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ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第二章 幽玄の森

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神系……?


「早かったわね。それで、何か分かったのかしら?」


 屋敷に戻った俺たちは、すぐに木がくり抜かれた部屋に通されると、そこに待っていた女王が少し呆れ顔になっていた。


「ああ。ボスを討伐したから、まもなく迷宮は復活するんじゃないかな」


 最初にこの部屋を訪れた時と同じく、大きなテーブルにセシリアと俺は並んで座った。


「ボス? どんなボスがいたのかしら」


 出されたお茶を飲みながら俺は【しゅうのう】から、大きな魔石を取り出した。

 冷たいお茶は、美味しい。


「これは……」


「ボスは、ゴッドシープと言う魔獣だった。それがその魔石」


「こんな魔石、初めて見るわ」


「うん、俺も見たことがない」


 そう、ゴッドシープが落とした魔石は、鈍い金色をしていた。

 魔石は、主に魔物や魔獣の属性を現わすことが多い。

 炎系の魔物や魔獣は赤色、水系の場合は青色、といった感じになる。複合した属性を持つ魔獣の場合には、例えば炎系と水系の2種類を持つ場合には紫色になるが金色は珍しい。


 例えば、全属性を持つ魔獣の場合には虹色になるのだが、金色や銀色の魔石を俺は見たことがない。


「ゴッドシープ、って属性は?」


「さあ? 鑑定したら特殊ダンジョンボス、ってなっていたし、名前からいくともしかすると『神系』とかになるんじゃないかな」


「そう……」


 これまで、『神系』の魔獣が確認されたことはないようだ。【かんぱ】にも聞いてみたけれど、アカシックレコードにも記録されてはいなかった。

 だが、「ゴッドシープ」という名前から考えると、何々系で考えると、神系がもっとも近いように俺は思った。


(そうか、もしもこれが『神系』とするなら、同じような銀色の魔石があって、それは『悪魔系』とかの魔石があっても不思議じゃないのかもしれないな……)


 そもそも、あのゴッドシープはレベルが24万もあること自体がおかしかった。

 しかもステータスは、強化されたせいで億を超えていた。この世界で1,000年を過ごした俺も、あんな数値を持つ魔獣に出会ったことはない。


 そのあたりのことを女王に話すと、少し難しそうな顔をした。


「まあ、何事にも必ず最初はあるのだから、今回はそれに直面しただけなのかもしれないけれど……」


 女王が何を心配しているのかはよく分かる。


「でも、たぶんこれで一段落はしたんじゃないかな?」


「一段落? なぜ?」


「迷宮の中に、魔物が現れ始めたんだ。おそらく元の状態で」


 そう。ゴッドシープを討伐後、俺たちが迷宮から外に出ると、迷宮から漂う魔素の雰囲気が変わった気がした。

 変わった、というのはおかしいか。どちらかと言うと、元に戻ったという表現の方がいいかもしれない。


 一応、確認のために俺たちが再度、迷宮に潜ると、そこで【まっぷ】のスキルを確認すると、ついさっきマッピングしたばかりの地図ではなく、元のオーゼロ迷宮の地図が表示されていたから。


 細かくは見ていないけれど、全ての階層に【転移】で行けたところを見ると、俺が一度、足を踏み入れていることは確かだから、元に戻ったでいいように思う。


 そのことを俺は女王に説明した。


「――――そうだったのね」


「うん。迷宮の中に瘴気は溢れていることはなかったから、入っても大丈夫だと思う。最初は、魔物たちに注意して欲しいけれど。全部の階層を、しらみつぶしに確認はしていなからね」


「ええ。分かったわ」


「とにかく、じばらくは様子を見るしかないんじゃないかな」


「そうね。もしも再び異変が現れ始めたら、すぐにルイに連絡をすればよいかしら?」


「うん。それでいい。しばらくはこの大陸をうろちょろするつもりでいるし。その時は、一度、ここに戻ってくるから」


 そして、俺は女王に、四角い手のひらサイズの箱を【しゅうのう】から取り出して渡した。これは中に魔石が入っていて、魔力を流し込むとセットになっている箱の魔石を光らせることができる連絡用の魔道具だ。


 800年前、この大陸を離れるときに女王から餞別として渡されたアーティファクトだ。連絡用の魔道具としては一般的なものだが普通は数キロ単位でしか通じない。魔石をSSSランクの魔獣のものでセットして、ようやく数十キロ単位まで広げることができる。


 迷宮内と外はもちろん、大陸間でも通じさせることはできないが、このアーティファクトの場合、距離と場所を関係なくつなげることができる。


「あら、まだこれを持っていたのね」


「まあね」


「ふふふ。じゃあ、ルイに会いたいと思ったら呼んでいいってことね」


「い、いや……ほら、俺はこれから忙しくなるから、よほどの場合だけにしてくれるといいんだけれど……」


 俺は少し慌てた。

 この女王の場合、冗談でなく、本当に気まぐれに呼び出されても不思議ではなかったから。


「忙しくなるって、これからどこに行くつもりなの?」


「ほら、最初の予定通り、ボンヌに行こうと思っている」


「鬼人族ね。遺跡に行くのね」


「うん」


「もしかすると、ラヴ――――」


「ストップ」


 俺が真っすぐに、覗き込むように女王の目を見ると、女王は口を閉じた。

 ずっと黙って隣で聞いているセシリアが俺を見た視線を感じる。たぶん、「なにかしら?」と顔には書いてありそうだ。


「――――まあいいでしょう。とにかく、しばらくこの大陸にいるのなら、また尋ねてきたちょうだい」


「うん」


 この国は、師匠のこの世界での故郷ともいえる場所だし、師匠の思い出の場所もきっとそこかしこにある。


 今回、ボスを討伐した際に、ラヴィンに「く」の文字が現れたことが、たまたまでないことを俺は分かっていた。


 この大陸をセシリアと共に巡る中で、何が起きるのかを、いや何が起きて欲しいのか、そして何が起きて欲しくないのかを迷いながら、探っていかなければならない。


 ちょっと微妙な雰囲気が漂ったが、女王がそれを変えてくれた。


「ところでルイ、報酬なんだけれど……」


「ああ。報酬は貸し一つでいいよ」


 女王が渡そうとする報酬は、たいがいが幽玄の森で採取される珍しいものだから。貴重な珍しいものだけれど、もうさんざんに貰ったし売るのも大変なものが多いから、どうしても欲しいものではない。


 魔獣を三日間だけペットにできる薬草とか、性別を三日間だけ変えられる薬草とか、なぜか三日間限りの変な薬草が多かった。


 自分で使う必要などないし――俺の場合、スキルで十分だからね――売っても責任などとれないからね。

 強い魔獣をペットにして三日経ったら襲われた、なんてことが起きたら大変だし、実際、そういう類《たぐい》の笑えない話は多かった。


「……そういうわけにはいかないわ。じゃあ、これはどうかしら?」


 そして、女王は小さな箱を俺に渡した。


 受け取った箱を開けてみると……


(宝石?)


 そこには、銀色の光沢に覆われた小さな石が入っていた。



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