追憶(25)ひらがなスキル
「ひらがなスキル」は、全部で4つ。
【ぷらすわん】、【しゅうのう】、【ぎそう】、【かいてき】だ。
「ぷらすわん」はギブスキルで、ステータスの一部として俺から離れることはないスキルということだった。師匠であれば「おんがく」が該当する。
そしてその働きは、魔物を一匹倒すと全てが一つ足される、というもの。足される対象は、レベルとステータス、そしてスキルの★。
文字通り、「+1」ということ。
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「師匠、そういえば、『ぷらすわん』が発動する条件の対象は、魔物だけなんですか?」
「魔物だけ、というと他に何があるのかしら?」
「例えば、虫は?」
「ああ、そういうことね。残念だけれど、ほとんどの虫は、対象外みたい。厳密にいうと、スキルを使える虫は対象になるようだけれど……スキルが使える虫は魔物と言ってもよいから、普通の虫は対象外と認識しておけばよいのじゃないかしら?」
「スキルが使える生き物、というと……じゃあ、人は?」
「人も対象ね。人を倒しても、いえ正しく言えば『人を殺せば』経験値が手に入るわ。ルイなら一人を殺せばプラス1ということね」
師匠は少しおどけた口調で言ったが、その目は真剣だった。
なぜ、師匠が真剣な目になっているのか、そんなことは考えなくても分かる。
「……大丈夫です。俺は殺人鬼じゃないし、人を殺して成長しようとは思っていませんから」
「ふふふ。分かっているわ、ルイがそんなことを考えていないことは。ただ、『強奪』のように、スキルを奪うことができるスキルもあるわ。自分が揮える力は、何のためにあるのか、それは忘れないで欲しいわ」
俺は、師匠の目をまっすぐに見てしっかりと頷いた。
「はい」
力を得れば、その力を使いたくなるだろう。そして、その力を揮う相手のことを考えなくなった時、それは人々から排除される対象として認識されるということだ。
知らず知らずのうちに疎まれることがないよう、今、師匠が言った「自分が揮える力は、何のためにあるのか」という言葉は、深く心に刻み込んでおこう。
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次に「しゅうのう」は、「収納」スキルの上位バージョン。
容量は無制限(元の世界で言うと、太陽系の広さぐらいあるそう。無制限でいいだろう)、経過時間の加速や減速、停止もできる。
俺のレベルを急激に上げることができたのも、「しゅうのう」に師匠が作った魔力ポーションを収納しておいたから。
魔力が切れるタイミングで、魔草原からいちいち脱出せずにチャレンジを継続できたのは大きかった。
もし、師匠の作った魔力ポーションを持ち歩くことができなければ、俺のレベルはまだ600ぐらいだっただろう。
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「師匠、師匠も『しゅうのう』のひらがなスキルを持っているんですよね?」
「ええ。持っているわ」
「『しゅうのう』に魔力ポーションを入れていれば、実体化した状態で魔草原を抜けることもできるんじゃないんですか?」
「残念だけれど、それは無理ね。『じったい』で作り出した実体は、確かに魔力1しか使っていないけれど、魔草原に入れば、即座に0になってしまうわ。0になければ『じったい』のスキルが解除されたことになるから魔力ポーションを呑むことができないの」
「なるほど」
「一応、『維持』という特殊スキルがあるから、それを併用すれば、『じったい』スキルの解除を防げるけれど、『維持』のスキルは魔力を膨大に使うし、魔草原では『維持』を維持していくための魔力も魔草たちに奪われるから」
そうか。物事を単純に考えて行動すると、大やけどを負わされることもあるということだろう。
ひらがなスキルは★5状態だから、なんでもできそうだけれど、そうではないということを忘れてはいけないな。
気を付けよう。
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「ぎそう」は、「偽装」スキルのこれも上位バージョン。
「ぎそう」で偽装すれば、師匠が持つひらがなスキルの「かんてい」でも使われない限り、他人から見られることはない。
ただ、普通の「鑑定」スキルでも★5だった場合、今の「精神力」のステータスの値では、偽装した内容を見抜かれることはないが、偽装していることは気がつかれてしまうから注意が必要と言われた。
精神力は、もっと上げないとダメだな。
それと、「ぎそう」のひらがなスキルで偽装できるのは自分のステータス関係だけではない。
持ち物も、連れ歩くペットの姿も、さらに自分の実際の見た目も変えることができる。いわゆる、変身のようなこともできるようだ。
男女、種族、おかまいなく変えられる。イケメン美男子にだってなれる。
まあ、俺の持つ「知識」が、イケメンになっても、変えられるのは見た目だけだから、意味がないと告げているのだが……
いわゆる偽物なんだから、最終的に自己満足にもなりゃしないと。
ふん。言われなくても分かっているんだよ!
…………まあいい、次だ次。
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「かいてき」は、快適のこと。
どんな状況でも快適に過ごせる、と言うスキルだ。寒かろうが暑かろうが関係ない。さらに、宇宙でも深海10万メートルでも、生身のままで快適に過ごせる。真空も水圧も関係ない。
凄いスキルだ。
師匠も、知らなかったスキルのようで驚いていた。
もしかすると、魔草原も平気で渡れるのでは、と思ったが、スキルを発動させたままにしておくのに魔力が必要なので(僅か1だけれど……)、魔力を霧散させる魔草原では発動状態が維持できないと言われた。
さっき考えた、「しゅうのう」を使っても、魔草原を渡ることができないのと同じ理由。
残念。
そして――――
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「それで――――師匠、もう一度尋ねますが、どこまでステータスを伸ばせばよいでしょうか?」
俺は、さっき尋ねた問いを、もう一度、師匠に投げかけた。
「ステータスを伸ばす目標、ね……」
少し、遠い目で師匠が何かを考えている。その頬にはほんのりと赤みが差していた。
「そうね。次は1万――――いえ、5万にしましょう!」
「5万?」
「そ、そうよ。1,000あれば確かに弱くはないけれど、強いというわけでもないわ。もしかすると、ど、ドラゴンと戦うこともあるかもしれないでしょう?」
突然、挙動不審になる師匠。その目はなぜか、俺を見ていない。空を見上げている。
「????」




