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ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第三章 天下無双剣闘会

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対シャドウ戦



「あっさりでしたね」


 階段を降りながらシヴァニがホッとした表情を見せている。気のせいか、さっきまで少し萎れていた額の角が潤いを取り戻したように見える。


 俺たちは、迷宮の入り口にドンと構えていた警備員の間を、抜き足差し足でそっと通り抜けることに成功した。


 迷宮に入ると、長い長い階段が見下ろせた。迷宮の壁には、いくつもの火が燈ったトーチが並んでいるので視界は確保されている。


 階段は、横幅は数メートルの幅があるので、俺たちは並んで階段を降りている。


「この階段って、長いのね」


 セシリアが下を見ながら呟いた。


 折り返すことなく、真っすぐに続く階段はたぶん数百メートルはあるだろう。

 一般人なら、万が一、転げ落ちると大変なことになる。

 まあ、この迷宮に入場が許可されている冒険者なら、なんとでもなるのだろうけれど。


「ここで魔物や魔獣が現れると大変だけれどね。この階段はセーフティゾーンのようなものだから」


「降り切った場所が、最初の階層?」


「うん」


 長い長い階段だが、階層を横断しているわけではない。

 降り切った場所がこの迷宮のスタート地点になる。


「一階層、でいいのかしら? どんなゴーストが現れるの?」


「一階層は、シャドウと、あとはデュラハン」


 俺は記憶を辿りながら答えた。


「え? デュラハンって、あの首を手に抱えた騎士のデュラハン?」


「うん。ランクはSSSランクかな」


 SSSランクという言葉に、シヴァニが立ち止まりギョッとした顔を見せた。


「ああ、大丈夫。デュラハンの数は多くないから。メインはシャドウだよ」


「それって、オレでも倒せますか?」


「うん、ちゃんとブーストかけるから平気」


「そ、そうですか」


「一階層から、SSSランクの魔獣が現れるのね」


「デュラハンは、全階層にいるよ。下に進むと、少しずつ数が増える感じかな」


「じゃあ、一階層はデュラハンの数は少ないのかしら」


「うん。でも、シャドウだけだと、なかなかレベルアップできないから早く20階層ぐらいにはいこうと思うけれど」


「そ、そうですか……」


 シヴァニはさっきから同じセリフしか口にしていないな。


「デュラハンを倒すと、私もレベルアップできるのかしら?」


「うん、【けいけん】のスキルはもう使っているからね」


「それって、えーと、この前と同じ千倍?」


「うん」


「千倍、って何ですか?」


 ようやく、シヴァニが違う言葉を口にした。


「ああ、簡単に言うと、1匹の魔物を倒すと千匹倒した経験値が貰えるんだ」


「だらか千倍ですか……ちょ、ちょっと待ってください!千匹!?」


「そう」


「千匹も魔物を倒したら、レベルもすぐに上がりますよ! ただでさえ、この迷宮の魔物は強いんですから!」


「だから、シヴァニの角も色をすぐに変えられる、ってこと」


「…………」


「だから、頑張ろう」


「…………」


「ルイの言うことは、話100倍だと思っておくとちょうどいいっていったでしょ?」


「……はい」


 セシリアが物知り顔を見せると、シヴァニの目から光が失われたように見えた。


 まあ、セシリアが一度通った道だ。シヴァニもすぐに慣れてくれるだろう。



 ■□■□



 一階に降りると、黒い雲に覆われた空の下に、ただ灰色の地面とそして白く枯れたような細い木がところどころに生えている景色が広がっていた。


 一本の道が真っすぐに伸びている。


「ここが……エァフズマイズ迷宮」


 シヴァニがポツンと呟いた。


「とりあえず、慣れながら下に向かおう」


 道の周りには、道を横切るようにいいくつもの黒い影が漂っているのが見える。


「あの黒い影がシャドウ?」


「うん。0.1ヤド(10メートル)ぐらいまで近づくと、エンカウントするから」


「どんな攻撃をしてくるのかしら?」


「丸い影を投げてくる。ぶつかると、精神力が低ければ一撃で意識を持ってかれるけれど、今の二人は、そのまま受けても大丈夫だから」


 一応、二人とも【ふやす】でステータスは底上げしている。シヴァニの精神力も10万を超えているから直撃しても大丈夫だ。もちろん、セシリアも。


「どうやって倒せばよいの?」


「斬れば大丈夫。二人とも剣を抜いてくれるかな」


 セシリアが剣を、そしてシヴァニが刀を抜いた。


「【アサインメント】!」


 俺は、その剣と刀に属性を付与するスキルをかけた。ひらがなスキルではなく、普通のスキルだ。付与した属性は、もちろん聖属性。


 刀身と剣身に輝く光が纏った。セシリアが光る剣をしげしげと眺める。


「これで斬れば、シャドウは倒せるのね」


「うん」


 二人の攻撃力も【ふやす】で50倍になっている。

 シャドウはAランクの魔物だけれど、防御力は3,000ぐらいしかない。

 シヴァニは、今、50,000以上の攻撃力になっているから、かするだけで倒せる。

 攻撃力が50万を越えているセシリアは、かする必要もないんじゃないかな。というか、聖属性を付与しなくても倒せるような気がする。


「じゃあ、さっそくやってみよう」


 そして、俺は二人を連れて、シャドウへと向かった。



 ■□■□



 黒い二つの影が、近づいた俺たちに気がつき、こちらへと向かってきた。

 距離は10メートル。


 俺は一歩下がる。


「セシリア! シヴァニ!」


「はい!」


 まず、セシリアが【縮地】のスキルを使って、一瞬で向かってくるシャドウの前へと向かい細かく剣を振ると、粉々に切り裂かれたシャドウがパンと細かな黒い粒子となって飛び散る。


「はい! ふん!」


 続いてシヴァニが、少し勇ましい掛け声で刀を一閃させる。

 真横を薙いだ刀身が、シャドウの黒い影を二つに分散させると、これも、上下が同時に黒い粒子へと変わって霧散した。


「よし、大丈夫だな」


「「はい」」


 振り返った二人が頷いた。


「あ!」


 その時、シヴァニが両腕で自分の体を抱くと声を上げた。


 レベルアップだな。


 確認してみよう。



 名前:シヴァニ・メリディナル

 種別:鬼人族

 年齢:16歳

 性別:女

 職業:神官

 レベル:218

 攻撃力:2,616

 魔力 :2,834

 防御力:2,576

 精神力:5,241

 運  :34


 スキル:【剣術(★★★)】、【結界(★★)】、【灯り(★)】、【縮地(★)】



 お! かなり上がったな。

 戦闘前のシヴァニのステータスはこう。



 名前:シヴァニ・メリディナル

 種別:鬼人族

 年齢:16歳

 性別:女

 職業:神官

 レベル:84

 攻撃力:1,008

 魔力 :1,092

 防御力:991

 精神力:2,016

 運  :11


 スキル:【剣術(★★★)】、【結界(★★)】、【灯り(★)】



 ステータスレベルは84から218に、精神力は5,000を越えている。あとは国の許可さえ得られれば、正式にこの迷宮に潜れる資格を手にしたことになる。


 スキルの★は、増えていないけれど、これは仕方がない。代わりに、新しい【縮地】のスキルが手に入った。

 これで、戦闘の幅が大きく広がった。


 よしよし。


 その時――


「あっ!!」


 さっきよりも大きな声がシヴァニから上がると、今度は額の角が光り始めた。



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