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ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第二章 幽玄の森

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隠し部屋


「不思議ね……」


「何が?」


 もう、かれこれ2時間ほど歩いただろうか?

 俺たちは、迷路を歩き続けていた。

 単調な風景は、さもすると眠気を誘いそうなものだけれど、そうならないのは隣にいるセシリアのおかげだろう。

 そのセシリアが、ふと小さな声で呟いた。


「あ、ごめんなさい。今、歩いているところは同じ道じゃないのよね?」


「うん」


「ずっと、分岐に差し掛かると必ず右の方向を選んでいたから、ぐるりと回っていつか同じ道に出るんじゃないかしらって思ったの」


「ああ、ここは碁盤状の迷路じゃなくて、どちらかと言えば緩やかな円周を描いているからね」


「ふーん」


 俺の【まっぷ】は、歩いたところを記録してくれる。

 同じ分岐点は何度か訪れているけれど、分岐する道の数や角度なんかも異なっていて、同じ道を歩いてはいない。

 まあ、迷路攻略における「右手の法則」のおかげなんだけれどね。


 今のところ、行き止まりにもぶつかっていないから、一階層を抜けるまでにはまだまだかかりそうだ。


 瘴気が漂うような場所もないし、魔素だまりもない。

 魔物の気配も感じられないから、ここがただの洞窟と言われれば、ああそうかと言いそうだ。


 ただ、壁や天井に点在しているヒカリゴケは、薄明りを届けてくれているから歩くのに困らないけれど、もしも何も知らずに同じ風景の中をただ歩き続けていれば、かなり気が滅入ってもおかしくはない。


「それにしても、この迷宮の中に戻った魔物たちって、どうなったのかしら?」


「うーん、どうだろう? 今のところ魔素だまりや瘴気も感じられないから、スタンピードの終結と同時に消滅したとは考えづらいんだけどね」


「消滅していないってことは、この迷宮のどこかに集まってるってこと?」


「うん。もしもそうだとしたら、たぶん最下層にあるボス部屋だとは思うんだけれど」


「じゃあ、とにかく目標はボス部屋ってことね」


 セシリアが嬉しそうだ。

 ボス部屋を目指していると聞いて喜んでいるから、冒険者としての素質は高そうだ。


 というか、「勇者」なんだから当たり前か……


 俺たちは、雑談しながら歩み続けていた。



 ■□■□



「……行き止まりね」


 ひたすら歩き続けて5時間ほどが経過した。


 まだ【まっぷ】は埋められていない。

 休憩も一回しかしていないが、セシリアは元気だった。

 代り映えのしない光景も、ずっと飽きずに歩きながら辺りを見ている。

 そんな中で、俺たちは、初めての行き止まりに辿り着いていた。


「道が分かれていなかったから、おかしいと思ったけれど……戻らなきゃいけないのよね?」


 少し残念そうなセシリア。

 これまで、分岐した場所から100メートルから200メートル先まで見渡せていたが、「右手の法則」を使っていたから、どうみても行き止まりだとは思っていたけれど、この道を進んでいた。

 だが、分岐が見えなかったのではなく、本当に行き止まりだった。


「うん、戻る前にちょっと待って」


「どうしたの?」


 俺が行き止まりになった場所の壁で見つけたのは、僅かに壁の色が変わっている個所。


「ほら、ここ」


「このちょっと薄くなったところのこと?」


「そう。たぶん、隠し部屋に入れるスイッチだと思う」


「隠し部屋!!」


 セシリアの表情が輝いた。

 隠し部屋と聞いて、テンションが上がったようだ。


 ぱっと見は、分かりづらいが、どこまでも同じ風景を作り出しているこの迷宮の中で、この箇所だけはあきらかにおかしな気配を漂わせていた。


 もっとも――


 俺は、【まっぷ】ですでに、この場所を見つけたんだけれどね。


 隠し部屋は、迷宮の中に時々現れる。

 モンスターが溢れる「モンスターハウス」だったり、宝箱が置かれていることもあるし、魔物が入り込めない休憩場所のこともある。

 モンスターハウスの場合、戦える力がないとヤバいこともあるけれど、迷宮を探索する者たちにとって隠し部屋はボーナスポイントだ。


「入ってみようか?」


「大丈夫?」


 嬉しそうにしていても慎重なセシリア。


「うん、平気」


 今のセシリアのステータスなら、例え1,000匹の魔物たちと向かい合っても傷一つ負わずに倒すことができる。もちろん、俺も問題はない。


「昔は、一階層に隠し部屋なんてなかったから、何かヒントがあるかもしれないからね」


 ヒントと言う言葉に、セシリアが反応した。


「そうなのね。だったら確認しないといけないわね!」


 どうやらかなり乗り気のようだ。


「じゃあ、入ってみようか」


「ええ」


「その色の変わった壁を押してみて」


 たぶん、それで正解だと思う。


「こうね」


 そしてセシリアが壁に手を当てると、その色が変わった部分だけ奥に押し込まれた。


 ガコン


 鈍い音が響き、押した部分の隣の壁が木の扉へと変わる。

 古臭い木の扉は、洞窟型の迷宮にマッチした雰囲気を漂わせていた。


「これが隠し部屋……開けていい?」


「うん」


 セシリアがドアを開けた。


「…………広い」


 覗き込むと、中は通路と同じくヒカリゴケで照らされている。

 かなり広い部屋だ。縦横が100メートルほどある真四角な部屋は、奥に台座が置かれていてその上に何かが置かれている。


「ちょっと待って」


 そのまま部屋に入ろうとしたセシリアを、俺は引き留めた。


「転移型の罠が仕掛けられていると困るから、一緒に手をつないで入ろう」


「わかったわ」


 二人で潜った場合、一番困るのは離れ離れにされてしまうこと。

 もちろん、今のセシリアなら【かいてき】【まもる】で守られているから大丈夫だけれど、リスクは減らしておきたい。

 万一、ボス部屋に飛ばされて、俺が出会ったことがないSSSランクを越えるとてつもない強いボスがいたらまずいかもしれないからね。


【まっぷ】で視る限り、罠が仕掛けられている様子はないけれど、罠そのものを転移で送り込むやっかいな隠し部屋に出会ったこともあるから油断は禁物だ。


 そして俺は、セシリアと手を繋ぎ、ゆっくりと隠し部屋の中に足を踏み入れた。


「よし、大丈夫かな」


 足を踏み入れたが、何かが作動した気配はなく、静かなままだった。

 罠はないし、魔物が出現することもないからモンスターハウスでもない。


「奥にあるあれは何かしら?」


「たぶん、宝箱だとは思うけれど……」


 休憩部屋の可能性はあるが、広い中に一つだけポツンと何かが置かれているのはどう考えても、何かを主張しているとしか思えない。


「宝箱!!」


 セシリアのテンションが急上昇したのが分かる。


「行きましょ、ルイ!」


 興奮しながらも、俺から手を離さなかったから、冷静さは失っていないようだ。


「そうだね」


 俺は苦笑しながら、目を輝かせているセシリアに引っ張られるように部屋の奥へと向かった。



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