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ぷらすわん ~1しか上がらないけれど、最強が目指せます~  作者: 雷風船
第二章 幽玄の森

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女王の依頼


「そう。でも、不思議なことにそのバトルシープも、さらに最後に現れたスタンピードボスであるファイヤーシープも、島から湖に入る前に姿を消してしまったのよ」


「…………」


(バトルシープ、ファイヤーシープ、って……)


 ツンツンと隣から腕をつつかれたのでセシリアを見ると「まさか、あれ?」という表情を浮かべて俺を見ている。


 うん、間違いない。


 アンラビフォン迷宮内で突然現れ、迷宮外に突撃してきたバトルシープ。そして、俺たちが迷宮の3階層でSSSランクの魔獣、ブラックディアとせっせと戦い続けている間に、迷宮の外に突然現れて迷宮街アンラビを消滅させてから瘴気へと変わったファイヤーシープ。


 どこかのスタンピードに出現した魔獣が、アンラビフォン迷宮に転移してきたと思っていたが、まさかこのピクシー族の国、フェのオーゼロ迷宮で発生したスタンピードだったとは……


 もちろん絶対にそうだと決まったわけではないが、滅多に現れないスタンピード、さらにSSSランクのファイヤーシープの出現、現れたタイミングが一致していることから考えるとまず間違いない。


「えーっと……実は、ここに来る前に――――」


 そして俺は、ボクゥゲンス大陸のアンラビフォン迷宮で遭遇した異常事態のことを女王に説明した。



 ■□■□



「――そんなことがあったのね」


 女王は、なるほどと頷いた。


「だったら分かったわ。スタンピードボスのファイヤーシープが討伐していないのに消えたこと、それと外に溢れていた魔物たちが再びオーゼロ迷宮へと帰っていったのも、スタンピードが終結したことが原因だった、ってことね」


「状況から判断すると、そうだとは思うけれど……」


 俺の答えは歯切れが悪い。


「迷宮に戻った魔物たちは、どうなったか分かる?」


 俺は女王に尋ねた。


 そう、過去に俺が立ち会ったスタンピードはボスを討伐すると、溢れていた魔物や魔獣たちは討伐しなくても魔素へ変わっていった。

 これは、スタンピードボスがフラグかスイッチのような役目を担っているからだろうと考えている。


 でも、今回は外に溢れていた魔物たちは迷宮内に戻ったそうだが、今、オーゼロの迷宮内は魔物たちで溢れているのか、あるいはファイヤーシープが瘴気に変わった段階で同じく、迷宮内で瘴気を溢れさせているのか…………


「それが分からないのよ。だから、ルイに確認してきてもらえないかな、って思っているの」


「ちょ、ちょっと待ってください、女王様」


 セシリアが慌てて口を出してきた。


「何かしら?」


「今の話を聞いていると、アンラビフォン迷宮にスタンピードボスであるファイヤーシープが転移したせいで、この場所でのボスがいなくなったから魔物たちが迷宮内に戻ったってことですよね?」


「ええ。そう考えているわ」


「アンラビフォン迷宮の外にいたファイヤーシープは、討伐されることなく瘴気へと変わったんです。もしかすると、そのタイミングで迷宮内に戻った魔物たちも瘴気に変わっているんではないでしょうか?」


 おお、セシリアも俺と同じ結論を導いたようだ。


「その可能性はあるわ。だからルイに確認してきて欲しいの」


「ルイ、瘴気が溢れる迷宮内に入っても平気なの?」


 心配そうなセシリア。

 もちろん、俺は平気だ。


「うん、【かいてき】のスキルを使えば、この前と同じで瘴気の影響は受けないから大丈夫」


「そ、そうなのね」


(それよりも……)


「女王様」


「何、ルイ?」


「報酬は?」


 笑みを浮かべたまま女王が固まっている。


 やがて――


 ゆっくりと表情を変えずに、女王が話し始めた。


「――我が国は、つい先日のスタンピード発生の影響を受け、多大な痛手を負うこととなりました。現在、全力で復旧に取り組んでおりますが、いかんせんツェント湖は夜間の立ち入りが難しく、苦慮しているところです。ですが、今、」


「――もういいよ、女王様。報酬は任せる」


 そう、このピクシー族の女王は、昔から俺をいかに上手く使うかを考えて行動していた。

 この世界で、まだ世慣れしていなかった俺が悪かったのだが、ピクシーたちが泣いて喜ぶ姿を見せられて調子に乗っていたことは否めない。任された依頼を、「感謝の気持ちを報酬にいたします」という女王の言葉を真に受けて、受け続けてしまった。


 ようやく、それがこの女王の戦略であることを知ったのは、他の種族と交流を持ってからのことだった。


 もっとも、女王も悪気があって俺をタダ働きさせたのでないことは分かっている。単に、ピクシー族の中では、「対価」という言葉があまり強い意味をもたなかったせいだ、ということも。


 なんせ、ピクシー族の文化には「貨幣」というものがないのだから。物々交換で住んでいるのは、食べ物が魔力か花の蜜に限られている、ということも関係しているのだろう。


 だが、セシリアも一緒の今、特にこれからこの大陸を一通り巡り歩こうとしている中で、無報酬が当たり前はダメだ。セシリアも、人がいいし、何より「勇者」でもあるので、困っている相手から頼まれると嫌とは言えないように思う。


 ちなみに、ピクシー族以外の種族は、そのあたりの感覚は人族に近く、タダ働きさせられたことはない。


 それでも、この女王には、以前、随分と世話になったことは確かなことだったので、あまり無下にするわけにもいかない。


 俺の「任せる」という言葉にホッとしたのか、固まっていた女王の表情が和らいだ。


「良かったわ。前の報酬もまだ払えていなかったし、ルイは幽玄の森で採取できる素材に興味を示してくれないし……」


 そう、ピクシー族からは現物支給で報酬を支払う、と散々言われたのだが、どんなによい素材でも俺自身にはあまり意味がなかった。

 例えば、薬効を持つ素材もスキルを使えば事足りるし、何より俺には【つうはん】のスキルがあるから不自由はなかったからね。


 当時は、師匠の転生体を探すことでいっぱいいっぱいだったから、ちょっと無理な要求を言い過ぎたかもしれない。


「ははは。とにかく一度、島に向かって迷宮内を探ってくるよ。セシリアもそれでいいかな?」


「ええ、構わないわ」


 そして俺たちは、探索に向かうことを了承した。



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