表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第一章 運命の扉

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/97

【閑話】膝枕



 side ラヴィン



「ありがとうルイ。私もあなたと――――」


 最後の言葉――「私もあなたと、ずっと一緒にいたかった」という言葉を、私はどうしてもルイに告げることができなかった。

 別れを迎えることは、もう私の中で整理がついていたはずだったのに……


 でも、ここで()()()の言葉で泣き言をいったらルイを苦しめることになる。もしかすると、ルイは私が何を言おうとしたのか気がついたかもしれないけれど、それでも私は、(すんで)のところで、その言葉を押しとどめた。


 ――ルイ……


 愛しさに胸が張り裂けそうになりながら、そのまま私は「休眠」に入った。


 走馬灯のように、ルイを膝枕したときの光景が次々と浮かんでくる…………



 ■□■□



 ルイが、魔草原で倒れたのを見たとき、私は大きくドキリと、ないはずの心臓が跳ね上がったのが分かった。


 ――なぜ、周囲の警戒をしていなかったのか!!


 そう、瞬時に【察知】のスキルで探ると、ルイの向こうに大きな魔力が感知できた。


 ルイに、「油断しちゃダメ」と言い続けたきたのに……


 しかも、ルイの魔力が急激に減少し始めたことも分かった。


 原因?


 分からない。いや、魔力を減らす、いや急激に魔力を吸い取ろうとしている何かがルイの向こう側にいることは分かる。でも、その減らしている何かが何なのかが分からない。


 私は駆け出した。


 魔草原のギリギリの位置で踏みとどまる。ここが魔力が吸い取られない限界地点だ。


「ステータスよ!!」


 ルイに叫ぶと、ルイの目が動くのが見えた。


 ――良かった!


 まだ意識を失っていない。


「今すぐ、ポーションを飲んで!!」


 だが、ルイの体が反応することはない。


 ――まずい、まずい、まずい、まずい!!!!


 魔力を失った状態で魔草原に取り残されたらどうなるのか?


 考えるまでもない!


 ルイの魔力を確認するとガリガリと音を立てるかのように削られているのが分かった。もう1,000を切って、さらに激しく減っている。


「ルイ!!!!」


 もう一度、大声で叫んだ私は、【蕩尽とうじん】のスキルを使った。


 私の体が光に包まれたのが分かる。


 蕩尽とは、財産をすっかり使い果たすことを意味する。このスキルは、残った魔力を全て放出して、その魔力で身を纏うスキルだ。魔力を奪う【ドレイン】のようなスキルに対抗するためのスキルだ。

 普通は、スキルを使用するのと同時に魔力ポーションで魔力を補うのだが、私は魔力を補えない。全魔力を放出する、という意味合いを私は理解している。


 でも、残された魔力が少ない私にとって、【じったい】で作られた実体化させた現身(うつしみ)は絶対に失ってはいけなかった。


 だって、【じったい】のスキルは一日に一度しか使えないスキルだったから。今、【じったい】のスキルが霧散すれば、それはルイの死を意味することになる。

 だから、全魔力を消費するしてでも、【じったい】のスキルがキャンセルされることを防がなければならなかった。


 もちろん、後悔はない。


 放っておいても、長くない時間のあとで私はこの世界に別れを告げる。私にとって、その時間の長さに意味を感じることはなかった。


 私に残された時間とルイの命、どちらが大切なのか、言うまでもない。


 全放出した魔力を纏ってから駆け出した私は、一瞬、ルイの向こう側に小さな銀色の魔草が生えているのを見た。だが、その銀色の芽のような小さな魔草は、スッーっと姿が消え始める。


「かんてい!」


 だが、スキルが発動しない。


 ――そうだ、魔力を全放出したばかりだった!


 それに、今、一番大切なのはルイを救うこと。


 私は、原因らしきその銀色の芽の正体を探ることを諦め、ルイの元へと全力で向かった。



 ■□■□



 ――間に合った!!


 ルイの体を抱きしめ、魔草原から急いで戻った私は、魔草の影響を受ける境界線を越えてから、ようやくホッとできた。


 なんとか、【じったい】を失わずにルイを救出できた。


 身に纏っていたはずの魔力は、ほんの僅かな光を残していたが、ルイを地面に降ろして膝枕の体勢にしたとき、その光は失われた。


 ――良かった……


 本当にギリギリだった。


 ルイが倒れた場所まで、たぶん20メートルぐらいだっただろうか?

