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デモンズ・ゲート  作者: 梅
第1章
3/50

魔法石


 目覚めてから2日後

アレンは砦にある庭で、ケイムから魔法石の説明を受けていた。


 「魔法は扱うのが難しい。魔力の細かい操作に加えて、その時の心情も影響するからだ。だがこの魔法石は、魔法の難しい操作を補助してくれるのだ」


 「簡単に言うと、魔力の操作を補助し魔法の威力と安定性を上げる。しかも魔法石の使用方法は、とっても簡単! 持っているだけで良いのだ」


 「持ってるだけでいいのか?」


 あまりの簡単さにアレンが問う。


 「そう! 持っているだけ。厳密に言えば、所持者から約1m以内に魔法石があれば効果を発揮する」


 「故にポケットでも鞄にでも、或いは指輪やネックレスに加工するのも良いんじゃないのかね」



 「しっかしこんな小さい石ころに、どうしてそんな凄い力があるんだよ?」


 傍らで見ていた、アンジが話に割って入る。


 「きっかけは魔力を蓄積する石を発見した事だね。私はその石を魔石と名付けた。ただ魔石の状態では、一定の魔力を蓄積すると、ちょっとした衝撃が加わるだけで破裂してしまうんだ」


 「そこで私は、破裂させずに保持するにはどうすれば良いのか。これをずっと研究していたのだよ。その解決策が、魔石の周りについてる特殊な金属さ」


 手元の魔法石を見てみると、石の周りは金属で覆われている。その金属は艶のある灰色の様だと思えば、角度を変えると美しい黒色にも見える不思議な物だった。


 「その金属に包まれていれば、魔石は限界値まで魔力を貯め込み、所持者が魔法を使用する際に、貯めた魔力を使い補助する。魔法を使う者にとっては、夢の様なアイテムなんだよ」


 ケイムは自分の作品を見てもらうのが嬉しいのか、アレンの周りを歩きながら早口で説明する。


 「その補助をするのが魔法石の主な役割だが、私はもう一つ役割を付けた。魔法の出力制限だ」


 「せっかく威力あがってんのに、何で出力制限なんて付けてんだよ」


 アンジが馬鹿かお前は? と言わんばかりの表情で聞く。



 「馬鹿かお前は」


 そう言いながら呆れた顔で、アンジを見るケイム。


 「魔法を使い過ぎて魔力が無くなれば、意識が朦朧とする症状が出るだろう。魔法石を使えば普段より強い魔法を打てる様になる。その時にうっかり強力な魔法を打ってしまって、魔力がカラになり戦闘不能になられては困るから、出力制限を付けているのだ」


 「確かに夢の様なアイテムだけど、欠点とかないのか?」


 ケイムが振り返る。


 「さすがアレン! 察しが良いな。そこの筋肉馬鹿とは違う」


 アンジが振り返る。


 「魔法石に魔力が貯まった状態で、この特殊金属が外れてしまうと爆発が起こる」


 「爆発? どれ位の規模だよ?」


 「家1軒は軽く吹きとばせる位だね」


 アンジは驚いた顔で、更に質問をする。


 「もし勝手に外れたらどうするんだよ?」


 「石と金属が分離して3秒で爆発する。全力で逃げたまえ」


 アンジとアレンは苦笑いで顔を合わせた。


 「まぁ状況によっては、そう言う使い方をする場面もあるかもしれんがな」


 「あと重要なのが魔法石には、貯めれる魔法の属性が決まってる。例えばアレンなら雷魔法用の魔法石を渡しているが、火の魔法も強化したければ、火の魔法用の魔法石が必要になる」


 「欲しいって言えば、貰えるのか?」



 ケイムが顔の前で手を左右に振る。


 「魔石はとても貴重な石だ。それに魔法石へと加工するのも手作業で全然量産が出来ない」


 「値段を付けるなら1000万WC(ワールドコイン)だ。新米軍人の給料なら全てつぎ込んで、8年ちょいは掛かるな」


 「貴重な物だから無くしても再配布はない。だから先ほど説明した爆発させる使い方はするなよ」


 ケイムは背を向ける。


 「聞いているだろうが、明日に軍への入隊の実技がある。その時までに、この魔法石のテストをしたまえ」


 そう言い残すと、ケイムは砦の中へと消えて行った。




 あの光る人間に吹き飛ばされた後、アンジが俺を探して砦まで連れて来てくれたらしい。発見した時も俺は服が汚れているくらいで、ほぼ無傷だったみたいだ。


  不思議なのは骸骨に斬られた肩の傷もその時には無くなっていたそうだ。あの光る人間は軍によって、回収された見たいだ。まだ軍に属していない自分には何処にいるのか、何者なのか、全く情報は入って来ないし教えても貰えない。


