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ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第一章 運命の扉

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三つの選択肢


(もしも……)


 そう、もしもバトルシープの出現が、現在の7日間続いているこの現象と()()()()で現れていたなら…………


 今回、他の迷宮のスタンピードの繋がっているのでは?と考えたが、その繋がっているのがもしも一カ所でなかったとしたら…………


 嫌な感じを俺は覚えていた。


(くそっ!)


 俺は、おそらくこの世界で、もっとも力を持つ者だと思う。

 だが俺は神でも仙人でもない。賢者でもない。


 1,000年の間、いくつもの失敗をしてきた。

 俺の力で防げるはずの危機を、見過ごしてしまったこともある。


 後悔など、もう数えきれないくらい経験した。


 俺も、一時期、万能感に浸ったこともあった。

 これだけの力を持てば、なんでも意のままにできると。


 それが大きな勘違いであることに気づくために払った代償は、今でも忘れ去りたい記憶としてこの身に刻まれている。

 もちろん、忘れてはいけないことも分かっている。


 その忘れたい記憶が、この「嫌な感じ」に繋がっていることを俺は気がついた。


 分かっている。何が問題なのかは。


 ただ……


 踏み出していいのかを悩む。


「どうしたの、ルイ。顔色が少し悪くなっているように見えるわ」


「セシリア様……」


 少しだけ逡巡したが、一人でジャッジしてはいけないことを俺は思い出していた。


 俺の知識が「三人寄れば文殊の知恵」という諺を告げてきた。


 きっと【かんぱ】に尋ねても同じ答えを返してくるはずだ。


「セシリア様、今、僕は迷っています。このままここで最終ボスが現れるのを待つか、あるいはすでに繋がっていたはずのスタンピードはラスボスをここに送り込む前に終了したのか、どちらなのかを」


「……もしも、終了していると判断したら、ルイはどうしたいの?」


「この迷宮から、一度、外に出たいと考えています」


「外に出る?」


「はい。僕の持つスキルは、迷宮の中と外を繋いで確認することができません。迷宮の中にいる間は、外の状況が分からないんです。もしかすると――――」


「もしかすると?」


「バトルシープの出現ですが、今僕たちが対応しているスタンピードとは違う原因で現れていたなら…………」


 俺が何を言いたいのか、セシリアは分かったようだ。


「ま、まさか……」


「はい。もう一つの別の迷宮で発生したスタンピードが地上で溢れている可能性を心配しています」


「でも、バトルシープはここで現れたはずよ」


「はい。しかし、その転移地点が一度消滅して、新しい転移地点が地上のどこかに現れた、という可能性はないでしょうか?」


「そ、そんな偶然が……」


「普通なら、万に一つ、いえ億に一つの可能性だと思います。ただ、3か月後にスタンピードを迎えるはずのこの迷宮に集中して起きている異常事態は、どこかで何かが繋がっているような予感があるんです」


「じゃあ、すぐに地上に戻りましょう!」


「ただ、簡単に決められない理由が――」


 今すぐに、ここから駆け出そうとしていたセシリアだったが、俺が唇を噛んだのが分かったのか、ピタリと止まった。


 そして何かを考える。


「……なるほど。ルイが悩んでいたのは、まだラスボスが登場していない、ということね?」


「そうです。いったん外に出てしまえば、迷宮内がどうなっているのかを探る方法を僕は持っていません。もしも、今はまだ小休止しているだけで、このあとラスボスが現れてくるなら……」


「この場で、それを待ってラスボスとやらを討伐してから地上に向かいたい、そういうことね?」


「……はい。おそらく、ラスボスはSSSランクのブラックディアよりも強い可能性が高いですから」


 僕の言葉に、セシリアは「ちょっと待って」と言って考え始めた。

 そして、やがて小さく頷いた。


「――分かったわ。じゃあ、方法は三つね」


「三つ?」


「ええ。一つは私たちが二手に分かれる方法。迷宮内なら転移ですぐに移動できるルイが地上に向かう。そして私はここでラスボスを待つ、という方法ね」


「そ、それは……」


「分かっているわ。もしもラスボスが異常な強さを持っているなら私じゃ抑えきれないかもしれない、ということは」


 そう。今のセシリアのステータスを考えれば、100,000前後のステータスしか持たないボスなら、苦労せずに倒せるだろう。一応、身を守るためのスキルは俺がかけておくからね。


 ただ、ステータスが7桁を越える敵だったらどう転ぶか分からない。

 それに、セシリアは【限界突破】で自分のステータスを10倍に上げることができるが、敵も同じスキルを持っている可能性もある。


 このことは、セシリアも分かっているようだ。


「もう一つは、最初にポイズンドラゴンが現れてから、すでに7日間は経過したはずよね?」


「はい。何十分か前に、7日間は終了したはずです」


「スタンピードが最大7日間、ということを信じて、私たち二人で地上を目指すという方法が二つ目」


 そう、確率だけで考えるなら、俺たちが対応してきたポイズンドラゴンから始まったと思われる他の迷宮のスタンピードは、すでに終了している可能性が高い。

 だったら、もうここは気にせずに地上に向かうという方法もある。


 その場合の問題は、さっき考えたのと同じく、何かのイレギュラーが発生して、ラスボスの登場が遅れていた場合のことだ。


(まあいい)


 結論は、三つ目の選択肢を聞いてからでいいだろう。もっとも、その選択肢の内容は、なんとなくわかっているが。


「……三つ目は?」


「もう、分かっているでしょう? さっきルイが考えた、全く別のスタンピードが地上で繋がってはいないと考えて、あと一日、ここでラスボスが現れないかを待つことよ」


 そう。バトルシープが現れたのは、スタンピードなんかじゃやなく、単独のイレギュラーで引き起こされたと考えることは、特に無理なことじゃない。

 それよりも、二つのスタンピードが、同じ時期に、この迷宮の中と外で同時に繋がった、ということの方がよっぽど非現実的だ。


「私なら、三つ目かしら」


「その理由は?」


「だってバトルシープが現れたのは、ポイズンドラゴンよりも前よ。ということはもしも他のスタンピードが地上のどこかで繋がっていたとしても、すでに終了しているんじゃないかしら?」


 なるほど。そうだった。

 スタンピードが最大7日目で終了すること、バトルシープが現れたのがスタンピードが発生したことによるもの、ということなら、仮にそれが地上のどこかに繋がっていても、すでに終了していることになる。


 その場合には、今、地上に出ても瘴気の海の中ということも考えられる。


(くそっ……どうする?)


 判断は俺に任せたわ、と言わんばかりの視線を向けているセシリアを見ながら、俺はどうするのが一番良いのかを必死に考えていた。



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