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デモンズ・ゲート  作者: 梅
第3章
50/50

弓使い3

 その目覚めは最悪だった。


 足と手から感じる激しい痛みで、アレンは目を覚ました。


 目に入ってきたのは大きさが様々な砂利。自分がうつ伏せに倒れているのが分かった。


 なぜここにいるのか?

頭がぼんやりとして、考えがまとまらない。


 虚ろな目で周囲を見回してみると、辺りはこの国では見慣れた深い森に囲まれていて、その森を分断するように流れる川原にいる事が分かった。


 ここはどこだろう?そんな事を考えていると、体がガタガタと震えだした。

 やけに体が冷たい。

冬とは言え、痛いくらい寒く感じる。服の袖が水でびっしょりと濡れているのに気がついた。いや、袖だけじゃない。全身が濡れていて、服がべたりと体に張り付いている。


「…流されてきたのか?」


 そう小さく呟くと、少しずつ記憶が蘇ってくる。

そうだ。コリダロスが橋を切り落としたんだ。



 橋と共に、俺達はあの断崖からはるか下に落下した。コリダロスがなぜ橋を自分たちごと落としたのか、理解が追いつかなかった。何をしているのか分からない内に、コリダロスは半獣化し翼を広げると、俺とマナを両脇に抱え羽ばたいた。


 なるほど、これなら敵はこの深い谷を超えることは出来ないし、俺達を追ってくる事も出来ないな。


 絶体絶命の状況を打破し、少し安堵した。


「なんとか助かったな」


 気が抜けたその時に、コリダロスの両翼に、あの稲光の様に速い矢が襲いかかった。

力強く羽ばたいていた翼は、風に煽られる紙切れの様に力を失い、アレンたちは再び落下し始める。


 断崖の底を流れる川の近くになって分かったが、流れる川の色は青色ではなく、どす黒い色をしていた。

光が当たらないと言うこともあるだろうが、水深がかなり深いせいだ。それでいて、水の流れもとても早い。

 普通の川であれば、今の高さから落ちても助かると思う。しかしこの川は、落ちてしまうと死んでしまうと本能で分かる。



 コリダロスは必死の形相で力を込めたが、自慢の翼はピクリとも動かない。

先ほどの矢は、両翼の筋を正確に射抜いていたのだ。


 更に水面へと近づいた時。コリダロスが腕にギュッと力を込めたことが伝わってくる。


「私はもう飛べませぬ! せめて、あなた方だけでも王宮へ!」


こちらの返答を待たずに、コリダロスは両脇に抱えていた2人を岸壁に向けてほおり投げた。


 アレンは右腕でマナを抱きかかえると刻印の力を使い身体能力を上げ、岸壁のゴツゴツとした岩壁に左手と右足だけで何とかしがみつけた。


 後ろの川からは、耳をつんざく獣の雄叫びみたいな野太く大きな音がしていて、この深い谷にこだまのように反響している。


「この川に落ちたら終わりだ…」

 

 恐怖を感じアレンがそう声を漏らした時、マナが叫び声を上げた。

その声の先には、よろよろと水面に向かって落ちていくコリダロスの姿があった。


 こちらを向いて何かを言っているが、大きな水の音で聞こえなかった。

だが、コリダロスの口の動きと表情で「あとは頼みます」、そう言っているのが分かった。


 その直後に水しぶきを上げ、コリダロスは黒い激流に飲み込まれた。

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