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ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第一章 運命の扉

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追憶(35)師匠のステータス


 師匠から渡されたスキルの確認を終えた俺は、最後に、トネリコの木――師匠を鑑定することにした。


 断りを入れずに相手を鑑定することは、あまり褒められた行為じゃないことは知っている。国によっては、処罰の対象となることもあると、毎日のレッスンの中で師匠が教えてくれたことを俺は思い出していた。


 でも、残り一か月、師匠を救うために必要な情報が、師匠のステータスに残されているかもしれない。


「ふぅ」


 ちょっとだけ、緊張する。


 祠から離れて、俺はトネリコの木に近づき、手を触れた。


 ――エッチね!


 なぜか、師匠の笑い声が聞こえたような気がしたが、気のせいだろう。


 でも一応、「ごめんなさい」と心の中で謝ってから、目をつぶってスキルを発動させる。


(かんてい!)


 ひらがなスキルの【かんてい】が発動すると、師匠のステータスが俺の脳裏に浮かんだ。



 名前:ラヴィン・フェ・デュ・ヴェンロイン

 種別:エルフ族(異世人)【神樹】

 年齢:12,209歳

 性別:女

 職業:芸術家


 レベル:987

 攻撃力:61,522

 魔力 :0

 防御力:58.290

 精神力:67,359

 運  :20


 スキル:【おんがく】、【言語理解(★★★★)】、【収穫(★★★★)】、【調薬(★★★★★)】、【鞭術(★★★★)】、【回復(★★★★★)】、【料理(★★★★★)】、【察知(★★★★★)】、【火魔法(★★★★)】、【清掃(★★★★★)】、【水魔法(★★★★)】、【土魔法(★★★★)】、【物理耐性(★★★★)】、【じったい】、【魔法耐性(★★★★★)】、【風魔法(★★★★★)】、【魅了(★★★★)】、【呪い耐性(★★★★)】、【剣術(★★★★★)】、【隕石(★★★★)】、【威圧(★★★★)】、【治療(★★★★★)】、【蕩尽とうじん(★★★★★)】、【縮地(★★★★)】、【弓術(★★★★★)】【じょうと】



「そうか……」


 俺の真っ先に確認したのは、魔力が「0」と表示されていたこと。


 前に師匠のステータスを尋ねたことがある。

 レベルはその時に言っていた数値のままで、ステータスが8万くらいと言っていたのは、魔力を指していたのだと思う。他は6~7万のようだし。

 師匠は、魔法のスキルが多いようだから、戦士タイプというより魔術師タイプだったのかも。


 そして、大事なことは、この世界で「生命力」「HP」というような項目は、ステータスの中に現れていないということだ。俺のステータスにもそれはなかったけれど、ひらがなスキルの「かんてい」で確認すればもしかするとと思ったが、違ったようだ。

 すでに魔力が0になっている師匠は、その魔力が回復しないのであれば、あとはステータスに現れない生命力を削っていってしまうのだろう。


 師匠は、一か月後の夜に消滅の時を迎える、と言っていた。たぶん、日付が変わるときが、その時なんじゃないかと思う。


 師匠の魔力が「0」であることを確認した俺は、確かにタイムリミットが迫っていることが実感できた。


 それにしても……


 師匠のスキルは、全部で26。全てが★4か★5だらけなのは、さすがだ。


【蕩尽】は、読み方すら分からなかったので【かんてい】で調べてみた。


(かんてい!)



【蕩尽】使用魔力:全

 全魔力を消費して魔力で全身を覆い、あらゆる攻撃から心身ともに防御する。身に纏った魔力が全て失われるまで効果は継続する。



 ドキッ!


 その説明文を読んだとき、俺は心臓が跳ねたのが分かった。


(これか……!)


 師匠が魔力を全て失った原因は、この【蕩尽】のスキルで身を守って俺を魔草原から引きずり出してくれたからだ!


 このスキルは防御スキルとして優秀なのだろう。そして普通だったら、魔力を全消費したとしても、すぐに魔力ポーションで補えば問題は起きない。

 だが……魔力を回復させらることができなくなっていた師匠にとっては、致命傷だった。


 そして――師匠はなぜ、致命傷になることを知りながら、このスキルを使ったのか?


