目指すは「一本角」?
20階層に降りた俺たちは、隠し部屋に向かった。
隠し部屋の位置は、俺が把握している。千年ぐらいの経過では、迷宮のレイアウトが変わることはないようだ。
階段を降りたところで、まるで待機していたかのようにマミーが2匹ふらふらとした足取りで寄ってきた。
(そういえば、マミーで女性タイプは見たことがないな)
もっとも、マミーが体に巻いている包帯は本当の包帯ではないから、仮に剝いたとしても素肌が見えるわけではない。魔物だし、性別は関係なのだろう。
ちょっと、くだらないことを考えていると、セシリアとシヴァニがマミーをあっさりと切り倒す。
あまりに手応えがなさそうに倒しているが、一応、Sランクの魔物だ。各ステータスも10,000を越えている。
マミーを倒したセシリアが、ふと首を傾げた。
「ねえ、ルイ」
「うん? どうかした?」
「もうお昼ぐらいでしょう? この迷宮に、誰か入ってきていないのかしら?」
時間は、そろそろ昼前になる。だが、【まっぷ】で確認してみても、今のところ入場している冒険者はいないようだ。
「今のところ、まだ大丈夫かな」
「ここは、賑わっているダンジョンじゃないの?」
「うーん、どうだろう? でも、現れる魔物や魔獣は、浅い層ならまだしも今いる階層は、最低でもSランクになるからね」
「簡単には入ってこられない、ってことね?」
「うん。それでもスタンピード対策で、定期的に奥深くまで潜るようにはしていたんじゃないかな」
「そういえば……【転移】のスキルを持っている人だったら、突然、ここに現れることもあるんじゃない?」
「可能性としてはね。でも、最低でも迷宮内の複数の階層を一気に転移するには★の数が最低でも3つは必要だから、その可能性は低いと思うよ」
「そうなの?」
「うん。【転移】のスキルの★の数を増やすには、【転移】スキルを使い続ける必要があるんだけれど、迷宮内の階層を移動するために必要な魔力量は1,000以上必要だからね。★を上げるのも大変なんだ」
「そう……」
俺は魔力の量が半端ないから、1,000でも100万でも全然問題がないことを、セシリアは気がついたようだ。シヴァニがいるから言葉には出さないようにしてくれている。
「じゃあ、とりあえずしばらくは誰もここに来ない、ってことでいいわけね」
「うん。誰かが近づいてくるのが分かったら、すぐに教えるから」
「わかったわ」
「よし――――じゃあ、まず最初の隠し部屋に向かおうか」
「「はい」」
素直に二人が頷く。俺たちは、洞窟型の道を奥へと向かって歩き始めた。
■□■□
1時間ほど歩いて、道の突き当りにやってきた。
「ここが隠し部屋なのね」
「うん。中にいるのはデュラハンだけだから、最初から全力で」
「デュラハンだけ……」
シヴァニが少し心配そうな声を出している。
「今のシヴァニの実力なら、負けることはないから大丈夫。数が多いから、慎重にかつ大胆にチャレンジしてみれば良いと思うよ」
「わ、分かりました」
気合を入れているシヴァニ。
今の二人のステータスはこの通り。
名前:セシリア
種別:人族
年齢:17歳
性別:女
職業:勇者(■■■)
レベル:1,117
攻撃力:147,779(7,388,950)
魔力 :120,155(6,007,750)
防御力:119,834(5,991,700)
精神力:137,016(6,850,800)
運 :84
スキル:【剣術(★★★★★:剣聖)】、【回復(★★★)】、【縮地(★★★★)】、【耐性(★★★)】、【灯り(★★)】、【集中(★★★★)】、【限界突破】、【鑑定(★)】、【魔力剣(★)】、【お■■く】
名前:シヴァニ・メリディナル
種別:鬼人族
年齢:16歳
性別:女
職業:神官
レベル:528
攻撃力:6,344(317,200)
魔力 :6,873(343,650)
防御力:6,247(312,350)
精神力:12,711(635,550)
運 :39
スキル:【剣術(★★★)】、【結界(★★)】、【灯り(★)】、【縮地(★★)】、【治癒(★)】
前回と比べると、セシリア伸びは誤差のように見えるが、それは元のステータスが高かったから。実際、攻撃力を見れば素の状態で2,000近く上がっている。ブースト後なら増加幅は約10万だ。
増えた数値だけでも、人族のSSランク以上、SSSランク未満の数値になる。もちろん、素の状態をブーストした700万オーバーはSSSランク以上だ。
「隠し部屋のデュラハンの数は?」
「ここで戦うのは10匹かな。あと二つの隠し部屋は、それぞれ20匹と50匹になるから、まずは慣らし運転といこう」
「これまで戦ったデュラハンよりも強くなっているんだったっけ?」
「うん。一番最後に戦ったデュラハンは攻撃力のステータスが20,000ぐらいだけれど、この部屋にいるデュラハンだと5万近いから」
そう、この隠し部屋に登場するデュラハンのステータスはこう。
種別:デュラハン
レベル:50
攻撃力:50,000
魔力 :50,000
防御力:50,000
精神力:50,000
運 :50
スキル:【剣技(★★★★)】、【防御(★★)】
ステータスはオール5万。スキルも剣技が★3から★4へとアップしている。
だが、アップはしているが、二人の敵でないことは確かだ。セシリアなら仮にブースト前だったとしても10匹をまとめて倒すことができるはず。シヴァニは、さすがに10匹まとめてだと心配だけれど、セシリアと一緒に戦えば楽勝だ。
俺?
俺は、監督権非常時のバックアップ係といったところだ。
「じゃあ、とりあえず誰かが降りてくるまで、この階層の隠し部屋を順繰りに廻ろう」
「目標は?」
セシリアが少しワクワクしながら尋ねてきた。シヴァニはまだ不安そうな目の色が見えるけれど。
「一時間で2週を頑張ろう。最終目標は、セシリアがステータス20万、シヴァニは10万で」
「はい」
「は、はい」
シヴァニは、まだ気がついていないが、精神力が10,000オーバーになって、経験値を積み重ねたおかげで、すでに額の角の色は濃い赤色だ。
セシリアは、見せかけだけの角だから白色のままだけれど、もしも本当に判定させたなら透明は間違いない。
なんでも、鬼人族にには、昔々、とても強い人がいたそうだ。
その鬼人族の角は、透明な一本角。額の中央から生えていたらしい。
らしいというのは伝承でしかなく、今、存命中の人たちの中で「一本角」を見たことがある人はいない。
でも、セシリアの場合、その伝説の一本角になってもおかしくはないステータスだからね。
まあ本当に「一本角」にしたら大騒ぎになるのは確かだからしないけれどね。
とにかく二人には、しっかりと修行をこなしてもらおう。




