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ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第一章 運命の扉

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スタンピード in スタンピード?


「完勝でしたね、セシリア様」


 戻って来たセシリアに声をかけると、プーッと頬を膨らませた。可愛い。

 倒されたポイズンドラゴンが消えた跡には、大きな――50センチほどの紫色の魔石が転がっているのが見えた。あとで回収しておこう。


「ルイ。あなた、今、何かしたでしょう?」


「え? 何とは?」


「ドラゴンでしょう? しかもレベルが800台の。いくら私の【限界突破】でも、全く手に感触がなく首を落とせるなんてありえないわ」


 そうか。確かに【限界突破】で10万近い攻撃力に上がったセシリアでも、防御力が1万を越える相手を倒したとき、一切の手ごたえがない、というのは不自然だったかもしれない。


「それについては、あとでまとめて説明します。それよりも――――」


「それよりも?」


「次の敵が現れたようです」


「え? 嘘?」


 驚いた表情を見せるセシリア。


「今度は何?」


「同じ、ポイズンドラゴンです。10頭ほどいますが……」


 俺の言葉に、振り返りポイズンドラゴンが現れた地点の空に目を向けるセシリア。


「……確かに、魔力が漂っているわね」


「セシリア様、いったん【限界突破】は解除されてみてはどうでしょうか?」


「でも、すぐに敵が来るんじゃない?」


「まだ数分、かかります。それに……おそらくこれで終わりではありませんから」


「一応、確認しておくけれど……」


「はい、なんでしょう?」


「ルイは、10頭のポイズンドラゴンを、問題なく倒せるのね」


 俺は、僅かに逡巡してから、しっかりと頷いた。


「大丈夫です」


「そう……」


 そして、セシリアは【限界突破】を解除した。少し浮き上がるように膨らんでいた金色の髪が真っすぐに流れ落ちる。


【限界突破】には、次の発動までのクールタイム(待ち時間)と、効果が継続するタイムリミット(制限時間)の二つの制限がある。

 今、セシリアは発動させた【限界突破】を途中解除したようだ。もちろんクールタイムは、最後まで【限界突破】のスキルを使い切った場合よりも短いはずだ。


「セシリア様。お尋ねしますが、【限界突破】のクールタイムとタイムリミットは、どれくらいですか?」


「クールタイムとリミットタイム? ああ、あれね。【限界突破】の有効時間は最大の倍率でかけると10分、途中解除した場合は、経過時間×10分がクールタイムになるわ。リミットタイムは、今のところ私のレベルでは最大10分ね」


「ということは、クールタイムの最大は100分でいいのですか?」


「ええ。そうね」


 なるほど。今、セシリアが【限界突破】を使っていた時間は2分ほど。ということはクールタイムは20分ということだ。


 ポイズンドラゴンたちがここに来るまでの時間は、さっきのポイズンドラゴンと同じならおおよそ数分。

【かんてい】で見たところ、10頭とも、さっきのポイズンドラゴンとほぼ同じステータスだった。スキルは少し違うけれど、誤差の範囲でいいと思う。絶対にまずい、という攻撃手段も持っていないからね。


 ということは、やはり今回はセシリアのクールタイムは間に合わなさそうだ。


(それにしても、リミットタイムは10分か……)


 セシリアの話では、「今のレベルでは」ということだったから、これから成長すれば、【限界突破】を使える時間は、どんどん伸びていく、ということなんだろう。さすが勇者。


 まあいい。


「セシリア様。さっきも少し言いましたが、今回は僕がやります」


「いいのね? それで?」


「はい。まだ後が続きそうですから次は任せます。順番に倒していきましょう。準備しておいてください」


「待って、ルイ」


「なんでしょうか?」


「ルイは、この異常な魔獣たちの出現の理由が分かっているの?」


「たぶん、ですけれど……」


 そう、本来、この迷宮でのスタンビードは三か月後だった。だが、すでにスタンピードに近い状況が生まれつつある。

 しかも、迷宮の最下層でない位置から。


 その原因を俺は一つ思いついていて、【かんぱ】に確認したところ、その可能性は高いかもしれない、と言われていた。


 その理由とは――「スタンピードinスタンピード」だと俺は考えている。


 何かと言うと、迷宮の中に迷宮が誕生、しかも新たに生まれた迷宮がちょうどスタンピード中、あるいはスタンピードが始まったばかりなじゃないか、ということ。


【かんぱ】は、過去の事例で発生はないが、この世界の近似別空間である迷宮内に、同じ仕組みで近似別空間が繋がる可能性は否定できない、そう。

 ただ、それは通常に起こりうる事象というよりも、イレギュラー、エラーのような状況のようだ。


 エラーが起きる状況を考えると、この大陸以外の、別大陸の迷宮が「魔素嵐」に巻き込まれていきついた先が、この迷宮だったという状況らしい。

「魔素嵐」とは、魔素が竜巻のように巻き込まれて累積化していく状態のことで、千年に一度くらい起きている状況のことだ。もちろん、魔素嵐が起きるには広い「魔素溜まり」が必要だから、簡単に起きるものではない。俺も、知識として知ってはいるが、実際に魔素嵐にお目にかかったことはない。


 迷宮は、スタンピード以外で魔素を外にはみ出させることはないが、たまたま他の大陸で魔素嵐が起きた場所がスタンピードが始まった直後の迷宮の側だった可能性が、もっとも原因として考えらえるそうだ。


 一つの大陸の中で、スタンピードが発生する迷宮は一つだけであること、1,000年に一度しか発生しない魔素嵐が、これも100年に一度しか発生しない各大陸のスタンピードの迷宮の側で発生する確率は、かなり天文学的であって、偶然と言って良い確率と考えてよいらしい。


 それが仮に1億年に一度の確率なら、それがまだこの世界で発生していなくても特に不思議なことではないし、そして1億年に一度発生するならそれが今であっても、それは不思議なことにはならない。


 まあ、しいていえば、「運がなかった」ということか。


 いや、俺は「運」のステータスは、いやというほど溜まっているんだったっけ。

 ということは、この「スタンピードinスタンピード」も、俺にとっては何かの意味があると考えた方が良いのかもしれない。


「推測ですが、いいですか?」


「いいわ。この異常な状況が続くのか、どこまで悪化するのかが知りたいから、ルイが知っていることを教えてちょうだい」


「分かりました」


 そして、俺は、今の状況は、迷宮の中に、どこか遠くのスタンピードが始まった迷宮と「魔素嵐」という現象により繋がったのではないかと考えていることを説明した。



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