表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第一章 運命の扉

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/97

チョロいな……


 1日目が終了。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 セシリアが肩で息をついている。スキルの力で体力は落ちていないはずだが、これは様式美なのかもしれない。


「とりあえず、1日目が終わりましたよ」


「そ、そうなのね。たった一日だけれど、私が生まれてからこれまで倒した魔物の数より多く倒した気がするわ」


 今のところ、魔物や魔獣が出現する頻度は10分簡に一度で、一度に現れる数は少しずつ増えて、現在は1,000頭。

 数が増えているのは、スタンピードが進んでいることを示しているのだと思う。


 今、俺たちは、魔物たちが出現する地点から2ヤド(200メートル)の地点で、戦っている。

 黒い渦が巻いて、その中から強力な魔物や魔獣が次々と現れる光景は、ここが地上なら大騒ぎになっていたのは間違いない。

 俺達は苦労なく討伐できているから関係ないが。


 24時間経過時点での、倒した数は合計で約10万。

 セシリアが、これまで倒してきた魔物の数より多いというのもあながち間違いではないのかもしれない。


 ちなみに、俺の場合は魔物を倒した数は、レベルを見ればすぐにわかる。イコールだからね。


 おっと、余計な事を考えていたようだ。まずは、セシリアを元気にさせよう。


「まずは、回復させますね」


「回復? ええ、お願いするわ」


「じゃあ――【かいふく】! そして【ぶっとおし】!」


 二つのひらがなスキルを続けて発動させる。



 ■【かいふく】使用魔力:1

 対象を回復させる。魔力を1消費する。



 ■【ぶっとおし】使用魔力:1

 対象を不眠不休で活動させることができる。効果は24時間、魔力を1消費する。



【かいふく】は、体力と魔力を回復させることができるひらがなスキル。怪我や病気に対しては、【なおす】のように完全に癒すことはできないが、体力を回復させることで自然治癒力が増すのか、症状を軽くすることはできる。


【ぶっとおし】は、「ぶっ通し」のこと。24時間の間、体調を維持しながら、ぶっ通しで行動させることが可能なひらがなスキルだ。

 24時間しか持たないけれど、掛けなおせばよいだけだから簡単。副作用はないが、いわばドーピングしている状態なので、精神的に疲れていないかは、チェックする必要があるのでは、と思っている。


【かんぱ】に尋ねると、大丈夫というけれどね。


 この【ぶっとおし】は、今回の、スタンピード対策を始めた最初の時に、セシリアにかけたから、その効果は実感しているはず。


「それにしても……すごいわね、このスキル」


「そうですか?」


「だって、丸一日戦い続けても、眠くもならないし疲れも溜まっていないわ。さっきは、なんとなくはぁはぁしたけど、実際には疲れていないわね。お腹はすくけれど、食べれば大丈夫だし」


 さっきの、「はぁはぁ」はやっぱり様式美だったか。


「まあ、そういうスキルですから」


「体に悪くないなら、これを使って寝ないで訓練し続けたらすぐに強くなれるんじゃないかしら?」


「うーん、どうでしょう。そんなお願いをされても、僕は受けるつもりはありませんよ。人はやっぱり休むことも、体にじゃなく心に大切だと思うんです。さっき、セシリア様も疲れていないのに、はぁはぁしましたよね? そんなものです。今回は特別です」


「心? そうかもしれないわね……」


「そんなことより、二日目を始めますよ」


「二日目? ああ、これがあと6日間、続くのね……」


 少し遠い目をするセシリア。


「そうです。でも、セシリア様。確実にステータスは上がっていますから、頑張りましょう。それに市井の人々のためですし」


「そうね。みんなのために戦っているんだものね。私は勇者、私は勇者、私は勇者……」


 納得したのか、ブツブツと自分が勇者であることを暗示をかけるように繰り返すセシリア。

 様子を見ながら、精神的な疲労が溜まるようなら、休憩してもらおうかな。



 ■□■□



 五日目。


「【かいふく】! そして【ぶっとおし】!」


「ありがとう」


 体力も魔力も減っていないはずなのに、セシリアの顔色が悪く見えるのは、目の光が失われているせいだろうか?


