追憶(21)三つ目のスキル
180日目。
紆余曲折はあったが、1本の魔草を抜くたびに、僅かでも次のチャレンジ日数が減ったようで、レベル19になってから今日で5日目、レベル20に到達できる日がやってきた。
この世界の一般的な人族の人たちが到達する最終地点らしいけれど、俺の場合、レベル20になっても残念なことに各ステータスはオール20。
レベル1で20が加算される人も多いようだから、ようやく一般の人たちのレベル1に追いついた、といった感じか。
だが、今の俺の目標は、ステータスアップではない。
スキルの獲得だ。
この世界では、初回を除いて、レベルが20上がるたびにスキルを獲得できるチャンスがある。
最初のレベル10の時は100%。全員が獲得できる。
そこからは、少しずつ確率が下がるそうだが、レベル100までは20レベルごとにスキルがゲットできやすい。強者と言われるレベル100に到達した人たちは、初回のレベル10の時に得られるスキルと合わせて、平均4つのスキルを持っている。
確率は60%ぐらいか?
レベル100を過ぎると、ガクンと生える確率が減るそうだが、それでも10%程度でゲットできるらしい。
そして、俺の場合、「ぷらすわん」のひらがなスキルもあるから、師匠は間違いなく20レベルごとにスキルが獲得できるだろう、と言っていた。
果たして、今回は何のスキルが獲得できるのか?
予定では「格闘」のスキルを獲得するつもりで頑張ってきたが、果たして上手くいくのかどうか……ドキドキだ。
もしも「ぷらすわん」がスキルの獲得に関係していなければ、6割程度の確率なら普通に外すこともあると思った方がいいだろう。
ふぅ。
「じゃあ、始めるわよ?」
「ルイ、行きます!」
いつものセリフを口にしてから俺は魔草に向けてダッシュした。
「魔力」のステータスが19になった今、俺が魔草を引っ張れる時間は約180秒。3分になった。
もっとも、一回のチャレンジが30秒から3分に増えたことで、一時間あたりのチャレンジ回数は最初の20回から今は10回に減ったけれど、それでも魔草へダメージを与える量は確実に上がっている。
最初は魔力が4だったから、ダッシュの行き帰りを5秒ずつとって、引っ張れた時間は30秒しかなかった。
それを思えば随分と成長した。
少し感慨深いなぁ、と思いながら赤い輪をひっかけた魔草を掴み、引っ張る、引っ張る、引っ張る。
スポン
ちょっと変な乾いた音がして、魔草は引っこ抜かれていた。
同時に、俺の体をレベルアップのジュワンとした感覚が覆う。
「よし!」
小さくガッツポーズした俺だったが、「ほら、そこで喜んでいたらダメよ」という師匠の声が聞こえた。
1分くらいで抜けたから余裕はあるはずだけれど、油断は禁物。
俺は、急いでダッシュで戻った。
「ふぅ」
「――あら……そのスキルが生えたのね」
師匠が「かんてい」のひらがなスキルを使ったのだろう、俺を見て少し目を丸くしていた。
「え? 『格闘』じゃなかった?」
「ええ。確認してごらんなさい」
俺は、「ステータスオープン」と心の中で呟いた。いまだに、この言葉を使っているのは、たぶん地球人の特性なんだと思っている。
名前:ルイ
種別:人族(異世人)
年齢:7歳
性別:男
職業:■■■■
レベル:20
攻撃力:20
魔力 :20
防御力:20
精神力:20
運 :20
スキル:ぷらすわん、剣術(★★★★★)、しゅうのう
「しゅうのう? ……これって『収納』? アイテムボックスのこと?」
「ええ。収納のスキルよ。ルイがイメージしているアイテムボックスで大丈夫よ。しかも、ひらがなスキル。すごいわね」
「すごいんですか?」
「この世界の『収納』のスキルの容量は、★1で大きなカバン1個分、★2で物置、★3で一部屋分、★4で体育館ぐらい、★5でほぼ無制限、といった感じかしら」
「ほぼ無制限?」
「ええ。100キロ四方は入れられるから、ほぼ無制限と考えてよいわ。ただ完全な無制限じゃない、ってことね」
「時間経過とかは?」
「★4からは、時間を調整した状態で収納できるようになるわ。完全に止めることはできないけれど、今日までしかもたない食べ物が一か月ぐらいは平気になる、という感じかしら。ただ、時間経過を調整するために必要な魔力量は大きいわよ」
「生き物は入れられない? 地球での知識では生き物が入れられる収納の話は少なかったと思うんですが?」
「ほぼそのイメージで大丈夫よ。植物とか微生物は大丈夫ね。意思疎通が可能な相手は、生きている間は入れられないという感じかしら」
「なるほど……」
俺が元の世界の知識をもとにイメージで抱いていた「収納」に近い感じか。
「ちなみに、今言ったのは、普通の『収納』スキルの話ね。ひらがなスキルの『しゅうのう』は、『収納』スキルの★5の上位バージョンになるわ」
「例えば?」
「まず、容量は元の世界の太陽系と同じと考えてよいわ」
「え? 太陽系!?」
それは、容量という言葉で現していいのだろうか?
確か、太陽から最も遠い海王星までの距離が40億キロ以上だったはず。それは半径に当たるから、単純に考えればその倍の広さがある、ということになる。
★5「鑑定」スキルの100キロ四方と、広さの単位で比較することは、ちょっとおかしい。
「ええ。そして、時間経過も止めた状態が維持できるわ。私も『しゅうのう』のスキルを持っているけれど、一番長く収納しているのは、もう3,000年以上になるわね。時間が経過した様子は一切見られないわ」
「3,000年! ちなみに、時間を早めることもできるんですか?」
「お酒でしょう。ええ、できるわよ。無制限に速く、というわけにはいかないけれど」
俺が発酵をイメージしたのが丸わかりだったようだ。
「それと、『収納』と最も違う点は、『収納』は体のどこか一部でいいからその対象に触れないと収納することができないの。でも、ひらがなスキルの『しゅうのう』は、触れずとも対象の座標が分かれば収納することができるわ。放出も自由自在」
「なるほど」
「よくわかっていないわね。ルイ」
腰に手を当てた師匠が、呆れたような笑みを浮かべていた。
「え?」




