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ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第三章 天下無双剣闘会

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目標


「あ、ありがとう、、、ございました」


 息も絶え絶えになったシヴァニが、修練場の地面に大の字で寝ころんだまま、小さく頭を上げていた。

 寝たままで首だけ捻りながら上げるとは、器用な奴だな。


 横ではなぜかセシリアが満足そうに頷いている。


「で、納得した?」


「ああ、いや……はい」


 立ち会ったのは一時間ぐらいか。剣を振る際、もっとも疲れるのは「空振りが連続した時」だ。

 俺はそれを知っていたから剣は合わせずに、回避し続けた。

 途中で、シヴァニの顔色が青くなり始めたのは気がついていたが無視。

 たぶん、ストレスも相当たまっただろうに、それでも剣を振り続けた気力だけは大したものだ。


 やがて……


 しばらく呼吸を整えてから「ふぅ」と小さく息を吐いたシヴァニは起き上がり正座した。

 そして、俺を真っすぐに見てから、正座したまま頭を下げた。


「師匠、オレを弟子にしてください」


「は?」


 目が点になる。


「俺は黒角だけど?」


「関係ありません。強さは必ずしも角の色に現れない、と昔の偉人が言ったそうです」


「ゑ”」


 変な声が出た。


(昔の偉人? って、俺?)


 そう、昔この国を訪れた時、偉そうに説教してきた白角の強者《つわもの》を叩き伏せたときに俺が言った言葉だ。


 確か……ルフという戦士だったっけ。そういえば、このボンヌの国の国王の名前もルフだったけど、ルフと言う名前は珍しくないし、偶然だよね?


「ルイ、いいんじゃないかしら。角の色で決めつけないのは伸びしろも多いと思うわ」


 セシリアが頷いている。どうやらシヴァニの言葉が、勇者の気質のどこかに響いたようだ。確かセシリアは、「勇者」として苦労したことがあったようだから、似たような経験があるのかもしれない。


「弟子になるなら、セシリアの方がいいと思うけれど?」


「いえ。オレは師匠がいいです」


 真っすぐに俺を見つめるシヴァニ。


 俺の目的は、誰かを鍛えることじゃない。この大陸に残した俺の師匠の足跡をセシリアと共に辿ることだ。

 とはいえ、時間の縛りがあるわけじゃないことは確かだ。


(まあ仕方がないか……)


 真っすぐなその心根は見所があるし、セシリアも望んでいるようだし。


「じゃあ……とりあえず剣闘会までの限定なら……」


「ありがとうございます!!」


 しっかりと丁寧語になっているシヴァニ。たぶん、これは強いものに従おうとする鬼人族の性質なんだろうな。



 ■□■□



 翌日。


「それで? 目標は?」


 昨夜は、シヴァニも同じ宿に泊めようかと思ったのだが、「師匠と同じ宿に泊まるなど恐れ多いです」と本人に固辞された。


 まあ仕方がないか。


 結局、近くの他の一般宿で宿泊したシヴァニは、朝から俺たちの宿に押しかけてきたので、セシリアを連れて街の外へと向かうことにした。

 昨夜の修練場を使ってもいいのだけれど、特に剣闘会が迫ったこともあるので、日中は観客も多いらしい。俺は黒角だから、あまり目立つことはしたくないからね。


 なので、まずはシヴァニの目標を聞いて、それに見合うプランを作ろうと思っている。


 歩きながらシヴァニにその目標を尋ねると……


「オレは、決勝トーナメントには出たいです」


 どうやら彼女は、はっきりとした目標があるみたいだ。


 ちなにに「天下無双剣闘会」は、まず予選が行われて18名の決勝トーナメント出場者を選ぶ。

 予選はAブロックからFブロックまでの6つのブロックに分かれて、各ブロック3名が残るまで戦うバトルロワイアル戦だ。

 仮に1人しか残らなかったら、2名の出場枠は不戦敗枠となる。全員が倒れたら不戦敗枠が3つ。


 あとは、序列10位までの選手を加えて28名での決勝トーナメントが実施される。

 序列10位の予選免除者のうち、序列1位から序列4位まではシード枠になる。

 したがって、この決勝トーナメントは1回戦、2回戦、準々決勝、準決勝、決勝の最大5試合を勝てば優勝だ。


 そして優勝者は最後に、最終戦となる召喚された魔獣、羅刹と戦う「羅刹戦」に勝てば「天下無双剣闘士」の称号を得られることになる。


 なお、魔獣羅刹は、ステータスが呼び出す優勝者と同じとなるため、スキルを十全に使える勇者の方が圧倒的に有利だし、過去、羅刹戦で負けた優勝者は、決勝戦で大けがを負った者が数名と、ほんの僅かしかいない。

 もしも、優勝者が羅刹戦に敗れたとしても、羅刹を封印できる「勾玉」があるから問題はない。羅刹戦に勝てないと「天下無双剣闘士」の称号は凍結されるけれど、優勝者は体調を整えてから再戦することもできる。

 少なくとも俺が知る限りでは、翌年の「天下無双剣闘会」まで羅刹戦に勝利できなかった優勝者はいなかったはずだ。


 どうやらシヴァニは、この決勝トーナメントに出場することを目標としているようだ。


「序列戦の出場枠獲得、じゃないの?」


「緑角で、それは無謀かと」


 決勝トーナメントで予選を免除された序列者に勝利した者は、その後に開かれる「序列戦」への参加が認められる。

 この「序列戦」では、序列50位までを加えた戦士たち、下位から上位の戦士へと順番に戦い、勝った相手の序列を奪うことができる。


 この序列戦へは、他にも出場枠があるので、最終的に出場者は101名。

 つまり、100人組手のようにもしも100連勝ができれば晴れて序列1位を手にできるというわけだ。


 この「序列戦」への出場者は、最低でも黄角が必要とされている。人族の冒険者ならBランクといったところか。


 まあ、確かに「緑角」の強さなら、ステータスは一般的に1,000前後だから、序列戦はもちろん、本当なら「天下無双剣闘会」の決勝トーナメント出場も無理だろう。


 最低でも各ステータスが3,000近くないと、決勝トーナメントに勝ちあがるのは難しかったはずだ。


(ステータス、3,000か……)


 まあ、無理ではないか。


「セシリアはどうする?」


「え? 出てもいいの?」


 ムズムズしていたし、セシリアが出たがっていたことはわかっているからね。


「構わないよ」


「じ、じゃあ出てみようかしら」


 仕方ないわね、と言ったセリフと嬉しそうな表情が合っていないところが可愛い。


「よし、じゃあシヴァニはまず黄角を目指そうか?」


「黄角?」


「そう。間に合うならオレンジまで行けるといいかな」


「え?」


 俺の言葉に、シヴァニが目を丸くしていた。


「とにかく、まずは迷宮に潜ろう」


「今から?」


「そう。今から」


「なんの準備もしないで?」


「準備? 体一つあれば大丈夫」


「…………」


 少しシヴァニの腰が引けているように見えるのは、たぶん気のせいだろう。



読んでいただき、ありがとうございます。

更新日ですが、次話より、毎週、火・木・土の3回にさせていただきます。

次話は、9/8(火)となります。

少し仕事が詰まってきているので、すいません。

よろしくお願いいたします。

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