「大丈夫ですか、セシリア様?」


「何が?」


「ちょっと、少しの時間で良いので寝ましょうか?」


「寝る? そんな時間はないわ。私は戦わなければならないの!」


 うん、どうやら俺が甘く見ていたようだ。

 俺が自分に【ぶっとおし】をかけた時は、ここまで心が疲労してはいなかった。

 でも、考えてみれば丸々四日間、【ぶっとおし】を連続して使ったことはないな。


 今も、自分自身に使っているのは【ぶっとおし】ではなく、【ふみんふきゅう】だし。

【ふみんふきゅう】は、不眠不休を続けたダメージが、スキルの解除後に体に現れるから、セシリアに使うわけにはいかなかった。俺は、そのダメージを他のスキルで軽減できるからね。


 まあ、俺のことはよい。


 一日目に少し心配したけれど、「心の疲労」を甘く見てはいけないということがよくわかる。


【かんぱ】も気がついていなかったけれど、これが、机上と実践の違いというものなんだろうな。


 やはり、休息って大切ということが分かる。


 なので――


 俺は、セシリアを強制的に寝かせることにした。時間は24時間。


「セシリア様、すいません」


「え?」


「【すいみん】!」


 俺のスキルを受けて、驚いた顔のままセシリアの瞼がゆっくりと落ちる。


 ふらりと倒れる体を抱きとめてから、【しゅうのう】からテントを取り出した。


 魔道具のテントだから中は広い。空調も魔道具で調整して高級寝具も置いてあるから快眠できるはず。

 俺はセシリアを、お姫様抱っこで抱き上げるとテントの中に運ぶ。そして、そっと寝具に寝かせた。

 すやすやと眠るセシリアの寝顔は、見飽きることはない。


 俺は【まっぷ】に次の魔物が出現するまで、その寝顔を見ていた。


 やがて――


 魔物が現れたのを確認した俺は、セシリアに「おやすみなさい」と声をかけた。

 気のせいなのは分かっているけれど、セシリアの頬が緩んだように見えた。


(よし!)


 気合を入れてからテントを出た俺は、ちょっとやる気が出たのが分かったので、自分のことを「チョロいな」と思ったが、別にそれが嫌ではない。


(さて……)


 俺は、【まっぷ】に現れた白点に向けて、【なげる】のスキルを発動させた。

 投げるのは魔力の塊。

 籠めた魔力は、塊一つあたり100,000。

 現在、出現している魔物たちなら、SSSランクの魔獣でも一撃で仕留められる。


【しゅうのう】の中には、【かそく】のスキルを使って光速の1,000分の1の速度に加速させた、俺の必殺技といっても過言ではないミスリル製の弾丸がたくさん貯めてあるけれど、あれは多少準備が面倒なので、今は「魔力弾」を使っている。


 1,000頭で1億の魔力をつかうことになるけれど、魔力は放っておいても、一時間当たり2兆以上自然回復してくれるので全く問題はないからね。


 俺は、【まっぷ】上だけに映る敵を倒しながら、ふと、師匠と出会った島でこうやってステータスを上げ続けていたことを思い出していた。


 最初の頃は、魔草を一本抜くのに何日もかかっていた。


 それが今では、直接目にすることがない場所の敵を、魔力の塊を投げて当てるだけで倒すことができるようになった。


 次にセシリアが目覚めるまでの間で、俺が倒すことができる魔物や魔獣の数は約15万。俺のレベルも、全てのステータスも15万上がることになるけれど、現在のレベルやステータスの数値を考えると、約4億分の1にも満たない。


 俺は地面に座って、現れる魔物たちを瞬殺しながら、時の移ろいに向ける自分の視線がすっかり枯れてしまっていたことを思い出し、そして同時にセシリアに出会ったことで再び色づき始めたことは感謝しなければいけないのだろうな、とぼんやり考えていた――



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