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ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第一章 運命の扉

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100年ぶりの……


「【なげる】!」


 両手を空に向かい、スキルを発動させる。

 俺の手から、無数の魔力弾が放たれ、そして【まっぷ】で表示されている白い点に、大きな曲線を描きながら向かう。


 ほぼ次の瞬間、200メートルほど先に現れた魔物たちが魔力弾に撃ち抜かれ、その体は黒い霧のように散りながら空中へと消えていった。


 先頭でこちらに向かっていた、SSSランクの鹿の魔獣、ブラックディアも黒い霧と変わるのは例外ではない。違うのは、落とす魔石の大きさが、二回り以上大きいことぐらいだろうか?


 その魔石も、【まっぷ】で確認できるので【しゅうのう】に保管する。


 この階層も、夜が訪れることはなく、24時間太陽が天頂で照り続けている。


 空は青空で、唯一変化があるのは雲が移動していることぐらいだろうか。


 これから10分間――――正確に言えば9分20秒のクールタイムだ。

 俺は、チラリと背後に設置したテントを見た。


 寝息が聞こえてきそうな静かな佇まいは、セシリアが安眠していることを現わしている。

 二重にも三重にも安全を確保するためのひらがなスキルはかけているのだけれど、彼女の休息を邪魔していないことに俺はホッとしていた。



 ■□■□



「【なげる】!」


 俺は、再びスキルを発動させた。

 今度は、両手を手のひらで合わせるようにして前に突き出している。

 俺の知識が、ある有名なアニメキャラのポーズであることを教えてくれるが、このポーズやスキル名を言葉にすることについて、大きな意味はない。


 ただ、半日以上、作業のように同じことを繰り返すことに少し飽きてきたのかもしれない。


(ダメだ、ダメだ)


 これまでも、セシリアが討伐することを手助けするため【ていし】のひらがなスキルは発動させてきたが、セシリアの美しい剣技は飽きずに見ることができたし、万一の突発的状況に備えるため警戒はしていたから、退屈さは一切感じることがなかった。


 あの師匠と出会った島で、何年にもわたって「魔草抜きチャレンジ」を続けてきたことを考えれば、たった一日なのだから、こんな風に片手間の作業と考えること自体が過信につながっていると怒られても仕方がないだろう。


 セシリアが目覚めるまで、あと8時間くらいだ。


 そんなことを考えていると、俺の体にジュワンとした感覚が走った。


(え?)


 身に覚えのあるこの感覚は、前回に感じたのが100年以上前であることをふと思い出し、俺は、少し愕然とした。


 そう――


 20おきのレベルアップ時に、()()()()()()が生えた時に感じる感覚だ。


 新しいスキルが――ひらがなスキルはもちろん、普通のスキルもなかなか生えなくなったとき、俺は新しいスキルが生えた時のみ、このレベルアップの感覚が得られるように【かんじる】というひらがなスキルを使って調整した。

【かんじる】の効果は、文字通り「感じる」だ。


 超久しぶりの感覚に、驚きを覚えながらも、俺はドキドキしているのが分かった。


 新しいスキルは何なのか?


 もちろん、普通スキル、ひらがなスキルで、得られる感覚を変化させることもできるが、あまりにたまにしか得られない感覚のため、わざと分けることはしていない。


『【かんてい】!』


 もちろん、こんな大切な確認に無粋なことをするつもりはない。口には出さずに、心の中で【かんてい】のスキルを発動させる。


 すると――


(……【けいけん】?)


 俺に生えていたのは【けいけん】というスキルだった。


(これは、「経験」でいいんだよな?)


 だが……何の経験を指し示しているのか?


 ひらがなスキルの唯一の欠点を上げるとすると、複数の読み方がある言葉が該当すると、ちょっとドキドキしたり、恥ずかしくなったりすることがあることか。


 例えば、前に【せいちょう】というスキルが生えた時、「成長」なのか「性徴」なのかを考えたことがあった。ちなみに、そのときは「成長」だった。植物や生き物を成長させることができるスキル。邪なことを一瞬でも考えたことを、随分と恥じた記憶がある。


 果たして、この「経験」は何を対象としているのか?


 普通に考えれば、「経験値」を対象でいいよね?

 普通じゃないなら、(ごにょごにょ)…………


 ごほん。あまり、詳しいことは憚られるので、ここでは言及しない。


 それよりも、大切なことがある!


 それは、もう一つ考えなければならないこと。なぜ今、生えてきたのか?


 なぜなら、これまで生えたひらがなスキルは、そのスキルが必要とされるタイミングで生えてくることが多かった。もちろん、そうでないこともあるけれど、どうしても必要なスキルの場合には、いつも直前で生えていた。


 ちょっと、背後のテントに俺の意識が向いたのが分かった。


 ブルブル


 俺は、しっかりと首を横に何度も振った。


 エッチな意味をここで考えてはいけない。


(ふぅ……)


 邪念を払い、【かんてい】スキルを発動させる。今度は、しっかりと声に出してみた。


「【かんてい】!」



 ■【けいけん】使用魔力:1

 レベルアップに必要な得られる経験値を任意の値で乗算する。指定できる値は2~1,000のいずれか。有効期間は最大100日間。魔力を1消費する。



 な、なるほど。「経験」はレベルアップに必要な「経験値」のことを示していたようだ。


 ちょっとホッとするのと同時に、やはり、なぜ今、これが生えてきたのかを考えなければいけないように思えた。

 このタイミングで、100年以上振りに新しい「ひらがなスキル」が生えたことは、間違いなく意味がある。

 そして、その意味していることを考えると、このスキルが必要な対象は俺ではない。


 俺には【ぷらすわん】があるから、経験値という概念の外でレベルアップしているからね。

 100倍の経験値をもらっても、レベルアップは常に1だけ。逆に、100倍してもレベルアップに必要な経験値を満たしていない場合も関係なくレベルアップする。


 ということは、これは俺に必要なスキルでない。


(となると……)


 この【けいけん】のひらがなスキルは、セシリアに使えと言っているということなのか?


 乗算できる値も、最大なら1,000倍。ここ5日間で彼女が討伐した魔物や魔獣は約70万頭、そしてレベルは今150を超えている。

 ということは、今日と明日の二日間、約30万頭を彼女が討伐した場合に得られる経験値に1,000倍を掛けたなら、次のレベルアップに必要な経験値が常に上昇していくことを加味しても、おそらく数百のレベルアップが可能なんじゃないだろうか?

 もしも、レベル1,000まで到達できれば、各ステータスも6桁に届くことになる。

 そこまでいけばアルファ・ランクのスタンピードも単独で討伐しきることができるだろう。


 ということは、3か月後に訪れるであろうこの迷宮のスタンピードを、セシリアが単独で討伐しなければならなくなるのだろうか?


 あるいは……


 俺は、肌を焼くような強い太陽の陽射しを浴びながら、しばらくの間、セシリアの経験値を必要とするケースとは何があるのかを考えていた――――



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