表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第一章 運命の扉

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/22

追憶(1)召喚



 ▼1,068年前のできごと



「%%$#”’’」


 気がつくと、俺は広い部屋にいた。


(……?? ここは?)


 聞き取れない声に、辺りを見渡す。

 広い円形の床に、俺の他に若い男女が一組、そして30メートルほど離れたところをぐるりと取り囲む大勢の鎧を着た人々。まるで中世の騎士のような恰好だ。ざっと見渡すと数十人はいる。


(手にしているのは槍?)


 正面でこちらを見ているのは、長い杖を手にした年配の男性。背は高くなく、口ひげが偉そうな角度で跳ねている。

 その男性が後ろを振り向いて、丸い水晶のようなものを受け取ると、その水晶に杖を当てて何かを呟き始めた。


「&###%”!!”&&」


 やはり聞き取れない言葉だ。


(それにしても……)


 何が起きたのかが理解できない。


 自分が誰なのかも、ここがどこなのかも分からない。なぜ、こんなところに自分がいるのかが分からない。


 分からないことだらけだ。


「――――これで言葉が分かるかね? 其方そなたたちに『翻訳』の魔法をかけたのだが?」


 さっきから水晶に何かを呟いていた偉そうな男性が、俺たちに話しかけてきた。


 おお、何を言っているか理解できる。ただ……


「分かりますけど……いったい何が起きているんですか?」


「魔法って言っていたし、これって異世界転移、ってやつなんじゃない?」


 隣の若い男女の言葉を聞いた俺は、なんとなく事情を把握した。


 なるほど、これは異世界召喚の王道パターンということか?

 召喚で異世界から人を呼び寄せる儀式で、俺たちが選ばれたということがなんとなくイメージで浮かび上がる。


 何気なく座っている床を見ると、召喚陣という言葉が思い浮かんだ。直径10メートルぐらいだろうか? 複雑な円形の模様が描かれているのが分かった。


 とても正気とは思えない状況が脳裏に浮かんだが、不思議と抵抗感がない。


 目の前の男性が、召喚を行った召喚士か魔術師のような人。そして周囲にいるのが警護の騎士たち。

 さっき、水晶に手を当てていたのは、言語を通じさせるための「翻訳」という魔法を俺たちにかけた、ということだ。


 しかし、なぜそんなことが思いつくのかが分からない。


(いや、? そうか……)


 俺は異世界のライトノベルの小説をいろいろ読んでいたことを唐突に思い出していた。ただ、その読んだはずの小説の詳しい内容は思い浮かばないし、読んでいた自分の姿も思い浮かぶことはないが……


「その通り。其方そなたたちを、我がルウェスト王国が召喚術で呼び寄せさせてもらった。私は王国の筆頭召喚士、ブリュノだ。今、『翻訳』の魔法で言葉が通じるようにしたところだ」


 その言葉に、少年少女のペアが黙る。


「…………それで、私たちに何をさせたいんですか?魔王討伐? 他の国との戦争? 子どもも呼んで何がしたいの?」


(子ども?)


 少女が俺を見てから言った言葉に、ふと気がつき、改めて自分の手を見ると、それは小さかった。確かに少年のようなサイズと言って良いかも。


(ん??)


 自分が誰なのかを示す記憶はないが、自分が子どもと呼ばれるようなレベルの年齢でなかったことだけは分かる。


 (だったら、俺は異世界転移ではなく、異世界転生をしたのか?)


 なんとなく、その方がしっくりくるような気がするが……


(いや……まてよ?)


 転生なら、赤ん坊からスタートするのが普通なんじゃないか?


 だが、俺は頭を軽く振った。


(待て待て……こんな状況をこれだけすんなり受け止めていること自体がおかしいんじゃないだろうか?)


 少なくとも自分がパニックを起こしていないことは確かだが、それが普通でないことも理解している。


 いろいろ考えていた俺だったが――


「――――スタンピードを防いでもらいたい」


 召喚士ブリュノの言葉に、意識を戻されていた。


「スタンピード? たくさんの魔物が街を襲う、ってやつのこと?」


 少女がコテンと首を傾げる。

 俺もその言葉の意味は分かる。たぶんそのスタンピードだ。


「そうだ」


「魔王や悪魔の討伐じゃなくて、たくさんの魔物の討伐のために、わざわざ召喚したの?」


 確かに、誰かが召喚で異世界人を呼ぶというパターンの物語で、「スタンピード対策」っていうのは、思い出すことができない。ほとんどが、魔王や悪魔、あるいは神と戦うためといったパターンか、それらと戦うと見せかけて他国の侵略のためというパターンのどちらかが多かった、と思う。

 それか、特に目的を持たずに転生させられたとか。


 まあ、小説と現実とでは違うのだろうけれど……


「其方たちの世界では、蝗害こうがいというのがあるのだろう?」


「コウガイ? 大気や水を汚染する公害のこと? それなら知っているわ」


 少女が「だから何?」という表情を浮かべて答えていた。


「ああ、違う。その公害ではない。私が今言ったのはイナゴの害のことだ」


「イナゴの害で蝗害? ああ、分かるわ……それで?」


 少女が不思議そうな顔で尋ねる。


「100匹のイナゴを退治するならどうする?」


「それは……網で捕まえるか、薬を撒くか、かしら?」


「そうだな。人の手で、十分対応できるだろう――では、毎年数千兆匹のイナゴが襲ってきたらどうする?」


「数千兆匹!! しかも毎年?」


 さすがに少女が驚いた顔を見せた。俺もびっくりだ。


「……その場所は放棄するしかないでしょう?」


「そういうことだ。この世界にとってスタンピードは、その数千兆匹のイナゴが襲ってくる、という事象に等しいのだ。対応できる力が異世人にあるなら――」


異世人(いせいじん)?」


「異世人とは、異世界から召喚した者たちのことを言う。そして、招かれた異世人は、この世界の人々にない力を持つことが多い。それこそ、スタンピードを鎮めるような力もな。だったら、その力に頼るのも道理ではないか?」


