ、そこらへんにいるモンスターだったら、私が相手をするほどでもない」

 ガゼルは床に玉を置き、離れたところから呪文のようなものを唱える。

 しかしなにも起きない。


 私は魔法無効化領域魔法デスペルフィールドの効果で魔法が使えないのを知っている。

 知っていてわざとやらせたのだ。


 「何もおきないではないか」 

 「そんなバカな、待って、待ってくれ、本当に、本当にこの中にモンスターが入っているんだ。

 うそじゃない」 

 「わかった、その赤い玉を壁際に転がせ」

 ガゼルは私の言うことに従って2つの赤い玉を壁際に転がせた。

 「私が倒したモンスターはその赤い玉から出したのか?」 

 「そうだオリオンという小僧が実験でできたモンスターをはなった。

 索敵で特殊なモンスターの気配があると言っていたので配置させたのだ。

 ローパーの姿が確認されたので罠を用意しようと思ったが、オリオンが作った兵器を試してみたいと言ったので用意をした。

 それでオリオンが作ったサタンドールがこの部屋で待ち構えていたと言うことだ」

 ほんとに聞いていないことをしゃべる、おしゃべりなやつだ。


 …… …… ……


 「次の質問だ、おまえたちはここに何人で来た。

 他に仲間がいるなら答えろ」

 「ここへ来たのは私たちパーティー6人ともう一組の8人組の2パーティーで計14人だ。

 他に来ているやつはいない」

 「本当か、隠れているやつとかいないだろうな」  

 「ああ、アレスたちのパーティーといっしょに来たんだが、あいつらとは馬があわず先にいってしまった。

 あいつらの目的は本気でこの遺跡の調査できている。

 私たちの目的とはちがうからな」

 「と言うと、おまえたちの目的のほうが本命というわけか」

 「ああ、そうだ、あいつらはなにも知らない。

 それで、あいつらはどうしたんだ」

 「アレスというやつなら、私の腹の中だ。

 他のやつらもモンスターに殺された」

 ガゼルは青い顔をして黙る。


 …… …… ……


 こいつらは本当にこれだけの人数で来たのだろうか、疑念に思う。

 今のところは索敵に引っかからないが、信用してはいけない。


 一応こいつの目線はずっとみているが誰かを探している様子もない。

 それとも、もうすでに撤退してしまったのだろうか?


 黒いローブを着た老いた魔法使いが撤退だといった。

 もし他のやつらが離れたところにいたら、その時点で撤退している可能性がある。


 この部屋は現在、魔法無効化領域魔法デスペルフィールドの効果で透明化能力も魔法も封じたはずだ。

 誰もいまのところは、現れてはいない。


 私の相棒の彼女は今のところ通路にいて何もないみたいだからいいのだけど、用心にこしたことがないな。


 …… …… ……


 「本当におまえたちだけでしか、来ていないのか」  

 「ああ、そうだ間違いない」 

 「なぜ、言いきれる」  

 「この奈落のダンジョンには特殊な神の結界がはってありアレスの血が必要だ。

 アレスの血を使い特殊な魔法を組んで、体にほどこさないと入れないようになっている。

 適応できたのは私たちだけだ、他はいない」 

 「? なぜアレスの血が必要なのだ」 

 「アレスは古代神の血を引く末裔だと言われている。

 この遺跡の結界を張ったのは神だといわれているのだ。

 その神の血を使い結界を無効化して入ればいいとオリオンの小僧が言っていた」

 「それではこのダンジョンの結界はすでにとかれているということか」 

 「それは違う、私たちはアレスの血によって特殊な魔法をほどこしたのだ。

 その魔法の力で入れたのだ」

 「なぜ違うと言いきれる」

 「これを見てくれ、私の腕に、このようにアレスの血を使って埋め込まれている、魔法の札が入っているんだ」

 入れ墨のような傷があるな? 真実かどうかわからないが、うそを言ってる感じはしない。


 「なるほどな、しかし、オリオンという小僧がこの青い玉を使って転移しようとしていた」

 こっそり触手で拾っていた、オリオンが持っていた小さな青い玉を見せる。


 「この青い玉を使えば外へ脱出できるんだろう。

 うそを言っているのではないか」

 「それはちがう、入った最初の部屋のところにギルの爺さんが転移用の結界魔方陣を張っていたんだ。

 そこまではいけるんだ。

 このダンジョンの外には行けない」

 「そうか」

 うむ、なんとなくわかるようなわからないような気がする。

 あとで整理して考えよう。


 …… …… ……


 「それじゃ、次に質問だ。

 おまえは荷物持ちだといったな、それなのになぜ荷物を持っていない」

 「私は空間収納魔法を使える。

 特殊な能力を持っているのだ。

 このかばんに空間収納魔法がかけてあり、収納をしているのだ」

 学生カバン?


 肩から下げていた中学生が持っていた学生カバンに似ている。

 なんか昔に見たことがあるようなデザインだ。

 でも革でできているので違うのはわかるが似ていると思った。


 …… …… ……


 「私は空間収納魔法が使える。

 カバンに収納魔法をかけて使えるのだ。

 だからこのダンジョンに入るのにも私が選ばれたんだ」

 カバンに魔法をかけて使える方法とかあるのか、そういうイメージは考えていなかった。


 なるほどなと思ってしまった。

 けど、どちらにしても理不尽なチート能力だよな。

 


 「そうか、ではアレスたちパーティーも使えたやつがいるのか」

 「ああ オーウェス、いや、魔法使いの女が私ほどではないが空間収納魔法が使える。

 それとアサシンのリーもつかえたはずだ。

 それで収納ができていたはずだ」

 「カバンにアイテムが収納しているといったな、ここで全部だしてみろ」

 私はこの瞬間に神剣を通して魔法無効化領域魔法デスペルフィールドの魔法を解くイメージをする。


 魔法がとけたのか不明だったが、念を入れ警戒をし、雷玉魔法サンダーボールのイメージをして、ガゼルに狙いを定めておく。


 「ああ、わかった」

 ガゼルはカバンから全部の荷物を出しはじめる。


 どうやら魔法無効化領域魔法デスペルフィールドの魔法はとけたみたいだ。

 出してきた中の物はすごい量だ、私の考えた倉庫イメージの3倍以上の荷物が出てくる。


 どうしてこんな大きいのが入っているのだ?

 カバンより大きいだろう?

 入口よりあきらかに大きなアイテムがいくつも入っている?


 重さとかもどうしているのだあきらかに持てる重さではないだろう?


 商品として扱えば小さな店がしばらく営業できるほどの雑貨、大量の食糧まではいっている。

 なるほど異世界にはこういうことができるやつがいるのか……


 「おまえみたいに持てるやつはいるのか」

 「いや、いない、私は特別だ。

 この能力があるから宮廷に出入りできている。

 この大陸では時空魔法が使えるのは、数えるほどしかいない」

 「なるほどな」

 さてどうしようかな、聞きたいことはまだ山ほどある。


 しかし索敵をすると、何かが近づいてくるような感覚があるんだ。


 一端、話はここまでにするか……

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