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隣にはアイドルが座っているけどハッカーな俺には関係なかった 〜『修学旅行で消えた生徒を探せ』編〜  作者: ゆずさくら


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三泊目、ホテルで

 俺はホテルに帰った。

 班の連中と食事をとり、列を作ってシャワーを浴びた。

 吉村と部屋に戻って、自由時間を過ごしているところで、扉をノックされた。

「また渚鶴院だろ。住山出ろよ」

 俺は念の為、扉の外を覗いて確認した。

 扉の外にいるのは、藤原だった。

 南京都というニセの情報を伝えてしまった。

 昼間の情報は追跡をかわすための嘘だったと説明しよう。

 俺は扉を開けると、いきなり腕を取られて部屋から引きずり出された。

「助け……」

 すぐに口を押さえられてしまって声が出せない。

 今の声に吉村が気付けばいいのだが……

 だが、ドアは閉まったまま、吉村が出てくる気配はない。

 口を抑えられながら、廊下をズルズルと進んでいく。

 藤原は俺を非常階段へ連れ込んだ。普通、外に出る非常階段は開閉できないようにキャップがしてあるはずだが、今、扉を開けた時、そのキャップなくなっていた。

 あらかじめ外しておいたのだろうか。

 俺は非常階段の手すりに、強く押し付けられた。

 古い非常階段のようで、手すり以外に何もなく、そのまま押し込まれれば、落ちてしまう。

 フロアは高く、落とされたら助からない。

「全く、にせ情報をつかませやがって。にせ札、にせ情報。本当に最悪な野郎だ」

「すみません、すみません。あの時はつけられていて」

「今は正しい情報掴んでいるのか?」

 背骨が軋むかように痛い。

 ビルが背中合わせになっているようなところで、ここで叫んでも誰も来てくれないろう。

 いや、叫んだら殺される可能性だってある。

 俺は首を横に振った。

「嘘つけ、見つけてもいないのに、なんでホテルに帰ってきた?」

 どういうことだ。任務は任務としてあるが、先生が七星を探すのを強要してくるとは思わなかった。

「本当は、見つけてるだろう? 言ってみろ」

 もしここで本当のことを言わないと、殺されるのだろうか。

 俺は怖くなったが、見つけていないのは本当だ。

「本当に知らないんです」

 藤原は急に力を緩めてきた。

「信じよう。今度こそ、見つけたらすぐに連絡するんだ」

「……」

 俺たちは階段を下までおり、外を回ってホテルに戻った。

 部屋に戻ると、俺は外に出る支度をした。

 吉村が言った。

「一応、聞くが、どっか行くのか?」

「ああ、出かける。もう間に合わない」

「住山が出ていった場合、俺は先生に報告するぞ」

「できれば、出て行ってから五分だけ時間をくれ」

 俺はスマフォの時計と、メッセージを確認した。

「何するのかわからんが、頑張れよ」

 非常口から抜け出ると、階段を下りた。

 マネージャーの金田(かねだ)さんが運転する黒いワンボックスが、近くのバス停に止まる。この修学旅行中、高橋に付き添って修学旅行についてきたマネージャーとは別人で、男性だ。この人は体格も、見栄えも良い。

 車が近づいてくると、真ん中のスライドドアが開く。

 高橋(かげむしゃ)がいる。

 なぜ、俺にはそれがわかるのだろう。何か、匂いなのだと思うが、確かではない。

 彼女は後ろの座席に座っている。

 高橋が、イラついたようにボソリと言った。

「急いで」

 運転席側から、マネージャーさんが言う。

「彼の病気的には、身体的な負荷や、ストレスをかけるようなことをしてはいけないよ」

「……すみません」

 俺はそのまま運転席後ろの座席に乗り込んだ。

 ドアの操作を運転席側からしてくれたようで、自動で閉まった。

 車が走り出すと、マネージャーは(おもむろ)に話し始める。

「状況を説明するよ。重要なことがある」

 後ろの高橋が小さくため息をつく。

「うちの『高橋ひかり』が誘拐された」

「えっ!」

「何を今更! 住山のせいよ」

「ほら、ストレスをかけるような発言はやめなさい」

 後ろで高橋(かげむしゃ)が舌打ちした。

「いつですか、てっきり彼女は撮影に帰っているのだと思っていました」

「捕まったのは七星を追っているところだったらしい」

 あの時だ。

 二手に分かれて、高橋は小路を入って行った。

 俺がタクシーを使って逃げたとき、奴らも二手に分かれたに違いない。

 あくまで予想でしかないが、奴らの行動が頭の中でリアルに再現される。

「そして、高橋のスマフォから『脅迫』が届いた。返して欲しければ、明日、七星を連れてくればと高橋を交換すると言う内容だ。したがって、すぐにでも彼女を見つけ出さなければならない」

「まだ七星の居場所は分かってないんですよ」

 後ろから強い視線を感じた。

「嘘付かないで。今日一度コンタクトしてるでしょ?」

「……」

「言い方がきつくてすまない。こちらは七星と住山君が接触したことは認識している」

 俺はそれでも自分の言っていることが正しいと思っている。

「だけど、居場所は分かっていない」

「住山君、そんなことを議論している時間はない。見つけ方はわかるよね」

「まだ出歩いているような顔認証タブレットの情報が使えます。そうでなければ」

 例のスマフォのテザリングなどの機能を逆利用して近づいたらわかるという方法をとる。

「用意してくれたまえ。車は一番確率が高い住宅街に向かっている」

「ただ、昼間の状況からするとどこか外泊している可能性も」

「顔認証タブレット」

 高橋(かげむしゃ)がそう言うと、更に言葉を続けた。

「ホテルに泊まったなら『顔認証タブレット』の網に引っかかるでしょう? 知り合いの家に泊まるようなら、その知り合いから連絡が来る」

「知り合い? そこまで調査が進んでたの?」

「そうだ。だから高橋と彼女を入れ替えても大丈夫だと判断した」

 俺は後ろを振り返った。

「本人が何を言ってたか知らないけど、本当は私が調査するつもりだったの。だけど本人が、住山を見てみたいって」

「そういうワガママを聞いて事件に発展するなんて、マネージャー失格だよ」

「も、もう警察に連絡すべきじゃ」

「あのね、あなたのしているハッキングって犯罪なのよ。警察から見たら、私たちも高橋を誘拐した連中も同じ。事件は解決するかもしれないけど全員刑務所入りよ」

 俺は声が出なかった。

 角を曲がると、車は住宅街に入った。

 周囲に注意しながら、ゆっくりと走行している。

「七星の探索、始めてる?」

 俺は頷いた。

 車の中からだと電波の受信が悪い。

「ちょっと窓を開けます。ドローンを出します」

 高橋が口を挟んでくる。

「許可なくドローンを飛ばすと……」

「大丈夫、トイドローンってやつで許可いらないんだ」

 俺はバッグからドローンを取り出し、スマフォでセットアップする。

 WiーFiサーチ用に改造したため、機体にカメラは付いていない。したがって飛行は目視出来る範囲に限られてしまう。

 近くを飛ばし終えると、ノートPCのマップを書き換える。

「十五メートルほど進んでください」

「分かった」

 俺たちは、マップを埋めながら住宅街をノロノロと進んでいった。




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