 異世界に召喚されると特別な力が、というのはよくある話だ。実際、この世界でもそうなのだろう。


「…………そうなのかもしれないわね」


 渋々、少女が頷いた。


 確かに、毎年、数千兆匹のイナゴが襲ってくるような場所で生活することは不可能だ。地球でも、アメリカで発生した数兆匹のイナゴが東アフリカからインドまで渡って甚大な被害が出たという歴史があったはず。

 数千兆匹のイナゴは、俺の知識を探しても、対応できる方法がなかった。

 もしも、日本にいて毎年数千兆匹のイナゴが襲ってくるなら、日本での農業が成り立たないのは明らかだし、日本で永住することは難しくなる。


「其方たちを呼んだことに意味があることを理解してもらえたなら、さっそくだが、この世界のことを説明するとしようか」


 そして召喚士ブリュノが俺たちに伝えたのは……



 ■□■□



 この大陸――ボクゥゲンス大陸には数十の国があって、人口が10万を超える都市は全部で500以上ある。


 俺たちが呼ばれたのは、大陸の西に位置するルウェスト王国。ボクゥゲンス大陸の中では2番目に大きい国で、10万を超える都市が47あり、人口は8,000万人という大国だそうだ。


 そして、この世界には他にも数多くの大陸が存在している。


 ボクゥゲンス大陸クラスの大きな大陸は、ブリュノが知るだけでその数は5つ。というか、ブリュノも情報として他の大陸の存在は知っていても、実際に訪れたことはない、ということだった。


 なぜ、他の大陸を訪れることがないのか?


 それは、海を渡る手段が限られているからなのと、大陸同士の距離が果てしなく遠いため。


 これまでこの世界に訪れたことがある「異世人」の言葉で表現すると、この大陸からもっとも近い大陸まで50万キロメートルの距離があるらしい。ちなみに、この大陸での距離の単位は「ヤド」でキロの10分の1ぐらい。なので500万ヤドということだった。


(50万キロか……)


 確かに、めちゃくちゃ遠い。


 地球一周が4万キロぐらいだったはず。そして、地球から月までの距離が40万キロ近くだったから、50万キロを踏破するには月よりも遠いところまで行かなければならないとういことだ。


 簡単に到達できる距離でないことが分かる。


 ちなみにこの大陸は、横幅が5万キロ、縦幅が3万キロらしいので、これもまたバカでかい。地球丸々1個分の広さと考えてよい。


 どうやら、この星は地球よりも遥かに大きいサイズのようだ。


 俺の知識を探ると、元の世界で一番大きな太陽系の惑星、木星が一周44万キロ、太陽でもその10倍の440万キロだった。


 もっとも、ここが異世界ということを考えると、地球での常識が当てはまらないかもしれない。この世界が実は、球形のような星ではなく、平面の世界ということも考えられる。


 なぜなら……


 さっき、この世界には数多くの大陸があって、一番近い隣の大陸まで50万キロと言っていた。

 ということは、もしもここが球体の星ならば、その円周は1億キロほどあってもおかしくはないことになる。

 もしも太陽よりも大きい星だったら、とんでもない重力になるはず。計算式も浮かんでくる。


 まあ、異世界ならば俺が知る科学の知識や物理法則が当てはまらない、ということもあるのだろうが……


 その時――俺の脳裏に衝撃が走った。


(いや、待て? 俺は今何を考えていた? 地球?木星?太陽?……そうだ、俺がいたのは地球だ!)


 分断したような知識を、次々と思い出していた。


 そう、召喚士ブリュノの話を聞きながら、自然と「地球」という言葉が思い浮かび、そしてその「地球」が前にいた世界であることも「日本」という国にいたことも、自分の中で理解していることが分かる。


 木星や太陽が大きいことは誰しもが知っているが、その円周をどれだけの人が知っているだろうか?


 俺はたぶん、科学や宇宙といった知識を持っていたんじゃないか?


 そういえば、さっき、地球で過去に起きた最大の蝗害についても知識が思い浮かんでいた。「蝗害」という言葉にも違和感がなかった。


(俺は……誰なんだ?)


 ズキン


 自分のことを考えると、少し、頭が痛んだ。


(これは……もしかして、思い出すことを拒否されている?)


 ズキン


 やはり、痛みでブロックされているように感じる。考えてはいけないようだ。


 たぶん俺をこの世界に召喚させた神か悪魔のような存在が、自分のことに関する記憶を知られないようにしているなら、そこにも何かの意味がある、ということだ。


 考えても痛みでしか返ってこないなら、無理はしない方が良い。


(まあ、いいか。それよりも……)


 召喚士ブリュノの話の中で、俺がもっとも興味を引かれたのは、この世界が魔法で科学を補う世界ということだった。


 そう……


(これって……ファンタジーだ!!)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