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ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第一章 運命の扉

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【閑話】極秘の会議


 side シュドリー王国の極秘会議



 アンラビフォン迷宮。

 ボクゥゲンス大陸の南に位置する、ここシュドリー王国のほぼ中心部に位置する迷宮だ。


 階層は20階層しかなく、どちらかと言えば小規模な迷宮だが、出現する魔物の種類は多種多様で豊富な魔石の産地ともなっており、シュドリー王国内では最大の富を生む迷宮と位置づけされている。


 その近隣に位置する迷宮都市スタシーは、100万を越える人口を有しシュドリー王国内では、王都シュドの次に栄える都市になる。


 今、王都シュドにある王城では極秘の会議が行われていた。


 会議が行われている広い部屋には、20名は着席できるほどの大きなオーバルテーブルが置かれ、そこに豪奢な服装に身を包んだ男性4名が座っていた。


 テーブルの上座には、王冠を被り朱色のマントを羽織っている壮年の男性はシュドリー王、シュドルワが座り、王から右側には2名、リッカ宰相とルッソ情報特務隊隊長、左側にはフローレス侯爵が席についている。


「――――それで? 聖女の予知は正しかったと? アンラビフォン迷宮のスタンピードは避けられない、ということでいいのだな?」


 リッカル宰相が尋ねると、隣に座る情報特務隊隊長ルッソが立ち上がり、「ハッ」と姿勢を正して答えた。


「勇者小隊の隊員からの報告によると、アンラビフォン迷宮で魔草原が形成されるつつあるとの報告が来ております。また、つい二日前には、アンラビフォン迷宮から魔獣のアウトブレイクも確認されました」


「魔獣のアウトブレイク? まだ3か月近くの猶予があるんだぞ?」


「その通りです。出現したのはバトルシープ。5頭の群れで出現したとのことです」


「は? バトルシープ? SSランクの魔獣じゃないか! 勇者セシリアが倒したのか?」


「はい。そう報告を受けております」


 その言葉を聞いた、リッカル宰相の隣に座っていたフローレス侯爵が大きな声を出した。


「バトルシープ5頭を、娘が――セシリアが倒したというのか!」


「はい」


「信じられん!」


 首を横に振るフローレス侯爵の表情は、その言葉を本気で言ったことを示していた。


 バトルシープとは、羊型の大型魔獣だ。バトルシープのスキル【フォーススリープ】はもしも★5ならば、精神力が10,000を越えていないと防げない強力な強制睡眠のスキルだ。スタンダードな★3であってもレジストするために要求される精神力は最低でも5,000が必要となる。


 バトルシープの攻撃力のスタータスは、さほど高くないとはいえそれでも8千を越える。

 強力な異常状態攻撃を含めて考えると、勇者セシリアが一対一で対峙しても討伐は容易ではなかった。それが5頭も同時に現れたなら、本来は王国軍が総出で対応に当たるべき案件だった。


 それを、いくら勇者とはいえ、まだ完成されていないセシリアが倒したということを父であるフローレス侯爵は信じられなかったようだ。


「問題は――」


 これまで沈黙していたシュドルワ国王の重い声に、一同が身を固くする。


「これで、迷宮のスタンピードが――アルファクラスのスタンピード発生が確定したと考えてよいのだな?」


 リッカ宰相が頷いた。


「はい。それで良ろしいかと」


「それで勇者セシリアは、予定通り、迷宮都市スタシーを犠牲にするだけで7日間を耐えられるのだな?」


 国王の言葉に、ようやく衝撃から立ち直ったフローレス侯爵が答えた。


「セシリアには、命を賭して成し遂げるよう厳命しております」


 リッカ宰相がフローレス侯爵をちらりと見る。彼の言葉に、娘を失う悲壮な色が浮かんでいないのは、セシリアが嫡子ではないからかもしれないからだろうな、と思ったが口にはしない。


 ただ、「耐えられる」とは答えず、「成し遂げるよう厳命している」というフローレス侯爵の答えは、スタシーを犠牲にして7日間を持ちこたえることが難しいことを示したといって良いが、国王を始め、誰もそこを深堀することはなかった。


 それまで立っていたルッソ情報特務隊隊長は、ここがタイミングだろうと思い静かに着席したが、彼に視線を向ける者はいない。


「もしも――もしも、勇者が早期に敗れるようなことがあれば、次はどこでスタンピードを止められる?」


 だが、我慢しきれなかったのだろう、難しい顔をしたリッカ宰相が勇者が途中で倒れた場合の質問をした。


「アンラビフォン迷宮から迷宮都市スタシーまでを直線で結んだ場合、その延長戦上にある大きな都市はミドリーとブランケルとなり、それを越えられてしまいますと――」


「王都が目前、ということか」


 王の言葉に、ルッソ情報特務隊隊長よりも先にフローレス侯爵が答える。


「……その通りです。ですが、アンラビフォン迷宮から王都シュドまでの直線距離は約千キロ。一般的な魔獣の一日の踏破距離が長くても200キロであることを考えると、勇者が、娘がたった二日間、スタンピードをスタシーで留めておければ……」


「王都の直前で終焉を迎えられると言いたいのだな?」


「はい」


「だが、そうなれば『堕ちた地』が王都に隣接することになる」


「そ、それは……」


 フローレス侯爵の顔が青ざめた。

 スタンピードが自然消滅した際に発生する大量の瘴気は、その地を人が長く足を踏み入れることができない「堕ちた地」へと変貌させる。

 もちろん、同時に「堕ちた地」はゴースト系の魔物の住みかともなるため、もしも王都シュドのすぐ側でスタンピードが自然消滅した場合には、シュドリー王国は遷都を求められることになる。


「リッカ、王国軍はどれぐらいの日数、アルファクラスのスタンピードを留められる?」


「王よ、申し訳ございません。アルファクラスのスタンピードを王国軍が日数で留めることはできません。最長でも数時間、最短なら――――」


「最短なら?」


「数分でしょう」


 リッカ宰相の言葉に、表情を浮かべることなくシュドルワ王が目を向けた。


「王国軍がもしかすると分単位でしかできないスタンピードを、勇者セシリアなら、数日留めて置けるというのか?」


「それを期待しております。ルッソ、勇者セシリアは今、どうしている?」


「ハッ。直近の報告によると、バトルシープ討伐後、セシリアと勇者小隊はスタシーに戻り、避難計画を予定通り進めております」


「そうか……」


 ルッソの言葉に短く返答したシュドルワ王は、目を閉じた。


 その王を、出席者たちは探るように見ていた。



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