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ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第一章 運命の扉

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追憶(13)ダッシュ、引っ張る、戻る。OK?



「いい? ダッシュ、引っ張る、戻る。OK?」


 いや、外国人に話しかけているんじゃないんだから、普通に喋ってくれればいいのに。


 でも、真剣な表情をしている師匠に対して、俺は余計な言葉を口にすることができずに、ただ、うんうんと頷いていた。

 たぶん、この魔草を抜くための「魔草チャレンジ」は、俺が思っている以上にリスクがあるのだろう。


 今、俺がいるのは、丘を降りたところ。魔草原まで10メートルぐらいの場所。


 これ以上近づくと、魔草の共鳴の影響を受けて、魔力が減り始めるらしい。


 近くまで来ると、思ったよりも魔草の背が高いことが分かる。


(俺と同じくらいはあるんじゃないか?)


 最初に丘の上から見たとき、魔草原に入って、水の在り処を探そうとしていたのが、どれだけ無謀だったのが実感できた。


「まず、目印のこの赤い輪を魔草に引っ掛けるのよ。毎日、同じ魔草を引っ張る必要があるから。そして、先端を引っ張る。それだけでいいわ。私が戻って、と言ったらすぐにダッシュね。転んだりハプニングがあると怖いから、行き帰りを5秒ずつとって、引っ張る時間のカウントダウンは30秒にするから。分かった?」


 さっきの片言の説明では伝わっていないと思ったのか、今度は丁寧に説明してくれた。


「引っ張るだけでいいんですね?」


「ええ。抜ければ倒したことになるわ」


 俺はふと思ったことを尋ねた。


「鎌とか用意して刈るのはダメなんですか?」


「魔草は、抜くことが討伐条件なの。刈っても根が残るから経験値は得られないのよ」


 なるほど。根が残るとそこから生える植物は地球にもあった。カイワレ大根とか。再生栽培だったっけ。


「それと、戻ってきたらこれを一口飲んでね」


 そして、師匠が大きめの透明な容器を手渡してくれた。


 見覚えのあるこの容器は……


「これは……500mlのペットボトル?」


「ふふふ。そうよ」


「この世界は、プラスチックが作れるんですか?」


「この容器は、私のひらがなスキルで手に入れたの。『つうはん』というスキルね」


「え!? つうはん?」


 おお!! 通販か。説明を受けなくても、どんなスキルなのかが分かる! すごい!


「ち、地球から、モノを取り寄せられる、ってこと?」


 思わず敬語を忘れてしまった。


「まあ、そんなところね。お金はかかるけれど」


「地球の通販で購入できるものは、何でも手に入れることができるんですか? ――――例えば……電化製品とか? 車とか?」


「何を想像しているのか分かるけれど、大丈夫よ。取り寄せることはできるわ。ただ…………値段が、ね」


 師匠がパチリとウインクをした。可愛い。


「値段?」


「そう、価格で言うとこの容器は、地球のお金で換算すると10万円ぐらいかしら?」


「10万円!!」


 空のペットボトル1本が10万円? めちゃ、高い。


「食べ物は安いのよ。日本の感覚とほぼ同じぐらい。でも、地球の『科学』が強く関係する商品は高いの。ルイが今言った電化製品を使おうとすると――電子レンジと太陽光パネル、そして蓄電池を揃えると、一億円ぐらいは必要になるわね」


「い、一億円!!」


 無理だ。さすがに無理だ。


「一億円って……この世界でそれだけの金額を稼ぐにはどうすればいいんですか?」


「そうね。今の物価は違うと思うけれど、私が現役で冒険者をしていた時代なら、SSクラスの魔獣を倒せばそれぐらいの金額が手に入ったかしら?」


「SSクラスって、強いんですよね?」


「強いわよ。人族ならSクラスの魔獣討伐に必要な人数は、同じSクラスの冒険者が5人は必要になるわ。SSクラスならその4~5倍ね」


「ち、ちなみに、冒険者をしていたときの師匠のランクは……」


「私? SSSクラスよ。最高クラス、一応」


 少し胸を張ってどや顔になる師匠。可愛い。


「師匠なら、そのSSランクの魔物はソロで討伐できたんですか?」


「ええ。SSクラスまでなら倒せたわね。さすがにSSSクラスはソロ討伐は無理だったけれど……」


「SSSクラスって、どんな魔物が?」


「Sクラス以上は魔物じゃなくて魔獣になるわ。SSSクラスだと、成龍とかエルダーベヒーモス、神祖吸血鬼、いろいろいるわね。ステータスが数万クラスあるから、普通の人族だったら、ステータスのレベルで最低でも500がないと、ソロでは手が出せないかしら。もちろん、それでもソロでは倒せないのだけれど」


 おお、エルダーとか神祖とか、名前を聞いただけで強そうだ。今の俺なら、睨まれただけで死んじゃいそう。

 それと、普通の人族のレベル500ってことは、各ステータスは一万を超えてくるだろうから、ごく一部の上澄みの人たちってことか。


「話を戻すわね――――この容器には魔力ポーションが入っているわ」


 おっと、脱線してしまったようだ。


「魔力を回復させるポーション、ですか?」


「そう。一口で100の魔力を回復させるから、ルイの魔力なら一滴でも大丈夫ね。ぐい、っと一口飲めば、すぐに次のチャレンジができるわよ」


 ぐいっと一口って、まるで酒をあおるかのような表現はどうかと思うけれど、どうすれば良いのかが分かった。


「ポーションって、連続して飲むとダメだったり効果が減ったりする設定の話を読んだことがあるのですが、これは大丈夫なんですか?」


「ええ。これは上級のポーションだから、どれだけ飲んでも副作用はないわ。大丈夫よ」


 4しかない魔力を回復させるのに、上級ポーションを使うのはちょっと気が退けるが、師匠は気にしてないようだし、まあいいか。


 それよりも――


「何か目標って、ありますか? 一日に何回引っ張る、とか」


「そうね……」


 師匠が手を顎に当てて考える。可愛い。


「――頑張って、一時間に20回を目指しましょうか?」


(20回? そんなもんでいいのか……)


 俺の魔力は4。なので、この魔草原では40秒しかもたないから、ポーションで魔力を回復させる時間を足しても、一回あたり1分弱で大丈夫なはず。

 師匠は3分で1回を考えているようだが、頑張れば最大60回はできるはずだ。


「休憩を除いて、実践時間が一日5時間取れれば、一本目が抜けるのは予想通り、二、三週間後になるはずよ」


 ということは、師匠は今、一時間の目標を20回に設定していたから5時間で100回、最短で二週間なら1,400回が目安、ということだ。


(一時間に60回、一日12時間頑張れば……二日で達成できるじゃん!!!!)



 ――そんな風に思っていた時がありました……



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