 俺を救うためだ。


 魔草原で意識を失った俺を救うため、師匠は現身うつしみを消滅させられるわけにいかなかった。だから、師匠は全魔力を消費して自身の現身を守りながら、必死に俺を魔草原から連れ出した、ということか。


 ドクン、ドクン、ドクン……


 胸がバクバクし始めたが、俺は大きく息を吸い込んだ。


 今は後悔する時間すら惜しい。

 目を閉じ、ぐっと歯を食いしばって、心を落ち着かせる。


(……よし)


 何とか、心を落ち着かせることに成功した俺は、確認作業を続けることにした。


 ひらがなスキルは、俺が渡された【つうはん】【かんてい】【しゅうのう(2)】【なおす】を除けば【おんがく】と【じょうと】【じったい】の三つ。


 俺の場合、レベル20ごとに必ず1つスキルが生えたが、それは【ぷらすわん】のひらがなスキルのお陰だ。


 師匠のレベルを考えると、26は多いようにも思える。


 いや、違うか……


 俺に四つのひらがなスキルを渡したことを考えれば、26じゃなく、30のスキルを持っていたということだ。


 20レベルたびにスキル獲得のチャンスがあるけれど、100を超えると10%程度だったっけ? 普通に考えるとステータスレベルが987あっても、期待値から考えると10個前後のはずだ。運も20と低いようだし。


 師匠はたぶん、20レベルたびに訪れるスキル獲得のチャンス以外でも、スキルを手に入れていたんじゃないかな。


 ……それにしても


(1万2千歳か)


 年齢に関わることを考えたとき、師匠から受けたプレッシャーを俺は思い出して、少しだけ笑ってしまった。


 まあ、でも俺にはその年齢がマイナスとなることは何もない。師匠は師匠だ。年齢は懐の深さとイコールという知識が思い浮かぶ。


 名前を見ると、フェとかデュと書かれていて長いから、師匠は貴族だったのかもしれない。


 あと、気になることは種別のところに表示されている【神樹】ぐらいか。

 これは、スキルの誓約でこのトネリコの木になったことを意味しているんだろうな。


 パチン


 俺は、両手で顔を叩いた。


 もう十分だ。あとは目標にどうやって近づくのかを考えながら、しっかりと魔草抜きチャレンジを行っていこう!


「よし、頑張るか!」


 俺は、丘を降りて、魔草原へと向かった。



 ■□■□



 夕方。


 今日のチャレンジを終えた俺は、部屋へと戻った。


 夕食と入浴を済ませてから、寝室のベットに寝転んで木が組み合わさった天井を見上げた。

 サイドテーブルに置いてある魔道具の中で「灯り」が揺れている。


 今日は順調に、予定通り目標の10,000本を達成できた。


 かかった時間は7時間半。


 周囲への警戒は、怠らなかったはず。


 だから、結構、いいペースだったと思う。


 ただ、今日、生えてくれた500のスキルは、生活スキルと特殊スキル、防御スキルだけ。それも、新しいスキルはゼロ。


「ひらがなスキル」はおろか、「攻撃スキル」も生えなかった。


(うーん)


 確率が偏ることは分かっている。


 ステータスレベルが10,000上がった場合のひらがなスキルが出現する期待値は、0.4%という確率で考えると2個。0個でも、大きな偏りとは言えない。

 気になるのは、新しいスキルが生えなかったこと、重複したスキルが生活スキルと特殊スキル、防御スキルだったこと、か。


 まあ、こればっかりは気にしても仕方がない。


(それにしても……)


「運」のステータスは、どこに関わっているのだろうか?


 師匠の「運」のステータスは20だった。一方、俺の「運」のステータスはレベルと同じで64,314。


 運が100を超えることは、非常に稀だったはずだから、俺の「運」のステータスがあれば、「犬も歩けば棒に当たる」以上の確率で、いろいろ「ひらがなスキル」が生えてくれてもよさそうなものだが……


「まあ、いいか……」


 とにかく、焦るのが一番よくない。


 ハプニングに対する対応が遅れそうだし。


 俺は、少しの間、木が組み合わさった天井を見てから目をつぶり、明日に備えて就寝することにした。



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