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ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第一章 運命の扉

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追憶(7)追放



 意識がうっすらと戻ってくる。でも、目も開かないし体も動かせない。



「――転移石はどうした?」


「黄色がないぞ」


「黄色……あ! 今回の異世人召喚で魔石が足りないからと言われて、持っていったんだった」


「なんで持っていった!」


「仕方ないだろう? ほら、召喚の魔法陣を起動したとき、暴走しそうになっていたじゃないか」


「ああ」


「魔力が足りない、ということでブリュノ様が大至急で魔石を持ってこいと言われたから、一番近かったこの部屋で、一番使えそうな魔石を選んだんだ」


「召喚で使ってしまったのか?」


「まさか無能人が召喚されるとは思っていなかったからな」


 無能人! 異世界人は、「異世人」だったはずなのに、随分とひどい言葉に置き換えられてしまった。


「それもそうか。召喚した異世人がすぐに処分対象になるとは俺も思っていなかった。悪いのはこの無能人だ」


「そうだな。召喚の魔力が足りなかったのも、この無能人の召喚に必要だったということなんだから、責任はこの無能人に取らせるのが筋ということだろう」


「ああ、そうだな」


「とはいえ……どうする?」


「何か使えそうな転移石は、残っていないか?」


「ちょっと待て、探してみる――――」


 ごそごそと、そこら中の引き出しを開けるような音がしている。


「黒の転移石なら残っているな。あとは――――魔石だけだな」


「黒? さすがにそれはまずいだろう? あれは、大陸東のピュイサン帝国への転移石だ。いくら数年交流がないとはいえ、使った時点で通報される。下手をすれば、そのまま戦争が始まるかもしれない。もしもそうなったら、俺たちの首が落とされるぞ、物理的に? 絶対にダメだ。黄色の転移石を流用したことがバレるより、はるかにまずい」


「それもそうだな。黄色なら『死神の森』だから、どうせ異世人にしか使わない転移石だし、なくても大きな問題にはならないからな」


「だが、流用はさすがに処分の対象になるんじゃないか?」


「どうする?」


「どうするもこうするもないのだが……そうだ! 先月、西の白虎ダンジョンで見つかった、あの無色の魔石を使うのはどうだ?」


「魔力があるのは確認できたが、その効果が分からなかったあの魔石のことか?」


「そうだ。ちょっと、待て、探すから――――ああ、あった! これだ、これ。どうせ処分対象になっているし、転移の魔法陣を動かすぐらいの魔力は持っていただろう?」


「確かに魔法陣を起動させることはできるだろうが……だが、転移石を使わないと、転移先の指定はできないぞ? 行先はどこかのダンジョンになる」


「そんなことは分かっている。だが、どうせスキルも碌に持たない子どもなら、死神の森でも、どこかのダンジョンでも…………」


「生き残ることはできない、は一緒か」


「そうだ。転移先がこの大陸内とは限らないわけだし、仮にこの大陸内のダンジョンでも、転移先はボス部屋なんだ。スキルもない子どもが助かるはずがない」


「そうだな……」


 そのまま沈黙が続く。


 二人の会話から、何が話されたのかはなんとなく想像できる。

 これから俺は、どこかに転移させられて追放させられる、ということだ。


 しかも予定されていた追放地がどこなのかは分からないが、どうやら黄色い転移石を今回、俺たちの召喚の儀式で使ってしまったらしい。しかも無断で。

 だから、転移の魔法陣たぶんを起動させるだけの魔力を持っている、処分が確定された魔石で流用しようとしている。


(おーい、ここに横領の犯人がいますよ)


 まあ、内部通報の制度がこの王国にあるとは思えないし、何より俺の言葉が届くはずもない。


(くそっ)


 思い切り抗議したいが、口も動かせないのでは何もできない。


 たっぷり数分は経っただろうか?


「――――どこに送られても、結果は同じなんだ」


「まあな…………黄色の転移石で送られても、死神の森はBクラスの魔物がどこにでもいる。しかもAクラスやSクラスの魔獣も時折、顔を見せるんだから、引き裂かれて死ぬのが確定している死神の森よりも、見知らぬダンジョンの方が楽に死ねるかもしれないぞ」


「そうか。ボス部屋なら、侵入者をいたぶるボスは、多くはないからな。あっさり殺してもらえるならそれも慈悲だろう、たぶん」


(な、何を言ってるんだ! 俺は、そんな慈悲を求めちゃいないぞ!!!)


 まずい、まずい、まずい、まずい……


 心の中で汗がツーと伝うのが分かった。


「そうだ。きっと、こいつも俺たちに感謝するさ。苦しんで苦しんで死ぬよりも」


(しねえよ! ボケ!!! どっちにしろ死ぬんだろう!? だったら一緒だ!!)


「よし。じゃあ――――この透明の魔石を使うぞ」


「ああ」


(おい! やめろ!!)


 だが、俺の言葉にできない訴えなど誰にも届かない。


(俺をこの世界に呼んだ神はどこにもいないのか!?)


 もちろん神が答えることなどなく、憤慨しても、どうにもならない。


 そして――


 ゴソゴソゴソゴソ


 何かの作業を行っている音が聞こえる。俺には、その作業を止めるすべが、何もない。


 二人とも、もう何も喋らないのは良心が咎めているからだろうか……?


(くそっ、くそっ、くそっ!!)


 体を動かそう、声を出そうとするが、何をどうしても力が入らない。


 ガタン


 何かが落ちる音がすると、袋越しに、緑色の光が俺を包んだのが分かった。


(やばい! やばい! やめろーーーーーーーっ!!)


 だが、俺の心の声が静けさを打ち破ることはなく、俺の意識は再び暗闇の中へと落ちていった――――



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