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ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第一章 運命の扉

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来ないわね……


 ビュンッ


 仁王立ちで剣を構えていたセシリアが、静かに剣を横に振り切ると、目に見えることがない剣戟が一直線に、魔物たちに向かったのが分かる。


 だが、こちらに向かって駆けてくる魔物たちに何も変化が見られないと思った時――


 先頭を駆けていたブラックディアの首がずるりと落ち、後ろに続いた魔物たちからも色とりどりの血飛沫が舞い上がった。


 ドドドドン


 ブラックディアの残された下半身が、半秒後に倒れる。後ろに続いていた魔物たちも次々と倒れて、ブワンという音を伴わない衝撃音が聞こえたような気がすると、黒い粒になって大気中へと散っていった。


「お見事です」


 俺が称賛の言葉を口にすると、後ろを振り向いたセシリアが「そうかしら」と満更でもない表情を浮かべた。そして虚空を見つめるて何かを確認すると、満面の笑みを浮かべた。


「ルイ!とうとう大台に乗ったわ!」


 どうやらステータスを見ていたようだ。


「見させてもらっても?」


「構わないわ! 見て!」


「じゃあ、失礼して――【かんてい】!」


(おお……)



 名前:セシリア・ド・フローレス

 種別:人族

 年齢:17歳

 性別:女

 職業:勇者

 レベル:1,000

 攻撃力:132,494

 魔力 :107,727

 防御力:107,440

 精神力:122,844

 運  :84


 スキル:【剣術(★★★★★:剣聖)】、【回復(★★★)】、【縮地(★★★★)】、【耐性(★★★)】、【灯り(★★)】、【集中(★★★★)】、【限界突破】、【鑑定(★)】、【魔力剣(★)】、【■■■■】



 ついに、セシリアのレベルが1,000に到達した。

 俺が知る中で、レベルだけで言えばこの世界のトップに躍り出た(俺は除く)。


 各ステータスも100,000を越え、特に攻撃力と精神力の値の伸びが良いのは、勇者の特性が関係しているからだろうか?


「おめでとうございます」


「何言ってるの、ルイ。これは、ルイのお陰だってこと、分かっているわ」


「それでも、剣を揮い続けたのはセシリア様です。道を開いた者ではなく、その道を歩き続けた者こそが勇者である、という格言の通りかと思います」


 案を作った者よりも、その案を実行した者の方が称賛される、というこの世界独自の諺を使うと、セシリアは嬉しそうな顔を見せてくれた。


(ああ……真っすぐな人だ)


 俺とは違って、師匠のように物事に対して正面から取り組もうとするセシリアの魂の在り方は、まぶしく見える。


「そろそろかしら?」


「そうですね」


 セシリアの問いは、他の迷宮からの襲撃者スタンピードというこの異変がそろそろ終わりを告げるころではないかということを示していた。


 まもなく7日目が終わる。


 もしかすると、最初にバトルシープが現れた時点が、この異変のとっかかりかとも思ったが、どうやら、その始まりはポイズンドラゴンが現れた時だったようだ。


 さて、これから現れるのはボスか、そうでないのか…………


【かんぱ】に尋ねると、迷宮の中に他で起きたスタンピードの魔物たちが現れた事例はアカシックレコードに記録されていないという話だった。なので、もしもボスが現れた場合の警戒は、二段階ほど上げている。


 といっても、仮にボスが今のセシリアのステータスを上回る力を持っている場合は、俺が動きを止めてしまえばいい。ステータスの差が大きくても、弱体化させるのは簡単だし。


 ちなみに、今、セシリアは魔物たちを自分の力だけで倒し切っている。俺はもうヘルプしていない。


 俺とセシリアは、並んで立つと、次の魔物たちの登場を待った。



 ■□■□



「来ないわね……」


「そうですね」


 すでに小一時間が経過した。まもなく7日目の時間も終了しようとしている。


 セシリアの声は少しつまらなそうに聞こえた。

 レベル1,000を越えた力を揮いたい、と思うのは戦士のさがなのかもしれない。

 もっとも、各ステータスは、レベル1,000を迎える少し前にすでに100,000を越えていたから、今さらのようにも思えるが…………


「【魔力剣】、一度、使ってみたいのよね……」


 ポツリとセシリアが呟いた。


(ああ、そっちか……)


 セシリアに新しく生えた【魔力剣】というスキルは、レベル1,000に到達した時点で生えた。【鑑定】のスキルはレベル800ぐらいのときだったはず。


 まだ★が一つしかついていないから、十全に力を発揮することはできないだろう。それでも、勇者の持つ特性がこのスキルを生やしたことに疑いはない。



【魔力剣(★)】使用魔力:1~100

 剣技に魔力の属性を纏わせて揮うことができる。纏わせることができる属性は炎と水。纏わせることができる効果時間は1分。★の数により、纏わせることができる属性と効果時間が異なる。



 今のところ、纏わせることができる属性は炎と水しかないが、★★★★★になれば全属性を纏わせることができる。使用魔力も★★★★★の場合は、最大10,000。

 セシリアの場合、【限界突破】で威力を10倍に増幅できるから、★★★★★に至れば、強いドラゴンでも弱点属性を纏わせることで倒すことができるだろう。


 セシリアが、早く試したいと思う気持ちはよく分かる。

 俺も、新しいスキルが生えた時は、すぐに試したいと思ったからね。


(それにしても……)


 なぜ、今、魔獣たちの襲来が小休止しているのか?


 その理由を考える。


 一つは、スタンピードがすでに終了している、というパターン。

 最後のボスが現れていないけれど、一応、考えられる。


 もう一つは、こちら側、あるいは向こう側の転移するポイントに何かが起きているという状況。

 その場合は、最後のボスが現れるタイミングで転移に関係する転移ポイントが復活するなら、このままもうしばらく待ち続けた方が良いだろう。


 他には……


 たまたま小休止しているだけ、ということも考えられる。その場合も、もうしばらく待つ必要がある。


 考え始めると、きりがないことが分かった。


 そもそも俺たちは、この状況が他の迷宮のスタンピードと地上で繋がっているという想定の下で戦ってきた。

 その想定も確定しているわけではない。


 その時――


「本当に静かね……」


 セシリアがポツリと呟いた。


「静か?」


「ルイは、この迷宮内なら、何とかというスキルを使って調べることができるんでしょう?」


「はい」


 この迷宮は全階層を一度通ったから、俺の【まっぷ】でどこに敵がいるのかを表示することができる。

 迷宮の中にいる間は、迷宮の外は次元が違うせいで分からないけれどね。


「何か異常はないのかしら?」


「ちょっと待ってください」


 俺は【まっぷ】の索敵範囲を、全階層に広げてみた。


(うん、大丈夫だな)


 特に異常なところは見つからない。最下層も静かなままだ。


「異常はみつかりませんね」


「そうなのね……」


 そして、セシリアは何かを考え始めた。


「そういえば……ルイは、最初に現れたバトルシープは、なんだったと思う?」


(バトルシープ?)


 セシリアの言葉に、俺の背中にゾクゾクとした何かが走った――――




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