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ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第一章 運命の扉

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追憶(26)将来の夢



(どうしたんだろう、師匠?)


「ドラゴンって、戦闘民族なんですか?」


「そ、そうよ。いえ、ドラゴンの中に、戦いが好きな子がいるって感じかしら?」


 相変わらず、きょどっている師匠。でも、可愛い。


「人と同じなんですね?」


「そう、そういうこと。ドラゴンはちょっと極端だったけれど、50,000あれば、世界の上位100人に入れる。そうなれば、どの種族に対しても大きい顔ができるわよ」


 どうやらそこまでステータスが上がれば、この世界の人族――――魔人族や獣人族、魔人族、妖精族など全ての人族のランキングで上位100は間違いないから、安心して暮らしていける、ということか。


(……世界の上位100人?)


 この世界の人口は、千億人ほどいるらしいから、上位100人なら10億分の1だ。世界の上位100人には、まず会うことがない確率なんじゃないかな?


 リスクを減らすのは大事だけれど、ステータス50,000まで必要? と思ったが、「で、でも、せめて少年という年齢になってから旅した方がいいわよ?」と言われて、それもそうか、と納得した。


 どうやら師匠も、随分と心配性のようだ。


「石橋を渡るときは、叩いて叩いて叩いて叩いてから、その上で超音波を使って非破壊検査を行って異常がないかを確かめるの」と言うのが師匠の座右の銘らしい。


「叩きすぎたせいで、異常が起きてたらどうするんですか?」と師匠に尋ねたら「もちろん、渡らないわ。そして、大丈夫な新しい石橋を隣に作るわ」と答えていた。


 うん、慎重な師匠らしい答えだ。


 俺の現在のレベル1,200で、一日に抜ける魔草の数は5時間の魔草抜きチャレンジで20。

 師匠からはステータスが5,000を越えれば、力を入れればすぐに抜けるらしい。そうなったら、一日に何本でも抜くことができるようになる。


 ただ、魔草を抜いたあと、そこに次の魔草が生えるのは一晩を置いた翌朝。

 草が成長する時間を考えると、翌朝、というのは十分すぎるほど早いが、それはここがダンジョンだから。


 そして、ダンジョンだけに、一日に抜く魔草の数は50本までと師匠に言われていてる。


 まとまって抜きすぎると、魔力の空白地点を作ることになるし、間をあけて抜くのも魔草が持つ魔力干渉にイレギュラーを生む恐れがあるらしい。


 もちろん、何も影響がない可能性もあるのだけれど、師匠の「かんてい」のひらがなスキルを使っても、その答えが導きだせなかったようだ。


 なので、一日のレベルアップは50を限度にするつもりだが、その場合、レベル50,000に到達するのは約4~5年後になる。まあ、最初の予定通りということだ。


 4~5年と言う時間を考えると、長いかもしれないが俺も12~13歳になれる。この世界で12歳は、種族によっては、十分独り立ちしているらしいし。


 何より、師匠と一緒に暮らせるこの環境は、何物にも代えがたいのも確かだ。今となっては、いつまでも師匠とここで暮らしたい、という気持ちも芽生え始めている。


 でも師匠は、少し悲しげな表情で「それじゃだめよ」と言う。


 生きていく中で、足を止める時間があってもいいけれど、足を止めっぱなしでは人は成長しないし、その人のためにならない、と師匠は言っていた。


 何より、師匠は俺が成長するのを楽しみにしているのだと思う。


 だから俺は、師匠も満足いくまで成長できたなら、この島を出て世界中を回ってみようと思っている。せっかく異世界に来たのだからと、俺の知識も旅を後押ししている。


 本当なら師匠と一緒に旅できるのが一番いいのだけれど、今の師匠の本体は「木」だから動けない。

 だから、俺は世界を旅しながら、一年に一度はこの島に戻ってきて、師匠に旅の様子を話そうと考えている。


 師匠は、突然、現れた俺のことを、面倒がらずに受け入れてくれた。

 もしも、師匠と出会わずに、島をうろついていたら、今頃、魔草原の中で髑髏となっていたのは間違いない。

 それに師匠は、これからこの異世界で生きていくための教育までしてくれている。

 毎日の暖かい食事も、訓練で掛けてくれる厳しい声も温かい声も、俺が生きていることを実感させてくれる。嬉しいことも辛いことも、全ては師匠と共に過ごした毎日で得られたものだ。


 そして、師匠と一緒に寝ることで得られる夢と安らぎも与えてくれた。


 記憶がなく、召喚時に無能者と嘲りを受けて追放された俺が、今、こうして生きていられるのも、楽しく毎日を過ごせているのも、全て全て、すべて師匠のお陰だ。


 師匠には、深い深い感謝しかない。


「分かりました、じゃあ師匠。5万を目指して頑張ります!」


 俺は、師匠をしっかりと見つめ、そして元気よく答えた。


 師匠が「ふふふ」と笑った。俺を見つめる視線に、僅かな翳りが見える。


 どういった誓約で師匠が木になったのか話してくれないから分からないが、時折現れるこの師匠の目の翳りに俺は気づいている。


 師匠にその翳りが現れるのは、「ふふふ」と微笑んで答えないときか、師匠の未来に触れるような話のとき。


 俺が今でも忘れらない師匠との会話がある。初日の夜、一緒にお風呂に入らされたときの師匠の言葉だ。


『私もルイから温もりをもらっている。この温もりはもう二度と手にすることができないと諦めていたわ。私がこの世界に来た時から……いえ、昔の話は今はやめておきましょう。ルイ。だから、これからも一緒に頑張りましょうね』


 師匠が言った「これからも一緒に頑張りましょうね」という言葉は、俺にだけ向けられたものでない。あの言葉は師匠自身にも向いていた。


 間違いない。たぶん、師匠が「木になった」スキルの誓約、とやらがそこに関わっている。


 その誓約は師匠が承知の上で結んだのだろうけれど、決して望んだものではなかったのではないだろうか?


 だから、いつか俺がその誓約を解いて、一緒に世界を旅できれば恩返しになると思っている。


 頑張ろう。



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