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ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第一章 運命の扉

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追憶(11)緑島?ダンジョン?



「えーっと……魔物を倒すたび、ということは、例えば弱いスライムを1,000匹倒せば、レベルも1,000でステータスも全て1,000になる、ということですか?」


「その通りよ」


 ちょ、ちょっと待て。そ、それって、凄いんじゃ……


 あの時、スライムを倒したが、苦労はしなかった。剣で簡単に刺せた。


 スライムは、経験値のようなものが低いから、レベル10を超えるとレベルアップには使えないという話だったはず。

 それが俺の「ぷらすわん」であれば、簡単にレベルもステータスもアップさせられる、ということだ。


 もっとも、俺の場合、常に上がるのは1だけだから、超人と呼ばれるステータス10,000越えに至るためには、10,000匹の魔物を倒す必要があるのだが……


「毎日30匹のスライムでいいのか……」


 一日30匹のスライムを倒せば一年で10,000に達することができることを考えると、決してそれは無謀な計算とはならないはず。


(そうか、一年で俺も超人か……)


 少しうきうきし始めた俺だったが……


「ルイ、残念だけれど、この島にスライムはいないわ」


「えっ?」


 どうやら俺のつぶやきを聞かれたようだ。


「ここはね……緑島、というダンジョンなの。スライムのような()()()()()魔物は一匹もいない死の島よ」


「もしかすると……ここは、危険なダンジョンなんですか?」


「危険と言えば、危険ね。でも、それはこの島に立ち入ることも出ることもできないから」


「え?」


「この島に、広がっている草原を見たかしら」


「は、はい」


 そう、見渡す限り同じ草原がぐるりと一面に広がっているのは確認している。


「ここはね、直径が3,000キロのほぼ円形の島なの」


「直径3,000キロの島!」


 広い。

 かなり、いや凄く広い。

 日本で考えると、北海道から九州までが2,500キロぐらいだったはず。


「この島にも四季があるのだけれど、ルイが見たように、春夏秋冬、枯れることがない青々とした草が一面に広がっているわ。ただし――」


「ただし?」


「広がっているのはただの草じゃなく、魔草なの」


「魔草?」


「そう。簡単に言えば、魔物の植物バージョンと考えればいいわ。魔草が広がる『魔草原』は人が足を踏み入ることができない場所なの。このダンジョンには、移動できる魔物はいないけれど、移動できない植物の魔物はたくさんいるのよ」


「え? 人が足を踏み入れられないって…………生えていたあの草は、危険な草ってことですか?」


「一本一本は、人に対して大きな影響を与えないわ。食虫植物のように直接、人を襲うようなこともないし。それぐらい弱い魔物。経験値で考えると、レベル10から11に上げるためには、1万本を抜かないとダメなくらい弱い魔物よ、魔草は」


「1万本!」


「でも、ルイなら関係ないわね。『ぷらすわん』のスキルで、1本抜くことができればレベルもステータスも1上がるわ」


 魔物を倒さなくても、魔草を抜くだけでステータスがあげられる? それって、凄いことなんじゃ……


「ルイが、何を考えたのか分かるわ。でも、ルイの場合、大きな問題があるの」


「問題?」


「魔草を退治する方法は、今言ったように抜くことよ」


「は、はい」


「ステータスが全て4しかないルイが、一本の魔草を抜くのにかかる時間はどれくらいだと思う?」


「え? 草だったらすぐなんじゃ……」


「残念だけれど、魔草は魔物の一種だから、普通の草のように簡単に抜くことができないわ。魔草は弱い魔物だけれど、それでも弱らせて弱らせてようやく抜ける、といった感じなの。そうね、この世界の一般人が最終的に到達できるステータスレベル20に達して、朝から夕方まで引っ張って、ようやく1本を抜けるといった感じかしら?」


「じゃあ、俺の場合は――ステータスが4だと……」


「数日寝ないで引っ張り続けて、ようやく1本が抜けるかも、といったところね」


「…………」


「それと、魔草にはある特徴があるわ。一定の広さを保つ魔草原は、魔草たちが持つ魔力の共鳴により、全ての魔力を不活化させてしまうの」


「魔力の不活化? 魔力が使えなくなる、ってことですか?」


「そう。よくわかっているわね。人の体内にある魔力も共鳴を受けて使うことができなくなるわ。さらに魔草たちは、本当に少量なんだけれど共鳴によって訪れた人や魔物、魔獣から魔力を奪い続けるの」


「魔力が奪われる……」


「ええ。魔草原の周辺部と中央部で、その奪われる量は違うのだけれど、奪う量が少ない周辺部でもだいたい10秒で1の魔力が失われると考えた方が良いわ」


「10秒で1?」


 10秒で1なら、一時間で360の魔力を失うことになる。今の魔力が4しかない俺じゃ40秒しかもたない。どうしようもない。

 さっき、師匠が数日間寝ないで引っ張り続けて、ようやく1本が抜けるかも、と言っていたが、それすらできない、ということだ。


「そう。それと、共鳴は届く範囲なら距離が離れるほど共鳴数が多くなって強くなるから、空を飛べるドラゴンのような強力な魔物でも、島の中央に位置するこの場所まで訪れることは簡単じゃないわ」


「ちなみに、この場所は、その魔草の影響は受けないんですか? 大丈夫なんですか?」


「ここは、ちょうど島の中央に位置している場所。そして、魔草たちから離れていて不干渉地帯になっているから大丈夫よ。でも、それ以外のこの島はどこも、地上も上空も足を踏み入れることは困難なの。おそらく地下も」


「人も来れない?」


「人? 絶対に無理ね。たとえ『勇者』の職業を持つ異世人でも無理よ。奪われる量を考えると、そうね……ここに来るためには、最低でも魔力が7桁は必要になるんじゃないかしら?」


「7桁? って100万以上!?」


「ええ。私が知る限り、ドラゴンでも最強種以外で7桁の魔力を持つ種はいなかったはず。異世人でも7桁に届いた人はいないわ」


「もし、魔力が全部なくなると……どうなるんですか?」


「魔力がゼロになると、今度は、魔草は生命力を奪い始める。魔力を失った状態は、いわば生命力の極度な飢餓状態と考えていいわ」


「生命力の飢餓状態……」


「そう、魔力を全部失うとまず動けなくなる。そして次に、生命力が奪われるから、それが尽きれば、死ぬことになるわね。だから、一本の魔草は危険などないただの草なんだけれど、魔草が集まった魔草原は、誰も足を踏み入ることができない危険な場所、ということなの」


「じゃあ、魔力が4しかない俺が魔草原に立ち入ったら――」


「1分も経たないうちに意識を失って、あとは数分で天国へ旅立つことになるかしら?」


(ダメじゃん!)


「ど、どうすれば……」


「方法は二つあるわ」


「二つ?」


(なんだろう?)



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