弓使い2
アレンは溜めた魔力を解き放った。
「フラッシュ!」
唱えられた魔法の名を聞いて、コリダロスとマナは反射的に目を閉じた。
多くの木々で空が覆われ薄暗い森の中にまでも、目の前に太陽が現れたかと思うほどの閃光がアレンの右手から放たれた。
その強い光は優男が手で顔を覆った時にはすでに遅く、視界を容易く奪い去った。
それを見てコリダロスは、動けぬアレンを脇に抱き抱え橋を渡り始める。
「ねぇ、コリダロス。このまま逃げてもアレンの足の怪我じゃすぐに追いつかれるわよ」
「無論承知しております。致し方ありませんが、渡りきった後この橋を落とします。あれほどの力を持ったものが、このまま王宮にまで進軍されてはこの国もおしまいですから」
敵がいくら強いとは言え、100mくらいはあろうかと言う断崖を、橋を渡らずして越える手段は無いだろうな。
そう考えていたアレンはふと優男の方に顔を向けた。
すると優男は、視界が回復にはまだ時間がかなり掛かるはずであるのに、弓をこちらに構えている。
「コリダロス! 危ない!」
アレンが叫ぶのと同時に優男が放った矢は、コリダロスの背中に突き刺さり、抱き抱えていたアレン諸共、コリダロスは前方に転倒した。
「なんでよ!? あいつこっちの動きが見えてるの?」
見える訳が無い。他に考えられるのは1つしか思い浮かばなかった。
「あいつが多分、魔力感知出来る奴だ」
アレンはそう言って体勢を変え、さらに優男が放ってくるであろう矢に備えた。
予期したさらに矢が飛んでくる。構えてから矢を放つまでの動作は恐ろしく速いが、飛んでくる矢は普通の矢と速度は変わらない。
その矢を魔法で撃ち落とし続ける。
コリダロスはまだピクリとも身動きしなかった。矢が当たった場所か転倒したせいなのか、気を失っているみたいだ。
このまま矢を落とし続けるのも、いつまでも続くわけじゃない。何より相手の視界が戻ってしまったら今度こそ策が無い。
「コリダロス起きろ!」
アレンは必死で声をかけるが応答はない。
何本か矢を撃ち落とした後、矢が飛んで来なくなった。
持っていた矢が切れてしまったのか?
アレンはその隙に、コリダロスに弱めの雷魔法を打った。弱めとは言っても魔装が解けている相手には強烈な一撃である。
全身を針で刺されるような痛みあるはずだが、その激痛でコリダロスは目を開いた。
「しっかりしろ! 逃げるぞ」
意識はまだハッキリとしていないし、多少体にマヒが残ってしまったみたいだが、アレンの言葉を聞き起き上がった。
ギリリと優男がまた弦を引く音が聞こえる。
またこちらに向かって弓を構えているのを見て、アレンは再びその矢を撃ち落とそうとした。
しかし放たれた弓は今までとは違って、稲光のような早さで飛んできた。
気がつけば、魔法を放とうと向けていた右手の甲に穴が開いていた。
「矢も魔装具で作れるのか」
飛んで来た矢はほとんど見えはしなかったが、弓と同じく白く発光し魔力で作られたものだと言う事だけは気付いた。
貫かれた右手に痛みは感じなかった。それよりも大きい絶望が覆っていたからだ。
「申し訳ない。刻印者様」
そう言って橋の上へと突如飛んだコリダロスは、槍を三日月の様な孤を描いて端に向け振り切った。
するとほんの少しの間を置いて、さっきまで見えていた優男の姿はゴツゴツとした断崖に遮られ見えなくなった。




