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隣にはアイドルが座っているけどハッカーな俺には関係なかった 〜『修学旅行で消えた生徒を探せ』編〜  作者: ゆずさくら


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再考

 俺は箸を止め考えていた。

 七星が現金を持ち逃げした、としてそれが何故修学旅行だったのか。

 新券なら百万円で百グラムだそうだ。大人の体重ほどあるとして例えば五十キロから七十キロぐらいの間なら、五億円から七億円になる。

 住民票などを移したらそれこそ居場所がバレてしまう。

 七星は高校三年生に相当し、成人なったか、なっていないかの年齢だ。

 これからの一生をそんな日陰で暮らすようなことを決断するだろうか。

 大体、五億から七億とはどんな金額なのだろう。

 俺は調べてみる。

 現在の平均生涯賃金は二億から三億らしいから、『普通の』暮らしなら遊んで暮らせる金額だ。

 だが、この後もインフレが続けばお金の価値は目減りする。

 隣に座っている渚鶴院が、ポンと背中を叩いてきた。

「住山どうしたの? うどん冷めちゃうよ。もしかして、別のもの食べたかった?」

 俺は目の前にあるあんかけがのった、京都風きつねうどんを再認識した。

「あ、いや、ちょっと考え事」

 俺は一旦七星のことを忘れて、まずは食べることにした。

 そして、うどんを食べながら、考える。

 俺をつけている特殊詐欺の容疑がかかった連中が、七星を追っている。高橋のいう通り、スーツケースの中身が現金だったら、七星はどうやってその現金を手に入れた。まずは、連中が多額の現金を持っていることに気づかなければならない。だとしたら、七星も特殊詐欺に関わっていたと考えるのが普通だろう。所謂(いわゆる)『闇バイト』というやつだ。

 七星が『闇バイト』になんらかの形で関わっていた。そして、連中が多額の現金を持っていることを知っていた訳だ。

 俺はふと考える。振り込めと言って振り込ませているのだから現金で持っているというのもおかしな話だ。それとも口座で持っていると危険で使えないから、現金化するものなのだろうか。

「ほら、また」

「ごめん」

「……」

 渚鶴院は俺の顔を見つめてきた。

「レンズがないから曇らなくていいわね」

「その話、やめてくれよ」

「じゃあ、私のいうことも聞いてよ」

「た、食べるよ」

 俺はきつねうどんを味わいながら、食べた。

 食べていると、また考えが浮かぶ。

 つけてきている連中は、何故俺が『七星』を追っていると知ったのか。

 高橋は、藤原が関係しているとしか思えないと言っていた。

 確かに俺が口にしたのは藤原先生だけだった。藤原先生と俺のやりとりを聞いているものがいたとすれば、藤原先生と同室の先生かもしれない。あるいは、藤原先生が誰かにポロッと話したのかもしれない。ただ、あれだけ『七星』のことを話すのに慎重だった藤原先生が、不用意に話すとも思えない。

 いや、待て。

 実は俺も所属しているのだが、高橋の事務所。事務所の人間からバレたのだとしたら、そういう線もありえる。事務所の人間がバラしただけで、高橋はそのことを知らない。バラした先と知り合いなのだから、彼らに『特殊詐欺』の疑いが掛けられていて、捜査中だという情報も得られるだろう。

 そうなってくると何も信用できない。

 現場で判断するしかなくなってくる。

 俺は汁を少しばかり飲んで、満足したところで、ため息をついた。

「美味しかったね」

 彼女の微笑みに、俺はまともに言葉を返せなかった。

「まだ考え事してる」

 午後はいよいよ七星が生活しているのではないか、という場所を探索する。

 今度、連中につけられていたら先に七星を見つけられてしまうかもしれない。

 スーツケースが目的かもしれないが、七星を見つければ、見逃すはずもないだろう。

「午後の訪問先だけどさ。俺は班から外れてもいいかな?」

「良い訳ないでしょ? 何か理由があるならいいけど、それは私たちに話すことじゃなくて、先生に話すべきことじゃない? 修学旅行は郊外学習であって何をしても良いレクリエーションではないのよ」

「けど、俺がいたら迷惑がかかる」

「だとしてもよ」

 渚鶴院が想像している程度のことではない。

 本当に命が危険に晒される可能性だってある。

 相手は社会のルールに嵌まらない連中なのだから。

「どこかで先生と話できたっけ?」

「主な観光地に先生配置されてたな。けど、日中なら京都駅の北バスターミナルね。あそこは常駐してるはずだけど」

「俺、話に行ってくる。皆んな先に行ってて」

 三人に手を振ると、俺は一人でバス停に向かった。

 バスを使うと、駅まではすぐだった。

 俺はスマフォを見ながら先生が待機しているところ確認した。

 近づいていくと、立っている先生気づいた。

「!」

 藤原だった。

 まさか藤原にこれからの行動を説明する訳にはいかない。

 俺は向かってくる体の大きな男性の影に隠れて、引き返そうと考えた。

「住山じゃないか。どうした」

 先に見つかって、声をかけられてしまった。

「ここに立ち寄る予定じゃないはずだよな。お前だけじゃなくて、班の連中もいるのか?」

 普段なら話しかけないほど距離が離れているが、お構いなしに話しかけてくる。

「ほら、ちょっと待て、話があるんだろ? 道に迷ったか?」

 近づいてくる藤原に手を掴まれてしまった。

 俺はとりあえず、先生と向き合った。




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