弓使い
コリダロスは自身の過ちを悔いた。
一つは相手から視線を逸らした事。
もう一つは、とっさに刻印者と口にしてしまった事。自分のせいで、アレンに手傷を負わせてしまった上に、刻印者だと言うことが相手にも知れ、アレン達にもより危険な状況になってしまったのだ。
「あの弓は魔装具なのか?」
アレンはその光に見覚えがあった。
魔力を物体化させる、とても強力な武器。
ナオやグリーヴァが使っていた魔装具と、似た光を男の弓は放っていた。
男は再び体の前で手を叩いた。
「如何にも。若いとは言えさすが刻印者、魔装具の事は知っているみたいだね」
男の腰のところには、矢を数本入れた木製の筒がぶら下がっている。
矢が実態するものならば、数には限りがある。それならば、ひとまずは矢を無駄打ちさせられれば。
そうアレンが頭の中で考えていた所に、男の放った矢がアレンの左膝を貫通した。
足は支える力を失い、糸の切れた人形の様に体が倒れる。
このまま倒れてしまっては、いいように的にされてしまう。
頭では分かっているが、膝の関節が砕け耐え難い痛みが襲って来て、足に踏ん張る力が入らなかった。
アレンはうめき声を上げながら、そのまま前のめりに倒れた。
アレンを含め、コリダロスもマナも男から目を離していなかったが、気がつけばもう矢を放っている所しか見えなかった。
矢を取り、構え、弓を引き、照準を合わせ放つ。
この一連の動作が恐ろしく早いのだ。
「どうしたの? 掛かってこないと蜂の巣にしちゃうよ?」
男の言う通り、弓矢を相手に距離を取っていても勝負にならない。相手との距離を潰して矢を撃てなくしなくてはこちらに勝機はない事は間違いなかった。
しかし、それでもコリダロスもマナも動くことが出来ない。あの稲光の様に動作を見せられては。
男は少し深く息を吸い、ため息をついた。
「どんな強者かと思えば…。コリダロス、期待はずれだよ」
冷淡に口にしたあと、コリダロスに向けて弓を構えた。
自身の死を感じ、脂汗か冷や汗なのか、コリダロスの額から水が流れ落ちる。
アレンは痛みに耐えながら体を少し起こし、辺りをを見回した。
あれほどの強さを誇ったコリダロスが、今はとても小さく見える。
バルバロの小隊には、前線を行く隊にも関わらず、恐ろしく強い者が
いると言っていたが、まさにその通りだったな。
…さて、どうするか?
ホーストンの時の調査部隊全員で戦っても勝てそうにない相手だし、逃げるのも許してはくれないだろう。
絶対的に差がある相手には、弱者は意表を付くしか活路はない。
アレンは相手に気付かれぬよう、少しずつ右手に魔力を溜め始めた。