 「今は考えても何も分かる状態じゃないな」


 独り言を漏らし、その件は今は置いておき、この魔法石を取り敢えず使ってみる事にした。


 アレンは岩を目標として、手のひらを向ける。5本の指先に魔力を集中させ、それを手のひらに留める。そしてそれを発射するイメージで魔法を放つ。

 これは最も基礎的な魔法の扱い方だ。


 アレンから放たれた電気は、岩へと命中する。拡散する事も無く、綺麗な1本の電気だった。


 「これはアンジが興奮してたのも納得だな…」


 雷の魔法は扱いが難しい。

他の属性は大抵魔力を貯めた後、放つのは容易だが、雷の魔法は瞬発的に放つ必要がある為、コントロールが困難なのだ。

 アレンは得意だと言う自覚はあったが、それでも今みたいな綺麗な1本の電気を出した事は無かった。


 これならあの魔法も使える。

 そう確信したアレンは、明日の実技試験の為に魔力を温存する事に決め、普段より早めに寝ることにした。




 朝、目が覚めると廊下からひっきりなしに音がする。恐らく人が走っているのだろう。何が起きているのか気になるので、ドアを開け様子を伺う。


 「今日の実技試験の組み合わせが発表されたらしいぜ! 」


 「誰が勝つのか賭けしようぜ」


 町がこんな状態なのに、なぜ実技試験などするのか? アレンが疑問に思っていたが、楽しそうに話す町の人を見るとその疑問は解決した。


 「兵士が少なくなっているのだから、結果に関わらず全員採用されるだろう何故、こんな時に実技試験なんてやるのか?」


 こんな時だからこそ娯楽も必要なのだ。それで活気が出るのなら、これは兵士候補生としての仕事だな。アレンはそう考えると、身仕度を整え始めた。



 広間に行くと人だかりが出来ている。恐らくその中心に組み合わせ表があるのだろう。実技試験とは、兵士希望の者が一対一の戦闘を行い、実力を示すために行われる。


 「あっ、組み合わせ表もう見た?」


 振り返るとマナがいた。


 「いや、まだ見れて無いんだけど町の人が盛り上がるなら、相手が誰だろうと派手な魔法で盛上げようかなと思ってるよ」


 「そんな余裕があるかな~? まっ、ケガしないようにね。あたし初戦だから先行くね」


 なんだ? あの意味ありげな言い方は?

 アレンは人混みを掻き分け、組み合わせ表を見る。なるほど、マナの言っている意味が分かった。



 準備運動を終え、砦の庭に設置された即席の闘技場へと戻る。会場を見下ろせる観客席に行くと、丁度ダートンの試合の様だ。


 「可哀想な組み合わせだな」


 階段を上がって来たケイムが、試合を見ながら言う。


 「確かにそうだな」


 アレンも同意見だった。ダートンの相手は恐らく近くの村から来た参加者だろう。別に負けても兵士には採用されるだろうから、勝ち負けには問題無いが、兵士になる前に心が折れないか心配だ。


 戦闘の訓練を受けているアレン達とは違い、相手は素人の動きだった。

 ダートンの基本的な戦闘スタイルは、槍を構え相手を近付けさせない。運良く近づけたとしても、攻撃は全て防御魔法で防がれるだろう。もちろん試験なので、武器は槍に見立てた長い木の棒だ。しかしこれではダートンも流石に一撃で倒す事もできない。言い方は悪いが嬲り殺す様な感じになるだろう。


 「マナの試合はどうだった?」


 ケイムは思い出し笑いをすると


 「一言で言うと、水鉄砲合戦かな」


 何となくイメージ出来た。マナは水の魔法を使う。回復は得意だが攻撃系の魔法は苦手だ。対戦相手のキャンディもマナと全く同じタイプなのだ。


 二試合後が自分の試合だったので、準備するために観客席から降りていく。


 「アレン! 熱い試合を楽しみにしてるよ」


 不敵な笑みを浮かべたまま、ケイムが手を振っている。



 「次!西口入場のアレン候補生!」


 アレンが兵士に呼ばれる。


 「はい!」


 アレンの手には短剣に見立てたられた、短い木刀2本が握られている。

 木の扉が開けられ、中へと入る。観客席にいた時とは歓声の聞こえ方が違う様に感じた。


 「西口! アレン候補生!」


 審判に名前が紹介される。手を上げて、歓声に応える。

 次に東口の扉が開く。


 「東口! アンジ候補生!」


 長い木刀を持ったアンジが現れる。180cmを超える身長に、鍛え抜かれた筋肉。対峙して無い者でも威圧感を感じるだろう。


 お互いに中央に向かうと、審判が禁止事項の確認をする。簡潔に言うと殺す事はするなと言う事である。


 確認し終えると、お互い5mほど離され待機する。

 観客の声が次第に大きくなる。


 「始め!」


 審判が両腕を振り下ろし、試合の開始を告げた。



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