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ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第二章 幽玄の森

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違和感


 夜。


 俺は、セシリア、そして女王とともに、静かに三つの湖月を映し出している広い湖の湖畔へとやってきた。小さな波が時折、岸に打ち付けている。


 後ろには、幾人もの鉢巻をしているピクシー族が羽ばたいている。女王の護衛だ。


 ピクシーたちは、迷宮の向かう俺たちのために、「出陣式」を行ってくれると言ったが、それは固辞した。

 ピクシー族の出陣式は勝利を祈って行う、どちらかと言うと神事に近い儀式になる。

 何が問題かと言うと……彼らは三晩続けて騒ぎ続けるからだ。しかも、朝方には普通に寝る。そして夕方に目覚めると、まるで寝たのがなかったかのように続きを始める。

 まあ、妖精族の一員らしいと言えばそれまでだが、どうも、人族の俺にはついていけない。


 それに、一刻も早く原因は突き止めた方が良いだろう。


「じゃあ、行ってくる」


「本当なら私も一緒についていきたいのですが……」


 少し寂しそうな目で俺を見る女王。


 うん、無理だから。


 女王の後ろで控えている護衛たちが、俺に向かってダメだと首を横に振っているし。


「……とりあえず、一度、迷宮に潜ってみるだけだから。危ないと思ったらすぐに地上に戻るよ」


「本当にセシリアさんと一緒に行くの?」


 女王は、心配そうな目でセシリアを見る。


「大丈夫です、女王様」


 俺の隣に立っているセシリアが女王に微笑んだ。俺もフォローする。


「セシリアは勇者だし、SSSランクの魔獣でも後れをとるようなレベルじゃないよ。平気だから」


「はい。頑張ります」


「仕方ないわね……セシリアさんも一緒なんだから、無理をしちゃダメよ?」


「りょーかい」


 俺が軽口を叩くと、女王は「もう……」と少し膨れたがすぐにまじめな顔になった。


「このタイミングでルイが訪れてきてくれたことは、何かの道標なのかもしれないと思っているわ。でも、決して油断はしないでね。迷宮の調査と、ルイの無事は比べようがないのだから」


「ありがとう。でも、頑張ってくる」


 女王としての守らなきゃいけないものと、ラレーヌとしての俺に対する気遣いに揺れているのが分かった俺が、軽く礼を言うと、女王は両手を握りしめた。


 俺は軽く頷いてからセシリアに声をかけた。


「セシリア、じゃあ行こうか」


「ええ」


 この広い湖の中央にある島は、湖畔からは目にすることができないが、俺は昔、オーゼロ迷宮に潜ったことがあるから、転移ですぐに行ける。


 俺は、セシリアの手を取り、そして女王に軽く手を上げて挨拶をしてから【転移】のスキルを発動させた。



 ■□■□



「静かなところね」


 小さな島の海岸に【転移】で辿り着くと、セシリアは湖を見ていた。


「……綺麗ね」


 手を握ったまま、ポツリとセシリアが呟く。


 海岸から見渡せる範囲では、陸地の影は見えない。海とは違い、波も全くない湖面は静かな鏡面として月をゆらゆらと映し出しているだけだ。


 俺の知識では、波がない湖とは広さが一キロ以内の小さな湖だったはず。


 さっきの湖畔は、小さな波が打ち付けていた。だが、ここは湖の中央のせいか風に吹かれて湖面が揺れているぐらいで、波は見えない。

 その理由は分からないが、ここは異世界だし空には月も三つ浮かんでいるから、何かが違うのだろう。


 まるで、幻影を見ているかのような光景を、俺たちはしばらくの間、見ていた。


「――――よし、セシリア。そろそろ向かおうか」


「そうね」


 俺が握っていた手を放して話しかけると、ようやく我に返ったような雰囲気のセシリアが微笑んだ。


「オーゼロ迷宮、ってルイは潜ったことがあるんでしょう?」


「うん。階層は10階層しかないんだけれど、洞窟型の迷路迷宮なんだ」


「迷路迷宮?」


 そう、迷宮の中はヒカリゴケに照らされた、洞窟のような岩肌の空間がひたすら続いている。高さは低いところでも10メートル以上、高いところは数十メートルの高さがあり、幅も数十メートルある。


 ただ、その空間は迷路を形成していて、罠も多い。

 もっとも、もう出現してから数千年の時間が経過したこともあり、迷宮の内部はしっかりとした地図も作られているし、初見の冒険者でもない限り、罠は心配しなくても良い。


 ちょっと広いだけの、いわゆる古典的な迷宮と言えた。


「迷路型の迷宮って、私は潜ったことないわ」


「ああ、ボクゥゲンス大陸では、あまり見ない迷宮だから。でも、心配しなくても大丈夫。攻略済みの迷宮でマップも完成されているし」


「魔物は強いのかしら?」


「ボスはSSランクだから、まあまあかな。スタンピードの影響がまだ続いてるとすれば、SSSランクが現れても不思議じゃないけれど……」


「でも、スタンピードボスはもういないんでしょ?」


「うん、ボスのファイヤーシープが、アンラビフォン迷宮で瘴気に変わったからね。ただ、ファイヤーシープが消えてから魔物や魔獣が迷宮に帰ったなら、ボスの消滅タイミングでどうなったかは調べてみるしかないかな」


「ルイは、どうなったと考えているの?」


「正直なところ、行ってみないと分からない、としか言えない。もしかすると、迷宮内の魔素を取り込んで数ランクアップした魔物や魔獣に変わっているようなことがあるかもしれないし……」


「でも、もしそうだとしても、数ランクアップだったら問題ないんでしょう?」


「それは……まあね」


「じゃあ、とにかく行ってみましょう」


「セシリア、一応、注意しておいて欲しいんだけれど……」


「何を?」


「この迷宮は一度攻略しているから、一階層ずつ確認しながら【転移】スキルを使って下に降りていこうと思っている。【かいてき】のスキルは使うから、もしも瘴気があったとしても大丈夫なんだけれど、俺が知らないイレギュラーが発生すると困るから俺から離れないようにして欲しいんだ」


「分かったわ」


「それと、中にいる魔物はせっかくだから、セシリアに倒してもらおうと思っているから」


「私のレベルアップ、のためということね」


「うん。今のセシリアのレベルだと、かなり強い魔物でないと簡単に上がらないと思うけれど……」


「ありがとう、ルイ。頑張るわね」


「そうだ。セシリアのステータス、確認しておいてもいいかな?」


「私の? ええ、構わないわ」


 目を閉じて「どうぞ」と呟いたセシリアを見て、俺は苦笑しながら、【かんてい】のスキルを使った。



 名前:セシリア

 種別:人族

 年齢:17歳

 性別:女

 職業:勇者(■■■)


 レベル:1,000

 攻撃力:132,494

 魔力 :107,727

 防御力:107,440

 精神力:122,844

 運  :84


 スキル:【剣術(★★★★★:剣聖)】、【回復(★★★)】、【縮地(★★★★)】、【耐性(★★★)】、【灯り(★★)】、【集中(★★★★)】、【限界突破】、【鑑定(★)】、【魔力剣(★)】、【お■■■】




(うん?)


 ステータスやスキルは、前回、確認したときと変わらないはずなのに、違和感を感じる。


(何だろう?……そうか!)


 俺は、違和感の正体に気がついた。



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