お国柄
山小屋の周りでは雪がちらつき、遠くの山々はうっすらと白化粧に染まる。
ホーストンは雪が降らなかったので初めて見る雪に喜んだが、吹きつける凍てついた風は今までに経験のない寒さだった。
毛皮や草木を雑に重ねた防寒着を羽織ると、商品となる木工品を持ってアレンとマナは村へと出掛けた。
「日に日に寒くなってくるわね」
歯を小刻みに震わせながらマナが言った。
「流石にこの寒さは堪えるな。こんなに気温の下がる所だとは思わなかったよ」
足元は靴の高さ程の雪が積もっている。その雪は道を隠し、今まで何度となく通った道でも迷いそうになる。
「これ以上積もるようになったら、村にもいけなくなるな」
「そうね。……今の内に食べるものも蓄えを増やしておかないとね」
これからの事について相談しながら歩いていると、あっという間に村に辿りついた。
しかし村の様子がおかしい。普段ならしないような大きな声が聞こえる。
辺りの様子を伺いながら進むと、村の中心に人だかりが出来ていて何か揉めているようだ。村人達と対する位置に見たことの無い連中が立っている。
その連中は何かが書かれた紙を広げると、それを村人達に見せ言い放つ。
「分かるか?これが国王からのお達しだ。お前達はこの国にとって害虫に等しい、これから国の為に死ぬのだ」
村の人を害虫呼ばわりするどころか、死ぬだと?
しかもそれが国王の命?
それを聞いて体が反応し、連中の元に詰め寄って行く。
マナはアレンを止めようとしたが、アレンの袖を掴めなかった。万一に備えて、マナは小屋へ走り出した。
「おいっ! それはどう言う事だ」
男に向かってアレンは言った。
「なんだ貴様は? ……その容姿からするにこの国の者では無いな? ならば貴様には関係の無い事だ」
「俺はこの村の人に世話になったんだ。それなのに、なんだそのふざけた命は?それが国王のする事か!?」
「……貴様。外の者とは言え、国王への侮辱は許さんぞ」
男は先が三手に分かれた刃を持つ槍を、強く握りにしめた。
「やめろアレン! お前には関係のない事だ!」
アレンの危険に巻き込まん為にカザロが言った。
「村の人が死ぬとはどう言う意味だ!」
「貴様この国の事を何も知らない様だな。……ここの国民は全て均一に世界樹より魔力の恩恵を受ける。しかしこの度、他国との大戦が始まる事となった。この大戦に勝利をもたらすには、兵の増強が必要だ。国民に均一に分けられる魔力を、少数先鋭に集中させる決断を国王はなされたのだ、つまり戦闘も生産も大して出来ぬ者は死んでもらい、少しでも戦闘民に魔力を多く分ける必要がある。分かるか?」
「村の人を殺そうとしている意味は分かったが、それに納得は出来ないな」
「フンっ、貴様が納得しなかろうがこれは決まった事なのだ。外の者がこちらに干渉してくるな」
「この国の王は随分と小さい男のようだな」
それを聞いた男は、槍をアレンに向けた。
「貴様、先ほど国王への侮辱は許さんと言ったはずだ!」
アレンの身体から、魔力が立ちのぼりはじめた。
「王と言うのは、国を守り国民を守る者だ。この国の王は王ではない、ただの支配者だ!」




