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ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第一章 運命の扉

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追憶(39)焦り


「【ひこう】!」


 急ブレーキをかけ、【ひこう】のスキルを発動すると、水中に沈みこもうとしていた体を、空中で留めることができた。


(よし!)


 もう何度も往復を続けているが、この方向転換する瞬間だけは気を配っている。うっかりすると、四方に何もない海のど真ん中まで進みかねないからだ。


 いや、もっと注意しなければならないのは、戻る場合だ。


 トネリコの木が生える丘は、直径が数百メートルの範囲しかないから、失敗すると突き抜けて魔草原に突入することになるからね。


 なので、戻るときは、【かそく】のスピードを光速の0.1%に留めている。

 それでも秒速300キロ近いから、5秒で戻れるんだけど。

 さすがにここまで落とすと、魔草原に再突入することなくきちんと停まることができた。


 俺は、海面から1メートルぐらいのところで浮かんだまま、辺りを見渡した


 雲一つない青空は、海の青さと喧嘩することなく調和している。

 振り返ると、水平線のあたりにうっすらと島の影が見えて、ホッとした。

 島が見えなくなってしまうと、さらにスピードを落とさなければならないし、落とし過ぎると、【かそく】がキャンセルされた際に、魔草原の中で停まってしまうことも考えられるからね。


 結構、綱渡りなチャレンジを続けていることは理解しているが、これが望みを叶えるために必要なことだと思っているから怖くはなかった。


「【なおす】!」


 ボロボロになった手を、スキルを使って癒すと、即座に回復した。


 それにしても……


 最初、初めて【かそく】のスキルを使って得られた光速99%のスピードは、凄いという言葉で表現できるものではなかった。


 走り出す、という表現が正しいかどうか分からないけれど魔草原の端に立って、【かそく】のスキルを使い、手をだらんと下げて走り出せば、次の瞬間、俺は海の上にいた。


 なんじゃこりゃ?


 千分の1秒単位しか時間が経過していないから、こうなることは理解できても、感覚はついてきてくれない。


 何より――手が痛い!


【かんぱ】からは、【かそく】のスキルを発動する前に【無効】のスキルを使っておくように言われたが、さもありなん。

 もしも【無効】のスキルを使っていなければ、俺の手は魔草との摩擦で細切れになって、なくなっていたかもしれない。


 手が痛いのは、【無効】のスキルも魔草原突入でキャンセルするから。

 とはいえ、千分の1秒単位で魔草原を抜けているから、手がなくならずにすんでいるんじゃないかな?


 そして、最初に【かそく】で魔草原を一気に渡ったとき、ステータスを確認したらレベルがなんと200万以上、上がっていた。


『是、両手で魔草を触ったからです』


 どうやら【かんぱ】は、俺が片手で魔草を触った場合で計算していたようだ。片手で100万、両手なら200万、意味は分かる。


「【かんぱ】、両手だと何か問題があるかな?」


『留、わかりません』


「留」と答えているところを見ると、問題が出る可能性もある、ということか。

 まあ、今さらだ。

 それに、倍の魔草がこれで抜けるなら、リスクには目をつむりたい。


 島の半径は1,500キロ。魔草が50センチ間隔で生えていることを考えると、一直線上に生えている魔草の数は計算上、約3百万本。両手だったら600万本か。

 今、一回の【かそく】で、実際に抜けているのは両手で約200万本だけれど、6百万本全てを抜けていないのは、スピードがあまりにも早く、全ての魔草に触れることが難しいことと、直線上の完全な空白地帯を作るとイレギュラーが発生する恐れがあると【かんぱ】が警告してくれたから。


【かんぱ】の説明では、まだらに3本に1本程度の間隔で抜けば、魔草の干渉地帯の乱れも最小限に収められるのでは?、ということだった。

 両手で抜いていることも、二本の直線になるからそれは大きな支障を生まないのでは?、ということらしい。


 いずれも疑問形なのは、【かんぱ】が参照するアカシックレコードに、同じ事例が記録されていないから仕方がない。


 今は、最善の方法が取れていると信じて、進むだけだ!


(よし、やるか!!)


 今、進んできたところよりも、一メートルほど離れた場所に移動する。同じ場所で往復していたら、その場所の魔草は採り切ってなくなってしまうからね。


 俺は、スキルを発動させた。


「【かそく】!」


 そして、遠くに見える島に集中する。帰りは、行きよりも速度が遅いから大丈夫だが、それでも魔草原に再突入しないよう、意識を高めて置くことが大切だ。


 油断大敵。


「はっ!」


 小さく息を吐きだしてから俺は走り出した。

 瞬時に、ぶつかるように島の中に、いや魔草の中に俺は突っ込んでいった。



 ■□■□



 俺は、焦りを覚えていた。


(なぜだ!!!)


 生えない。ひらがなスキルが生えない。


 いや、生えているんだ、ゼロじゃない。


 でも……欲しいひらがなスキルは姿を見せてくれない。


 もう間もなく陽が落ちる。時刻は17時。


 日が昇る前から始めた【かそく】を使った魔草抜きチャレンジは、すでに14時間が経過しようとしていた。


 現在のステータスはこう。



 名前:ルイ

 種別:人族(異世人)

 年齢:11歳

 性別:男

 職業:■■■■


 レベル:3,000,742,608

 攻撃力:3,000,742,608

 魔力 :3,000,742,608

 防御力:3,000,742,608

 精神力:3,000,742,608

 運  :3,000,742,608



 すでに、レベルと全ステータスの値は、30億を越えた。

 もう、ぴったりになるような調整は諦めたので、少し見づらいが、とにかく数字だけ見れば信じられないレベルだと思う。


「【かんぱ】、この世界で最高のステータスの値は?」


『是、攻撃力が9,460,280のドラゴンです』


 うーん、どうやら俺のステータスは、この世界最高に至ったようだ。しかもぶっちぎりだ。


 だが……


 俺の目標は何も達成されていない!!


 これまで新しい、ひらがなスキルが生えたのは2個だけ。


 ここまでくると、ひらがなスキルが生える条件は、スキルが生えた中の何%という形じゃないことが分かる。


 たぶん、経過時間と増えたレベル、そして確率が組み合わさっているんじゃないだろうか?


 考えてみると、これまで一日に、ひらがなスキルが2個生えたことは一度もなかった。

 レベルは25,000上げたことがあったから、スキルが入手できる機会は1,250回あった。

 それでも一日に2個生えたことはなかった。


 今日はすでに、スキルが生える機会を1億5千万回以上、得ている。

 本当なら一日に1個生えれば十分な確率でも、億以上の回数を経たから、なんとか2個生えてくれたと考えた方がいいんじゃないかという気がする。


 ちなみに、増えたひらがなスキルは【かくれる】と【まっぷ】。【かくれる】は隠れる、【まっぷ】は地図の意味を持つスキルだ。師匠を救うためには役立たない。


 残る時間は……3時間か。


(なぜ、なぜだ。なぜ生えない!)


 俺は焦りを覚えながらも必死に【かそく】のスキルを発動させ、ひたすら魔草抜きチャレンジを続けていた。



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