 往復に要した時間は数秒。


 それでもたぶん、ルイの魔力はすでに0になっているはず。


 私は、魔力を使い切った今「かんてい」が使えないから、ルイの状態は分からないけれど、その胸は確かにゆっくりと動いていたし、首筋を触って体温が失われていないことも確認できた。


 魔力は、ルイの場合、私とは違いこのまま寝かせていれば少しずつ回復する。大丈夫だ。


 心が落ち着いてきたのが分かる。


 まもなく私はこの世界から消滅することになるが、不思議と心は温かい何かが溢れていた。


 ルイを守れた。


 その対価としてこの身を差し出せたのなら、私にとってそれは十分な対価だ。


 目を閉じているルイを見ながら、私はそっとその頬に手を当てた。


 ――ああ……


 私は今、幸せを感じている。だが、同時に大きな悲しみも心の中に膨らもうとしていることを感じていた。


 終わりを迎えようとした私が、ルイのために役に立てたことは、これ以上ない喜びだ。だが、私はこれからルイに悲しみを経験させることになる。


 だから……目覚めたルイには、ある程度の話をしておかなければならない。


 ルイを送り出してから、ひっそりと消滅の時を迎えることはもうできない。


 だったら、ルイができるだけ負担を覚えないような別れが必要だ。


 私は、そっとルイの頭を撫でながら、これから必要なことを考えていた。



 ■□■□



 まず準備が必要なのは、ルイが、この世界で困らないようにすること。


 魔力を失った今の私は、ほとんどのスキルが使えなくなっている。だからルイのために準備できるものは多くはないけれど……


 まずは、スキルを渡そう。


 私が持つひらがなスキル【じょうと】は、普通のスキルを譲渡するには魔力が必要だから、魔力を失った今の私には使えない。でも、同じ異世人であるルイならば、譲渡する対象を「ひらがなスキル」にすれば、魔力を使わずに渡せる。


 私が、今持つひらがなスキルは全部で7つだ。


【おんがく】はギブスキルだから、これは渡すことができない。それと【じょうと】も渡すときに使うからこれもダメだし、まだ消滅できないから【じったい】も渡せない。


 妹を救うときに手に入れた【すくう】は、使い捨てスキルだったから残っていない。


 残されたひらがなスキルは【しゅうのう】【かんてい】【つうはん】【なおす】の4つ。


【しゅうのう】は、私が数千年で貯め込んだものが入っているから、これはルイに役立つはず。

 ルイは普通の【鑑定】スキルを★5レベルで持っているけれど、ひらがなスキルの【かんてい】は、視れるレベルが全く異なるから、これも役立ってくれる。

【つうはん】は考えるまでもなく、便利なスキルだ。

【なおす】は、「治す」じゃなく「直す」なのだが、ルイが早く気がついてくれると良いのだけれど…………


 この四つのスキルが、ルイがこれからこの世界で生きていくのに、力になってくれることを祈っておこう。


 もう一つの準備は、ルイを転移させる場所。


 やはり、転移石を使って私の故郷「ユヌフェ大陸」に向かわせるのがベストだと思う。


 転移石を使った最も安全な転移ができるのは、満月が三つ揃う夜。

 ちょうど一か月後だ。


【じったい】のスキルで作られた私の現身は一日しかもたないから、その時まで保たせることは不可能だが方法は残されている。


 休眠だ。


 今の私の現身に残されている時間は、日付が変わるまで。だがいったん休眠に入れば中断して、再び覚醒したときから、残された時間を刻んでくれる。


 このあと、ルイがどれだけの時間で気がついてくれるかは分からないが、意識を失っているのは、魔力が尽きたからだから、一定の魔力が回復すれば目覚めるはずだ。


 たぶん、数時間? 最大でも8時間あれば大丈夫なはず。


 ということは、最後の夜、ルイとの時間を数時間はとることができる。転移させる前、最後のメッセージをルイに渡すには十分な時間だ。


 ――あと、考えておいた方が良いことは……


 私は、ルイの頭を膝に乗せたまま、いつまでもその寝顔をじっと見つめていた――――



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